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prologue. 我思う、故に……
「じゃあ、絶対確実に確かなことって、なにさ?」
僕の質問に、彼女は楽しげに言った。
「確かなことは、ただ一つ。それは、『疑う』という行為の存在よ。自身の五感すら信じられないのであれば、どんなものにも疑いの余地がある。だけど、いま、何者かが、何かを疑っているということには、疑いの余地がない」
「そうか?」
と僕は彼女の言葉を疑って、それから得心した。
「わかったみたいね。つまりわたし達は、何かを疑っているときだけ、自分の存在を証明できる。わたしはこれを、『我思う、故に我あり』と呼んでいる」
「名言みたいだね」
僕は少し笑った。




