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クラウンフィールド・ソベルバレンタインデー

今日はバレンタインですね。


<桜柳咲蘭SIDE>

季節は冬が終わろうとしている早春とは言いがたくなんとも中途半端な2月中旬のことであった。お城の屋敷にはミツマタで作られたセントラルヒーティングが付いていてとても暖かいので、あまり寒さを感じないので季節の変化など微塵も感じることを可能とするような環境に置かれていることはなかった。


「「「おはようございます!ご主人さま!」」」


ペンシル、ロイド、ルームの三人のメイドは一寸の狂いもなく同時に挨拶をして1日の始まりの朝食が普段通りに始まるのであった。


サンドウィッチとイワナと和風ポトフというなんとも奇抜なメニューであるがこの料理を発案したロイドによると、


「このメニューはご主人様の健康に配慮した食べ物です。ご主人様と1ミリ秒でも長く一緒にいたいので是非このメニューを召し上がってください」


アンドロイドの高性能な人工知能のようなものを使って発案した健康第一主義者のメニューらしい。このような奇抜な料理がここ1週間ほど続いている。


「ありがとう、ロイド」


料理一つ一つを個別に評価するとけっしてまずいという評価が下されることは一切ない。ただただ奇抜な組み合わせなのだ。


「ごっ、ご主人様!わっ、私もご主人様のことを……」


ルームが不安げな声を聞こえる。


「僕はみんなのことを平等に愛しているよ」


「「「さすがはご主人様です!」」」


これもまた寸分の狂いもなく同時にルーム、ペンシル、ロイドの三人の声が屋敷内に響き渡るのであった。


「ところでご主人様、たまには気分転換と言いましょうか、ご主人様だけでお出かけというのはいかがでしょうか。私たちと一緒にいる時間ももちろん楽しいと思いますが、たまに、いいえ、たまになら一人っきりで過ごすっていうのも悪くないと思うんですよ。あ、もちろんご主人様のことを追い出そうとかそういう気持ちは微塵もなく、そのぉ、……」


ペンシルがぎこちない様子で言った。


「一人の旅行かーそれもそれで楽しいかもしれないね。うん。今日は特にはやることはないしちょっとその辺を出かけてみようかなあ」


この世界に転生してからあと2、3ヶ月で1年が経過しようとしている。そういえば一人っきりでこの世界を歩くのは初めてかもしれない。ということで俺は出かけることにした。


*******************


<メイドたちの日常視点SIDE>

それは1ヶ月前の出来事であった。

三人のメイドが厨房で皿洗いをしている時であった。


「ペンシルさん、ご主人様は小説を書くのが趣味だと言っていましたがその時のペンネームとかって存在したのですか?」


お皿をゴシゴシとこすりながらロイドがペンシルに尋ねる。


「クラウンフィールド・ソベルバレンタインというペンネームで執筆していましたね」


「それってどういう意味ですか?」


「それは……。失念してしまいました。でもバレンタインっていう単語には心当たりがありますよ」


「どういう意味ですか?」


「バレンタインっていうのは2月14日に好きな男性に女性がチョコレートをプレゼントするという行事がありましてね」


「なるほど!それじゃあご主人様にチョコレートをプレゼントしましょうよ!2月14日って1ヶ月ごですよね。いまならサプライズでご主人様をびっくりさせることも不可能ではありません。ここからバレンタインの計画を始めましょう」


ルームが眼をキラキラと煌めかせながら言った。


「いいですね。せっかくのバレンタインですし美味しいチョコレートをたくさん差し上げたいです」


するとペンシルは、


「でもご主人様の健康が悪化するのはちょっと」


ロイド「でしたら健康を害さないような健康的な食事のメニューにしましょう。1ヶ月もあれば不可能ではありません」


ペンシル「それは名案ですね」


ロイド「健康的な食事のについては私に一任してください!」


ロイドは自信満々であった。

そのようなことからバレンタインデーへ向けての計画が着々と進んでいくのであった。


******


「それじゃあ出かけてくるよ。夕方には帰ってくるね」


「「「行ってらっしゃいませご主人様」」」


桜柳咲蘭はプロペラ機に乗って離陸し、空へと飛び立っていった。


「やはりいつ見てもご主人様はさすがです」


ペンシルは恍惚な表情を浮かべながらいうのであった。


「それじゃあチョコレートづくりを始めましょう!」


三人のメイド、ペンシル、ロイド、ルームは厨房へと向かった。

厨房には高性能なオーブンなどチョコレート作るには十分すぎる設備が整っていた。


三人のメイドはそれぞれ工夫をして各々のチョコレートを作り上げた。

カラフルな箱にカラフルなリボン。色とりどりな飾り付けが部屋をキラキラときらめかせる。


「これならご主人様を喜ばせることができますね!」


**********


レシプロエンジンが唸りを上げて屋敷の前庭に着陸した。


「「「おかえりなさいませ、ご主人様!」」」


三人のメイドはまたもや寸分の狂いもなく同時にぺこりとお辞儀をした。


「ただいま。あれ、どうしたんだ?いつもと様子がちがうようだが」


「さすがはご主人様です。ちょっとした私たちの変化にお気づきになられるなんて」


「いや、なんというかその……」


「どうされました?」


ロイドが冷静な目をしていった。


「いや、別になんでもないよ。うん」


「左様でございますか。ご主人様、早く中に入りましょう」


ロイドは桜柳の肩を押して屋敷に押し込んだ。

すると、屋敷の大広間には大量のカラフルな箱が重ねてあった。


「うわああ。なんだこれは。」


桜柳は驚いた。


「ご主人様、今日はバレンタインデーなのです」


ルームが瞳をキラキラと輝かせながら言った。


「ああ、そうか。つまりこれはそういうことだったのか」


ペンシル「普段お世話になっているご主人様に恩返しをしたくて……」


ロイド「気に入ってくださりますと幸いです」


桜柳「ありがとう。みんな」


そして、桜柳はチョコレートを食べたのであった。



「ところでご主人様。ご主人様がペンネームで使っていた、クラウンフィールド・ソベルバレンタインってどういう意味なんでしたっけ」


ペンシルが桜柳に質問した。


「それは、秘密だ。日本におけるバレンタインデーとはあまり関係がない」


クラウンフィールド

ソベルバレンタイン


それは桜柳咲蘭の黒歴史の一つであった。


この物語はフィクションです。実在する人物、団体、研究所等とは関係ありません。

この物語のクラウンフィールド・ソベルバレンタインとクラウンフィールド・ソベルバレンタインは一応別人です。

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