Big Girls Cry 2
5話目
Big Girls Cry 2
二人の馴れ初めの話し
ケンが親神様と尊ぶ神の名は、『木花咲耶姫』(このはなさくやひめ)と言い、全ての神々の中で一番嫋やかであり、内に秘める激しい力を理知の力で御する、その柔らかな外見からは計り知れない、本来は荒ぶる姫神である。
姫神のその本体は、その国一番の霊峰である。
美しく、凛としたその御姿を仰いだ者は思わず頭を垂れ、祈りを捧げずには居られない。
神々は、元々は意思無き力の集合体である。
人が祈りと意識を向ける事に依って、長い時間を掛けて、意思無き力に方向性がやがて生まれ、個として存在が固まって行き、己に祈りと意識を捧げる者達を庇護する様になる。
つまり、人無くして神は居らず、神無くして人もまた生くる(厳しい自然を御し生き抜く)事は叶わず。
それが、ケンの生きるこの世界の、根本の理であった。
厳しい自然環境の中で、人々を守れず、敬れず、祈り捧げられぬ神は、やがて忘れ去られ、惑星に還元吸収されて行く。
しかし物事には必ず例外が有る。
極、極、稀にベクトルの変換が起こるので有る。
強き良き神で有った神は、強き悪き神に成り変わる事で惑星の意志から解き放たれる。
そして、その中でもまた稀に極大変換を起こした神々が、羅刹神と呼ばれる元神で有った悪神達で有り、惑星の破壊消滅を目指す事に、その存在の全てを掛けて行く。
力は正しくベクトルで表せられる。
強き善神と言えども、己のベクトルよりも強き悪神には、破れ、破れた神は理に則り、惑星に還元吸収されて行く。
そして、その神に庇護を受けていた民族は遍く滅びる。
逆もまた真なり。
また、強き良き神は、数万年に渡る庇護を与えた後に、愛した民草達から離れ、新しき惑星の根本神として旅立って行く。
旅立つ前に自分の霊を分け、その地の新たなる神として立たせる。
木花咲耶姫の直系の分け御霊が咲夜であった。
母の咲耶姫が旅立った後には、次代の木花咲耶姫として、民草を愛し慈しみ、庇護しなければならない。
民草を甘やかさず、愛し慈しみやがて遥か先の世に、次代の咲夜にその責務を譲るその時まで。
木花咲耶姫が咲夜に教育の為、小さな村にその姿を顕現させ、庇護をさせていた。
民の喜びや感謝の心が、そのまま咲夜の力と成る事を日々感じる事に依って、神としての幸福を咲夜が感じ始めていた時に、事件が起こった。
次代の木花咲耶姫である咲夜を仲間に引き摺り込むために、羅刹神の配下の悪神が村を襲い殲滅させたので有る。
理不尽な死を迎えた魂の訴えは、庇護していた神のベクトルを変換させる、抑えがたい強大な力となる。
己が庇護していた民草を、如何に愛していたかを痛感すると共に、ベクトル変換してしまった時に、己と直接繋がる母である木花咲耶姫に影響を与えない為に、咲夜は母からのラインを切り、離れて結界を張り、惑星に己を還元吸収させる為、社にてその時を待っていた。
正に、咲夜が消え行く、その時に!
咲夜は知らなかったが、母で有る木花咲耶姫の頼みを聞いた、我らが、バカ・・・・・
モトイ、ケンが咲夜の元に現れたので有る。
説明長かったぜ・・・・
後は任した、
頑張れ!ケン!
負けるな!ケン!
頼んだぞケン!
次回、咲夜の語りから始まります。