理不尽の果てに
はあああああああああああああああああ??
(何であたしがこんなにイライラしないといけないんかね。)
そう思いながら奴の相手をしてる自分。
そう思うのなら話なんか聞かなきゃいいけど、人の悪い部分見て判断したくないしいい部分もあるからと自分に言い聞かせてる。
(面倒くさいなぁ…)
基本、怒りたくないから、10代の時は短気だったけど、この年齢になると疲れがどっとくるのね。
(揉め事は勘弁だわ…)
やっぱさ、色々なタイプの人と関わると自分の価値観、物の見方のものさしも広がるから否定したくないんだわ。
それって、凄く勿体なくない?って思うんだよね。
友人に言うとさ、甘いとか言われる訳よ。
甘いのかは、他の人の目線であって、あたしの目線だから、なんとも言えないんだけどねぇ。
そんな事を考えていると、メールが来た。それも感情的な文。
はぁ、と溜息を吐きながらも、話は聞かないとなぁと思う自分がいて、しんどい。
まぁ、昔から深刻な相談とか聞いてるから、ある程度の対処が分かるから、まぁいいけど。
(相手がヒステリックにならなきゃいいんだけど…)
そう思うと、またしんどくなる。だけど放置もあかんと思うから、筋位はつけないとと思う。
PCでカチカチ文字を打ちながら、内心は溜息の連続。
友人になら、怒鳴ってフル無視するレベル。
昔とは違うから、それも出来んし、相手の言い分も聞かないとやっていけないからさぁ。
その為に、この居場所を作った訳だし、荒らされるのも嫌だからね。
メールの文を見ると、こう書いている。
【色々お話したいので、通話お願いします】
まじか…。そう思いながらも、タイピングは自分の気持ちと反対の事を打ち始める。
指が勝手に動くと言うか、なんというか。
まるで魔法みたいだ。
まぁ冷静になってるから対処してるんだと思う。
事務と一緒みたいな感じで、早々とタイピングを打ち、通話をかけた。
「どうしました?」
『いや、不安になってしまい、文章色々送信してすみません』
「いや、いいんですよ」
ガソリンスタンドで準社員として培ってきた営業スマイル並みの対応だ。
よく上司や、同僚、部下、そしてお客様に褒められたもんなぁ。
培ってきた対応はここでも発揮されてるもんなんだなぁと思いながら、自分の経験をプラスに考えてる。
なんてプラス思考なのだろうと自分でも褒めてしまうくらい。
色々接客してきたから、癖なんだと思う。
誰か褒めてくれないかね……。
(頭よしよししてくれる彼氏がいたらなぁ…癒されるのに)
元カレと別れて三年になる。早いものだ。
色々あって縁が切れたのが一年前だった。いやぁ…執着が凄かった。
笑ってしまうくらい。職場にも来たしねぇ…。
過去を振り返るのはこれ位にして本題に入ろう。時間の無駄だし。
ぷるるるるると通知音が鳴る。溜息を吐きながら、演技をするように、通話ボタンを押す。
「なんですか?急に」
『最近サーバーの方はどうですか?』
「安定してますよ」
『そうですか…』
なんだその声のトーンは、まぁなんとなく察すると言うか、なんと言うか。
予測だけど、他のサーバーに入って色々揉めたんだろうなぁ。あの性格だもん。
『ルールやマナーって大事ですね、よく分かりました』
「そうですよ、大事ですよ。じゃないと上手く人間関係作れませんからねぇ」
『………あの、サーバーの名前変えたんですか?』
「そうですが、何か?」
『…いえ……その』
「なんですか?」
『なんでもないです』
なんなんだ、こいつは。サーバーにいた時不安になってて話聞いてたら叫び声あげて、挙句の果てに貴女と話したくありませんと言って、シカトし続けた癖に。
都合がいいな、こいつ。
音楽でも聴いて、落ち着いて話しましょうと言って、感情を抑える為にミュートにして五分おいて、繋げたら。
裏でメールでそう送ってきて、色々暴言書いたじゃないか。
こちらはただ注意しただけなのに、なんなんだよ、この状態。
「あの、言いたい事分からないので」
『また機会があれば戻れませんかね?サーバー探していいですか?』
「難しいですね」
『そうですか…話変わりますが、身の上話してもいいですか?』
「はぁ」
はーい、愚痴大会のはじまり、はじまり。謝るのが先だろ、常識的に考えて。
そう思いながらも温厚なあたしは色々と聞いてアドバイスをしていた。
いい気分になったみたいで、また同じ会話に戻る~♪
『サーバー名教えてください』
「いや、無理ですよ」
『変えたんですよね?なんて名前です??』
いやいや何度も言ってるから、無理だと言ってるでしょーが。
この人には日本語通じないのだろうか。日本人のはずだが、もしかして違うのか?
さてさて冗談はこれ位にしよう。続きを始めるぞ、みなの集。
「何度も言ってますよ?」
続きの言葉を言いたくなる、日本語通じませんか?と。まぁ喧嘩したい訳じゃないし、いい所もあるからなぁ。
「新しいサーバーに入ってるんですよね?そこで上手くしてるならいいじゃないですか」
『上手くしてますけど、優しく教えてくださったのに、やはり…』
「なんです?」
『なんでもないです』
そして終盤が来るのだ。
いや、やっと終わりだよ、あたし疲れたわ。
「あの…」
『もう切りますね、じゃ』
「へ?」
あんたが時間取れますか?と言うて、何度も断っておいて、じゃあ今すぐかけます言うて、かけてきた癖に。
なんだよ、これ。
「こっちは…話があるからと時間とって……」
ツーツーツーツー
逃げたな、これ。戻れないと分かって、自分は話すだけ話して、切るのかよ。
「はあああああああああああああああああああ??ああん??舐めてンのかこいつ」
あたしは基本切れない。だって疲れる。
ここ一か月で色々あったというのもあるだろうか。
頭の線がプッツンと音が弾けた気がした。
あたしはPCの画面に向かって呟く。
「舐めてンじゃねーぞ、覚えとけよ……」
そして、通話アプリで、そいつの連絡先をタップし、ブロックのついでに通報したのは言うまでもない。
「マジ、ぶん殴りてぇわwww」
元ヤンのあたしが出てきたのは言うまでもない………。