prologue. ミステリの三要素
縦五cm、横十五cm、高さ八cm。
直方体の形をした木製のブロックが三つ、彼女の目の前に並べられていた。
彼女はそのうち一つを手に取った。ブロックは、彼女の手のひらには少し余る大きさだった。
彼女は彫刻刀も手に取ると、まず持ちやすいように、上面から三cm程度のところに溝を彫った。
次いでブロックを逆さまにし、底面に線を彫り始めた。直線と曲線を組み合わせたその図形は、アルファベットを左右反対にしたものであった。
アルファベットを九文字、記号を一文字。彫り終えた彼女は、その底面を朱肉に押し付ける。底面を赤く染めると、紙に押し当てた。
ブロックをどかすと、赤地に白抜きの文字列が現れた。
「Who Done It?」
スタンプの出来具合に満足すると、彼女は次の作業に取り掛かった。
先ほどと同じ形と大きさの木製ブロックを手に取り、同じように加工を施す。
こうして彼女は、三つのスタンプを作り上げた。
「Who Done It?」――誰がやったのか?
「How Done It?」――どうやったのか?
「Why Done It?」――何故やったのか?
彼女はこのあと、聖フィロソフィー学園の全生徒、全教員を巻き込む、大事件を起こす。




