シミュレート?
それは、1.14年ほど前の夏の日にあった出来事であった。
「ご主人様、坂城様がお呼びです」
本編、「砂糖マシマシまぜそば」からいきなり登場し、アンドロイド(霧ヶ峰)に騙されて拉致されて連れてこられた坂城琢磨(17・無職)である。
「あいつがどうかしたのか?」
「ご主人様と、お二人っきりで話されたいとおっしゃられています。しかし、ご主人様の下へは行かせません。ご主人様を独占していいのは私とロイドとルームだけですから」
ペンシルは俺の肩にすり寄りながら言った。
「でもまあペンシル、今回ばかりは二人で話をさせてほしい。あいつが呼び出して話をするときは結構面倒な話なんだ」
中学時代、坂城は俺をよびだして面倒な話を永遠と津々浦々と愚痴っていたのを思い出した。あいつはそういう人間だ。
「ペンシルたちに面倒なことを押し付けることはできない。だから君たちは三人で共に一緒に同じ部屋にいてくれ」
するとペンシルは顔を笑顔にすると、
「ご主人様がそうおっしゃられるのならば…。ただし、その分の時間に関しては、その分の時間分あとで私たちに分けてくださいね」
「もちろんだよ」
そして、坂城琢磨と二人っきりになったのであった。
「どうして俺を呼び出したんだ?」
俺は坂城琢磨に聴く。
「おまえ、妹がいたよな。」
「ああ」
「なんだかね、好きな人がねできたみたいなんだけどねうまくいかなくてね、病んでる」
「そいつそんな性格じゃないはずだぞ」
彼女は人と接することが苦手でいつも誰かと遊んでないような感じがする感じの人間だ。恋愛なんかとはもうゴムに電気を流すと同義であろう。それよりももっととても重要で大切なことがある。
「どうしてそんなことを知っているんだ」
「こっちの世界に来る直前彼女と話したんだよ」
「そうなのか。じゃあ一度こっちに連れてこさせよう。」
と、自分の鶴の一声で指示をあちこちに出し、自分の妹をこっちの世界に拉致することを実行した。
「あ、それと。この仕事が終わったら元の世界に帰らせていただく」
「了解、ついでに霧ヶ峰さんもご一緒してね」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
<坂城琢磨SIDE>
旧型客車につながれた蒸気機関車がローカル線の駅のホームに止まっている。
その電車の乗務員のクルーの坂城琢磨と霧ヶ峰が乗務している。
「先輩、機関車は自動運転ですので、先輩は車掌をやるんですよね」
「おっ、そうだよ」
「それで私が車内販売のアテンダントですか。」
「まあそうなるな」
「どうしてそんなにがんばらないといけないんですか?」
「奴(桜柳)の言うことだから仕方ない。あいつのいうことを無視すると三人のメイドに殺害されてしまう」
「確かにそれはそうかもしれませんね」
一応アンドロイドでできている霧ヶ峰であるが、どうも人間味の感じがする。
「お前、アンドロイドだよなぁ、なんかすごい人間っぽさが醸し出てるから時々機械だってこと忘れる」
「あたしを誰だと思っているんですか。いいえ、先輩はそういう人間でしたね」
「どういう意味だよ」
「まあいいです。とっとと例の彼女が乗ってくるのを待ちましょう」
そう言うと、首から一眼カメラをぶら下げたショートカットの女性が乗車してきた。
彼女は1号車の二番A席に座り、窓枠に肘をつき、窓の外の風景の車窓の情報を取り入れながら頬杖ついて寂しげに外を見ている。
「それじゃあ、出発しますか」
「出発ではなく拉致といったほうが最適しているのではないでしょうか?」
「うるさい」
そして、機関車の車輪が空転して、汽車がゆっくりと走り出した。
「どうしてこの列車早発しているのかしら。まあいいわ」
一号車2番a席の客は一人で喋った。
「車内販売でございます。冷たいお飲み物、おつまみなどはいかがでしょうか」
「すみません」
「冷たいお飲み物はいかがでしょうか?」
「あっ、結構です」
霧ヶ峰は会話をしたくなかったので、拒否した。
そして、5分14秒後。
「先輩、そろそろ検札しないといけませんよ」
「今行く」
そして俺は、1号車2番A席に向かった。
「切符を見ます。」
すると彼女は乗車券とSL整理券を差し出した。
そしてそのとき、
「あれ?」
「どうかなされました?」
「いえ、切符を間違えたかなと」
「そんなことはありませんよ、正当な正しい切符です。6時間ほどゆっくりと旅をお楽しみください」
「6時間?2時間の間違いではないですか?」
「6時間ですよ」
「はい?」
「はい」
なんだか腑に落ちない様子に見られる彼女であるが、面倒なのでそそくさと車掌室に向かった。
彼女が何回か車掌室に訪れた。そして6時間後、
「お客様、終点でございます。」
「終点?いつの間にか眠っていたみたいね」
「左様でございます。迎えが来ていますので改札口へお回りください」
「いつまであたしを騙すつもりなの?」
「お回りください」
「・・・・・・。」
彼女はしぶしぶと電車の出口へ回り、改札口へ向かった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
<三人称視点SIDE!?>
「どういうつもりなの?ランちゃん」
拉致られて、連れてこられて、彼女は椅子に深く座り、冷たくひどい視線を送りながら桜柳に言った。
「巷での噂で好きな人とうまくいっていないと風の噂で耳に入って。」
「どうしてそんなことを知っているのよ。そして今までこんなところにいたの?」
「そうだよ。自分はもう元の世界に戻るつもりはない」
「身勝手ね。」
「その身勝手な自分の罪滅ぼしとして、お前に能力を授けるよ。」
「なによ?」
「自分の思い通りに世界が動く能力」
「おもしろそうね。私がタイムリープしてトっ、いいえ、あの人の心を操作することも可能になるってところね。」
「考えが早いねえ。あっ、もう能力は使えるようになっている」
そして彼女は右上を見ながら。「あっ、そっか〜」と言い、はっ、とひらめいたような表情をした。すると、今までのショートカットの短い髪形からロングヘアーの長い髪形になった。
「この姿で元の世界のちょっと昔の時間に行ってみることにするわ」
「ああ。そうするといいよ」
そして、桜柳咲蘭の妹は屋敷を出て、元の世界の昔の時間に戻り、爆走を始めた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「先輩、どういうつもりですか」
回送列車に残された霧ヶ峰と坂城琢磨は、4号車2番A席、1番A席に座っている。
ちなみに、回送列車は元の世界へと戻っている。
「元の世界で一緒に暮らそう」
「先輩、相変わらず語彙力がペラッペラですね。いきなりその言葉を発するんじゃなくて、そういうことを言うっていう雰囲気を醸し出すとかできなかったんですか。まあそれはそれで先輩らしくていいですけど。その返事をする前に私の正体の詳細について事細かにじっくりと話すことにしましょう。わたしは、アンドロイドと説明されたと思いますがそれは嘘です。全くの嘘。私はただの未来人です。あなたが今存在している時間軸よりも364364年先の未来から来たのです。タイムトラベルで旅行に来た時先輩を見かけまして、そっちの世界で生活して、青春を送って、みたいなと思って、あなたの世界の人々を洗脳させてそっちの世界の住人になりました。そのさい、桜柳咲蘭という方があなたの友達であったので彼を海の藻屑にし異世界に転生させました。理由は後述します。あとルーフベルファも。そして、あなたと一緒にこっちの世界に来たのです。あなたともっとはなしたかったから。先輩と過ごした時間はとても楽しかったです。先輩と過ごした時間はあっという間に過ぎてしまいました。でもどう演算を重ねてシュミレートを何度も何度も同じようなことをしても高校の途中で険悪な雰囲気になってしまったのです。あなたがもと居た世界と時間平面上では。それもあって、桜柳咲蘭を異世界に行かせて私たちも行こうかなっておもって。実際に、そうすればもっと先輩と仲良くできるってシミュレート結果が出たのです。だからそうするしかなかった。先輩を騙してごめんなさい。でも、先輩がそんなことを言ってくれたとっても嬉しかったです。先輩、先輩さえよければ私も先輩と一緒に暮らしたいです。先輩と一緒にずっと仲良く、いつまでも仲良く……」
この世界は、桜柳咲蘭が作り上げた異世界の世界ではなかったのであった。