3人の退魔師
雨の音だけが静まり返った路地を、黙々と歩いていると後ろから
「輝流さぁん、待ってくださいよぉ。まだ話がおわってませんからぁ」
「学校の図書室に行って、妖かしの者が居たら退治すればいいんだろう?その他に何かある…」
俺はそこまで言うと口を閉ざした。
「久しぶりじゃねーか、輝流。少しは姉離れできたか?」
「なんで晴彦さんが、此処にいるんですか?!」
「仕事に決まってるだろーが」
「今日は、晴彦さんも一緒に調査にあたるって言おうとしたのに、輝流さん聞かないんですよぉ」
仁は、晴彦さんに向かい訴えるように言った。俺は、仁の言葉など耳に入ってくる訳がなく、一番大嫌いな先輩退魔師を睨み付けた。
「おい、おい。そんな睨むなよ。俺だって今回の依頼については、ボスから直々に伝えられて断れなかったんだよ」
晴彦さんは、苦笑いしながら言った。無精髭に肩まである髪は後ろで結ってある。クシャクシャのシャツに、ヨレヨレのスーツ姿をしている。そして右手に傘を、左手には俺と同じく黒い布に包まれた棒が握られている。
「分かってますよ。仕事は仕事ですから」
俺は、素っ気なく言うと、目的地の桜ヶ丘高校へと足を動かした。それに、仁も晴彦さんも黙っててついて来た。
15分ほど歩くと、目的地である桜ヶ丘高校に到着した。雨の中、凛としながら怪しげな雰囲気を帯ながら。
「さて、行きますかぁ、輝流さん、晴彦さん」
仁は軽い声で言うと校門から堂々と歩み出した。
『まさか、晴彦さんと仕事するなんてなぁ』
『まぁ、そう言うな。晴彦もボス(あいつ)に頼まれては断れまい?輝流も少しは、晴彦と仲良くしたらどうじゃ?』
『いくら俺に、退魔師の仕事を教えてくれた先輩だと分かってても、仲良くはしたくないんだよ!』
俺が胸騒ぎしたのは、この事だったのか…?そう思いながら校門の壁に1枚の札を張り付けると、仁に続いて校門から入って行った。晴彦さんは何も言うことなく黙って付いて来た。