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一話

 どーも千歳です。強くてニューゲームが終わるまではあまり更新しないと思いますが、一応一話だけ置いておきますね。

 基本的にピンチのないのんびり系の話ですので、息抜き程度にどうぞって感じです。

 昏田留夏という少女は、その見た目から幼く見られがちだった。身長は140cmにも満たず、体つきも貧相で、性格も大人びている訳では無い。

 そんな少女の願いはただ一つであった。すなわち、ボンキュッボンで身長の高いお姉さんになること。小学生に間違われがちな現状をどうにかして変えること。


 狭い田舎の町だったので留夏を今更素で間違える人はいないが、仲のいい友人達には毎日のようにからかわれている。それが高校二年生、昏田留夏の日常であった。


 「これ以上からかったら防犯ブザー鳴らすからね!?わかった!?」


 その日もまた、仲のいい友人達との帰り道だった。いつも通りの夏の日、蝉の声の響く中をだらけきった様子で歩く制服の一団。

 涼し気な神社の階段をゆっくりと上がり、木々の生い茂る中を歩く。


 「小学生かよ」


 「あああまた言ったああ!」


 普段なら静かな昼間の境内に、終業式を終えて解放された学生が喧騒をもたらした。

 賑やかな笑い声の中、ひとりがポツリと呟く。


 「懐かしいね、ここ。願いが叶うって言って毎日通ったよね」


 そこは地元の子供なら誰でも知っている、遥か昔から存在する神社。祀られる神の名は天之狭霧神(アメノサギリノカミ)。何の神であるかすら知らないこどもたちは、そこを願いの叶う神社として、冗談半分に、しかし真剣に願い事をし続けたのだった。


 「結局叶わなかったけどね!私がナイスバディーなお姉さんになる夢!」


 「ふふ、そうね」


 ふふ、と笑った女子は留夏を撫でる。優しげな笑顔で思い浮かべたのは、留夏が思うよりさらに昔のことだった。

 今ここにいる全員で、いつまでも一緒にいられますように。

 その願いはしっかり叶っているのよ、と口に出すか逡巡した間に、留夏はするりと撫でる手をすり抜けて社の前に駆け寄っていた。


 「リベンジだよ!…私がナイスバディーなお姉さんになれますよーに!はい、おさいせん!」


 その小さな手が打ち鳴らされ、いつの間にか静寂に包まれていた敷地内に響き渡った。

 友人達の生暖かい視線に気付き、はにかみ笑って振り返る留夏の背後が揺らぐ。



 「セカイを渡る覚悟はあるか?」



 その声と共に空間がカク、とコマ落ちのように不自然に動いたのを、友人達は確かに見た。

 留夏が一瞬掻き消えたのも。


 「ちょっと行ってくるね。すぐ戻るから」


 留夏は確かにそう言葉を紡ぎ、光に包まれた。友人達はわけもわからなかったが、留夏がそういうならちょっとなんだろうな、と見当違いのことを思ったのだった。

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