表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

仲間と三題噺

三題噺「昨日、ライトノベル、猫」

作者: kumasan93

俺は昨日、会社を退職した。

念願のライトノベル作家になるためだ! 

たった一度の人生なのだ。

くだらない仕事で時間を無駄にしたくない!

とりあえず、テーマを決めよう。主人公は普通のゲーム好きの高校生で異世界に飛ばされて……

「おい」

俺を呼ぶ声がする。

部屋には俺と猫しかいないはず。

おかしいな。だれだろう。

「おい。かいぬし」

猫だ。

猫が喋っている。

「かいぬし、なんでしごといかない」

「お前……喋れるのか? 」

「ねこはしゃべれる。かくしてるだけ。それより、なんでしごといかない」

そうだったのか。まぁたいしたことじゃない。とりあえず俺の決意を猫にも伝えよう。

「俺もう仕事辞めたんだ! ライトノベル作家になるぜ」

「かいぬし、ライトノベルさっか、おさかなたくさんもらえるのか? カリカリは? 」

「おう、一発当てたら魚もカリカリもたべ放題だぜ! まってろよな! 」

「どれくらい? 」

「え? 」

「どれくらいまてばいいの? 」

「どれくらいって……」

俺は言葉を失った。

「あした? あさって? 」

「うーん、そんなはやくはないかな……」

そう答えるのが精いっぱいだった。

「ねこ、ながいきできないから……」

「……」

ねこがしゅんとしている。

俺はライトノベル作家になっていいんだろうか。

早くも決意が揺らぎ始めた。

ごめんな、猫。

お前のことなんてなにも考えてなかった。

「猫、俺はどうすればいいと思う……? 」

「かいぬしのすきにすればいいんだよ」

猫は弱々しく答えた。

人間なのに猫にこんな答えをさせてしまってよかったのだろうか。

俺の大切な猫。

その猫に苦労させていいのか?

もう一度、訊いてみよう。

「猫、もう一度聞くぞ。本当のことを言ってくれ。俺にどんな仕事してほしいんだ? 」

「おさかないっぱいのしごと」

「わかった」

そうして、俺はライトノベル作家を目指すのを辞めた。

代わりに、俺は漁師になった。

毎日、品物にならない魚を猫にあげた。

猫はすぐ死んでしまったが、幸せそうだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ