みくだすコンドル
動物の間で感染りやすく致死率の高い病気が流行した。
都市部の小型・中型の鳥がよく犠牲になったが、大型の猛禽類にとっても他人事ではない。
雛に新鮮な餌を与えないといけない親鳥たちは自分たちの食料を確保するのにも苦労するようになった。
そのうえ獲物の多そうな場所に行くと自分たちも感染してしまうので、まだ安全そうな狩り場をめぐって他の猛禽類との衝突が絶えなくなった。
子育てに、仕事に疲れたワシは機嫌のよさそうなコンドルを見かけて不思議に思い話しかける。
「あんたこんな大変な時期だって言うのにいやに元気じゃないか。死肉からだって病気が感染ることもあるだろうに。何かいいことでもあったのかい?」
下界を見下ろしてコンドルが言う。
「いやですね、この流行り病が収まってからのことを考えてみてくださいよ」
「前みたいな生活に戻るだけじゃないのか?」
「短期間ですけれども、私なんかが滅多に食べられない美味そうな動物たちが弱った状態で狩り場にやってきます。そのことを考えて今はじっと空腹をこらえているんですよ」
のんきなことを言うコンドルにワシは説教しようとしたが、コンドルはそういう生き物だったことを思い出して何も言わずに去っていった。