【天使】養殖・第二話(8)
「勝負をかけるなら」
て、【神女】は言うた。
「勝負をかけるなら、あの【天使】戦の直後、雑踏の中にて決行すべきにてはなかりしそかり? そこにいる【海天使】にも助力を頼まば、まだ目もありしに……愚かな男」
「助力なんてしませんけど?」
少女は白茶けた声で表明する。
そして新たな声、
「【天使長】、おまえ終わっとーよ?」
エルフの奥方ガラドリエルめいた姿の【仙女】が樹上の玉座を離れて枝から枝へ跳び、宙を舞うように【天使長】の前に降り立った。
……今みたいな一大跳躍が自分にできるか? て、一瞬自問した【天使長】に【仙女】は自分の両手をかかげてみせ、その乳白色の手のひらがみるみるトースト色に染まっていくんを凝然と見つめさせる。
「いったい……」
尋ねかけた【天使長】へいきなり踏みこみ、反射的な防御体勢に入った彼の一方の腕にそっと、その染色された手のひらで触れた。
ぼぐん!
ていう鈍い音。
「てくびっ!」
ていう悲鳴。
「手首がっ! はずれっ!」
圧倒的未体験の激痛に【天使長】、叫び声きしらせる。
「『徒手格闘に自信』が笑わせとー」
襟紗鈴を腰にぶらさげたまま跳び下がり、脱臼を懸命に入れなおしてよる【天使長】に、【仙女】は勝ち誇った表情で言い、
「まだ続けるつもりやったら、次は両手の指という指の関節をはずす。これがうちの『特技』や。ちな、詳細を明かすつもりはない」
「少々気恥ずかしき『体質』ゆえにそかり?」
ていう背後からの茶々に、
「それ言わんといてください【神女】さま、いけずやわー」
うれしそうに答えてる。
嘆き入った【天使長】、
「むごいわ。種明かしもなしかいな……!」(『【天使】養殖・第二話(9)』に続)