第2話 生意気なお嬢様をわからせる!
よく言えば吹っ切れた、悪く言えば適当になったのでキャラ振れしてます。
「クッソー!そう言うならお前の召喚獣も見せてみろ!」「あらー?さっき見せましてよー?」「近過ぎたし怒られて直ぐに引っ込めただろ!」
俺は本能的にミッチェルさんが苦手なのでむしろ強気に話しにいける。
「まぁまぁ、二人とも落ち着いて!先にロイヤルロイスちゃんの撮影をしましょ!」
『ピタッ』「はっ、はい!」俺は塩畑さんの提案を素直に受け入れた。
「そーですわねー!わたくしが遅れて皆様に迷惑をかける訳には行きませんわね!」
ミッチェルさんは魔法陣を展開する。こういう時は素直なんだな。
『ギャアアアアオォォ!』体育館の梯子を登ったところにある通路にも届くほどの大きさ!いやほんとデカ過ぎる!
「おーほっほっほー!!ご覧あそばせこの美しい黄金のボディーを!!正にセレブたる私に相応しい相棒ですわー!!」召喚獣の横でポーズを決めて高笑いをするミッチェルさん。
「おー!いやーホンマでかいなー!!ウチもこの大きさのは見た事ないわー!何メートルや!?体重は測ったか!?」大河先生も興味津々の様子。
「…………!」佐鳥さんも大きさに圧倒されて口を開けっぱなしにしていた。
「身長は―セバス!」執事が持ってきた資料を先生に渡して報告するミッチェルさん。真面目か。てかアレが測れる設備がある家って何だよ。流石金持ち。
「ほうほう。ほな後で確認しとくわ!最後に写真撮って今日はしまいやし、後は交流でもしとってや!あ、物は壊さんでな!」
『カシャ』シャッターが切られた。つまりここからは自由時間だ。戦いの火蓋は切られた。
「どうなんですのニワショー!!ピドリーちゃんの制御は出来るんですの!?」
未だにピドリーは先生の召喚獣の肉球に捕らえられている。
「この様子ですと……ニワショーがわたくしに勝つのは不可能に近いですわね!」
「くっ……!てか、さっきから何でフルネームなんだよ。」「何だかフルで呼んだらあだ名みたいじゃありませんこと!?」「まぁ確かにそうだけど……って、そんなのはどうでもいい!先生!アイツを解放してやってください!」
「うーーーん。そうやなーーー。」大分長い事悩んでいる先生。「ウチに向かってきたら危ないから一回戻してくれたらええよー。」よし!とりあえずアイツという最強の武器を手に入れた。
『スゥー』虎文に捕まったままのアイツを一度魔法陣に戻してからロイヤルロイスの前に立つ。
「ロイヤルロイス……名前長いからロイスで、お前を倒す!!」「おーほっほっほー!!わたくしのロイヤルロイスちゃんは強いですわよー!!」俺とミッチェル。両者とも力比べをする気満々なようだ。
「えー!本当に戦うのー!?」塩畑さんは戸惑っている。
「……ピドリーは子供。だけど強い。」佐鳥さんはその横で聞こえるようにそう呟いた。
「―あっ、確かにさっき召喚獣の強さが召喚士を上回ってて、それで制御できないって言ってたもんね!」
「多分……丹羽君が勝つ。」
「ふふふ……俺のピドリーは火球を吐ける。」「わたくしのロイヤルロイスちゃんもブレスが出せますけど!?」「しかし、当たらないと意味はない!」
俺は両手をロイスの方に伸ばして力を強く込める!すると!
『ポワン』『ポワン』『ポワン』と幾つもの魔法陣が相手の周りに現れた!!
「ど、どういう事ですの!?一度に魔法陣が沢山なんて!!沢山仲間を―いやいや、召喚士一人につき召喚獣は一体だけですからそれはあり得ませんわね!」
「ミッチェル。危ないから召喚獣の側から離れておきな。どの魔法陣からピドリーが飛び出すかわかんないからな!」
「な、なんですってー!?」
「あー!なるほどー!!いずれかの魔法陣から出てきて一発でKOする作戦なのね!」
「……アレ、本当にわかってない可能性がある……。」
佐鳥さんは俺の台詞が言葉の綾じゃない可能性を危惧していたが、そこの所は問題ない!何せ日頃から練習してきたんだ。場所を指定する事くらい容易い!!
「そ、そうですわ!もし向かってきても安心なように先生の近くに居ますわ!」
予想出来る攻撃の範囲から人間がいなくなったのを確認してからアイツを呼び出す準備をする。
(アイツが虎文に突っ込んだらダメだし、視界に入らないように先生の居ない側に召喚しよう!)
「来い!ピドリー!!」『ピイイイイイッ!!』
「あっ!?違う!?」ピドリーが出てきたのは先生に近い側、しかもロイスではなく虎文の方を向いている!
『ピューンッ!!』そしてスピードを出して虎文に飛んでいく!そしてその間にはミッチェルの姿が!!
「えっ!?こっちに来ますのーー!?」
『グググ……』主人を庇おうとロイスも動こうとするが動作が遅い。
「虎文!くっ、間に合わん!!」先生は咄嗟に指示を出すもギリギリ間に合わず……!
『ドンッ!!』ピドリーがミッチェルの腹にぶつかった!
「お"ほ"っ"。」腹にダメージをくらって項垂れてしまう。反動で飛ばされたピドリーを虎文が直ぐに取り押さえた。
「…………!」「だ、大丈夫!?」外野の二人も心配で駆け寄る。
「ミッチェル!大丈夫かー!立てるか?」
先生も珍しく本気で心配している。
「あーー……。ごめんなさい!大丈夫……?」
俺もさっきまで戦ってたライバルとは言えあまりに痛そうなので心配する。
「だっ、大丈夫ですわ……。コホッ。でも一応……セバス、車を出して下さいまし……。」
フラフラと立ち上がったミッチェルさんは外で待機していたセバスと共に車へと向かっていった……。
「どうしよう……!ミッチェルさん大丈夫かな……!?」
俺は女子を怪我させた事でめちゃくちゃに焦る!
『チラッ』
塩畑さんもかなり心配しているような表情を浮かべており、俺は嫌われたのではないか、と考える。
「報告は後で家の方にしてもらうとして……丹羽!若気の至りとは言え制御出来ない状態で勝負を挑むのは危険だから謹んだほうがええな!」
「はい……すみませんでした。」
先生のごもっともな正論に俺は謝るしか出来ない。
「……。」怒られて落ち込む俺の横に佐鳥さんが歩み寄ってくる。
「……はい、これ。」
彼女は俺にメモ帳を一枚手渡してきた。
「これは?」見ると、『より良い召喚士になる為にやるべき事リスト』と一番上に書かれていて、多くの項目が箇条書きで並んでいた。
「……その、一応書いてきたから、あげる。」
「……!あ、ありがとうございます……!」
彼女は恥ずかしながら俺に紙の事を伝える。俺は緊張しつつもその紙を受け取ってポケットに仕舞うのだった。
「い、今アイツを制御する為の訓練方法を教えてもらったので帰って直ぐにやります!!」
そして俺はピドリーを急いで魔法陣で戻した後、この場にいる気まずさから逃げるように体育館を後にするのだった。
「佐鳥ー。召喚士になったばかりなのに色々調べてて偉いなー!知り合いに似た悩みを持つ人でも居たんか?」
「……まぁ、はい……。」
「とにかく、制御出来るようになるならこれからは安心だね!」