1/1
恋人に捨てられて変わった僕
あの日、僕はすべてを失った。
愛していた人は
あっけないほど
簡単に僕を捨てた
知らない誰かの隣で笑う姿を見た瞬間
胸の奥がひどく痛んだ。
気づけば僕は、
夜の街をふらつくように歩いていた。
涙は止まらず
息をするたびに胸が締めつけられる。
苦しくて、思わず胸を押さえながら、
ただ前へと足を動かした。
その時だった。
路地の隅で、小さな黒い影が動いた。
近づくと
それは一匹の黒い野良猫だった。
細い体で、警戒するようにこちらを
見ている。その瞳はどこか怯えていて、でも、どこか諦めたようにも見えた。
「……お前も、捨てられたのか」
思わず、そんな言葉がこぼれた。
自分と重なって、胸がまた痛んだ。
しゃがみ込んで手を差し出すと、猫は少しだけ迷った後、ゆっくりと近づいてきた。震えるように鼻先を寄せてくるその仕草が、やけに切なかった。
僕はそっと、その小さな体を抱き上げた。
温もりが、腕の中にじんわりと広がる。
「……帰ろうか」
行くあてもなかったはずなのに、
不思議とそう言えた。
冷えきっていたはずの心に
ほんの少しだけ、
温かいものが灯った気がした。




