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午時葵に抱かれて  作者: 雲雀 聖瑠
一章 一節 ブレスブルク王国 王都ベイランズ
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プロローグ

荘厳な大聖堂はステンドグラスより美しい光が差している。

普段は開かれることのないこの間は、至る所に装飾が施され、大聖堂の元々の神聖さを際立たせこれから行われる行事を行うにふさわしいものとなっている。


ステンドグラスには二人の女神が描かれている。

アウネとレヴィ。

このステンドグラスには諸説あり、一見すると共に世界を作り上げているようにも見えれば、対立し争っているようにも見えた。


そしてこの婚姻もまた後の世で様々な解釈を生むことになる。


千年前、世界は……人類は魔王軍との戦争で疲弊していた。

誰もが絶望し、死へのカウントダウンを奏でながら過ごしていた。

そんな世界を救ったのは、三人だった。


勇者レイジュ。救世主ソフィア。英雄パーパス。


魔王軍との戦いの日々、そして決戦は伝記として世界中で語り継がれている。


平和が訪れた世界で、救世主ソフィアは勇者レイジュにあることを告げる。


『千年後、私たちの血を引くもの同士を婚姻させよう』


それは盟約として順守され、結婚式は千年祭として祝われることとなっている。


それが今、勇者の国・ブレスブルクの公爵家の一つ、フラン家の令嬢である私・ミアラレーズ=フランと救世主の国・ヘブンリースの皇子・ユールラテス=ヘブンリースの結婚式が行われる。


新郎新婦の姿は、祝福の純白の衣装。

同じ色の衣装を着ているが、私は赤、彼は青のイメージを持たれる。

衣装が白く、私も彼も肌が白いため、赤や青の髪はよく目立つのだ。

ある意味で対局で、ある意味で似たもの同士な私たち。


両国の王侯貴族を始め、英雄の国・ティスペタの王侯貴族も参列している。

ヴァージンロードを歩く私から見て、右手側にブレスブルクとティスペタの関係者。左手側にはヘブンリース関係者ととある国の使者が一人とその護衛と思わしき仮面の従者が一人。


誰もがこの日を待ちわび、この日のために準備をしてきた。

主役である新郎新婦などこの日を完成させるための人形も同然。

私たちはこの結婚式を万事抜かりなく成功させればいい。


父のエスコートを受け、新郎の元へ行く。

この世で一人しかいない紫色の瞳を持つ新郎はまだ少年のあどけなさを残している。

決して背が高いほうではない私と変わらぬ身長なために同じ高さで視線を躱すことができる。

首が疲れないから楽だとか場違いなことを想いながら、大司教の言葉を聞いていく。


「それでは指輪の受け渡しとともに、神への宣誓を」


世界を挙げての結婚式なためやり方も少し変わっていた。

よく聞く伴侶への誓いの言葉を述べたのちに指輪を交換するものだが、今回は指輪を相手に渡したのちに誓いの言葉を言う。

誰が考えたのか気恥しいものだ。

台本は国が用意してくれているので会場が凍るようなセリフはないのだが、やはり恥ずかしいものは恥ずかしい。


まずは新郎が新婦の薬指に指輪をはめる。

そしてその指に口づけをし、言葉を連ねる。


「健やかなる時も病める時も……私たちが共に歩むことは……三年前ならありえたのかもな」


台本と違う新郎の台詞に会場がざわつく。

そしてその直後、肉を切り裂く音に続くように悲鳴が上がる。


背中が痛い。

熱くて、寒い。


純白のドレスがどんどん赤く染まっていく。

倒れる私を彼は支えることも避けることもしない。

ただ私は重力に従い、倒れた。

視界は点滅し始め、焦点が合わない。

周囲の喧騒を置き去りに、私は彼だけを見ていた。


「泣…………か、なぃ…………」


伸ばした手は虚しく宙を掴み、私の意識は暗転する。


どうしてこんなことになったのか。

どうして私は何もできなかったのか。

募る後悔を置き去りに、私は過去を思い出す。


事の起こりは一年前、私たちが18歳の時。

学園での卒業パーティでのことだった。


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