兄妹
今は月曜日の午前8時。二人の生徒が学校へ向かっています。
一人は東町1丁目1番地1号・東町アパートに住む男子生徒。
もう一人は西町1-1-1の西町寮(学生寮)に住む女子生徒です。
二人共に遅刻しそうな為、走って学校へ向かっております。
交差点を右折すれば学校という所で二人は接触した。
「痛っ!」
「私にぶつかってきた人はあなたね。顔を見せなさい!」
「でもさあ、あなたにも非はあるんじゃあないかなあ?」
二人はお互いの顔を見て、驚いた表情を見せ合いました。
なぜ二人が驚いた表情をお互いに見せたか。理由はこう。
《二人の男女の顔があまりにもそっくりで驚いたから》
女子は自分と似ている男子を見て、あることを思い出した。
それはね。《自分には双子の兄がいること》でございます。
「あなたの名前って、"田中太一"と言うんじゃないかしら?」
「僕の名前は"田中太一"だけど、何で君が知っているの?」
女子生徒の問いかけに男子生徒は驚きながらもそう言った。
そんな男子生徒の問いかけに女子生徒はこう返答しました。
「あなたは養父母の方に聞いていらっしゃらないようね」
「何で僕が養父母の方に育てられていると知っているの?」
「それはね。私とあなたは双子の兄妹だからよ」
「僕らの顔が似ているのはそういう理由だったのか」
「ええ。そうですわ。納得していただけたかしら?」
「はい。全て納得できました。ありがとうございました」
「例には及びません。今後は敬語で話すことを禁止にします」
「なぜでしょうか。理由を教えていただけませんでしょうか」
「その理由はズバリ、"私たち二人が双子の兄妹"だからよ」
こうして二人は次の日からお互いにタメ口で話始めた。
「私の父に。あなたの父親でもあるけど、会ってみない?」
「本当の父か。一度会ってみたいと思っていたんだよ」
「じゃあ決まりだね。今週末の土曜日の夜は空いている?」
「うん。今週末の土曜日の夜は空いているよ」
「じゃあ今週末の土曜日の夜7時にあなたの家に行くわね」
「えーっと。君は僕が今住んでいる家を知っているのかい?」
「もちろん調査済み。招待するんだから、調査するのは当然」
数日後。土曜日の午後7時。時間通りにお迎えの車が現れた。
「お待たせいたしました。田中様。お車にお乗り下さいませ」
「はい。ご苦労様です。よろしくお願いいたします」
「承知いたしました。では出発させていただきます」
「僕は車に弱いので、安全運転でお願いいたします」
「もちろん安全に運転をしようと思っております」
「そりゃそうですね。失礼なことを言いました。すみません」
数分後。少年の本当のお父さんの家に到着しました。
「到着いたしました。お疲れさまでした」
「送って下さってありがとうございました」
「どういたしまして。楽しんでいって下さいませ」
「ありがとうございました」
車から降りると男の人に少年は声をかけられました。
「お待ちしていました。旦那様がお待ちでございます」
男の人に案内され、少年は自分の父親と初めて対面した。
「わざわざ来てくれてありがとう。私が君の本当の父さんだ」
「あのう。1つ質問させていただいてもよろしいですか?」
「別に構わないが、敬語はやめてくれ」
「分かりました」
「言ったそばから敬語、やめてくれ」
「分かりました。いえ、分かったよ。お父さん!」
「今、お前は私のことを、『お父さん』って言わなかったか?」
「すみませんでした。いきなり馴れ馴れしかったですね」
「いや。そんなことはないぞ。むしろうれしかったくらいだ」
「えっと。『むしろうれしかった』って、どういうこと?」
「そりゃあお前に父親と認めてもらえたからだよ」
「へえー。そうなんだ」
「話は変わるが、お前、この家に戻る気はないか?」
「それはどういうこと?」
「養父母たちと養子縁組を解き、僕の家族に戻るってこと」
「そんなことできるの?」
「できるに決まっているさ。だって僕たちは親子なんだから」
「何か納得いかないけど、納得するしかないよね?」
「そうだな。納得できなくても納得したほうが良いよ」
「分かった。何とか養父母たちを説得してみる」
「頑張れ。応援しているからな!」
翌朝。少年は養父母たちを説得し始めた。
「お願いします。どうか養子縁組を解いて下さい」
「そんなに私たちと養子縁組を解きたいのかい?」
「それはなぜなのかしら?」
「本当の両親と一緒に暮らしたいからです」
「仕方ないわね。あなた」
「そうだな。分かった。養子縁組を解こう」
こうして少年は本当の両親と妹と暮らし始めました。