熱血
「オウギ様にはなにが見えていらっしゃるのですかな?」
「何と言われましても」
目の前の暑苦しい男と、その男が纏う燃え上がるような魔力、かな?
「ふむ。わかりました。では、もっと打ち込んできてくだされ!」
ハーティックはまだまだ続けろと言う。
正直、俺としては剣を使うことはないだろうと思っているのであんまりやりたくはないが、父上の指示でもあるし仕方無いか。
ハーティックを観察しながら、剣を撃ち込んでいく。
ハーティックは時折身体をぴくりと不自然に動かしていることから、俺が何を視ているのか試している様子だ。
俺もハーティックの誘いに乗って剣を打ち込み、魔力に変化が起きた時だけ回避行動を取る。
今回俺は、魔力が視えるということが手練れにはバレるかどうか、ハーティックで試そうとしている。
この家の人間には、俺が転生者であることまではわからないだろうが、普通とは違う知識やナニカを持っているということが把握されていることだろう。
であれば、もし仮にハーティックに魔力が視えるということが知られても、俺の変わった能力の一つとして見られるくらいだろうと思う。
手練れとやり取りをすると、魔力が視えることがわかってしまうというなら、今後もし誰かと戦闘することになった場合に考えることが増える。
魔力が視えることまではわからないというのであれば、それはそれで良しだ。
そこから何度か剣を打ち込み、ハーティックの魔力に合わせて回避する。
そんな流れを五回ほど繰り返した。
「ハッハッハッハ! オウギ様、わかりましたぞ!」
ハーティックの笑い声がこだまする。
ここまで露骨に動いたらさすがにバレてしまうか。
「何をしているかはわかりませんが、こちらが動こうとしているのはわかることがわかりましたぞ!」
……わかってなかったらしい。
しかし、詳細なことはわからないまでも、俺が普通には見えていないものが視えるということはわかるようだ。
もっと勘の鋭い人物だったら、あっさりと見抜かれるかもしれない。
「燃えてきましたぞ! そろそろこちらからもいきますぞおお!」
何故かハーティックが燃え始めた――物理的にではない、はず。
ここまでの様子から察するに、ハーティックは対人戦の駆け引きとかは苦手なタイプだろう。
行動を読まれてあたふたしている様子が脳に浮かぶ。
ただ、先読みされた結果、自ら次の行動を宣言して、圧とパワーで正面突破していく系と見た。
脳筋とか、熱血バカとかそういうタイプだ! 知らないけど。
ところで、ハーティックはおそらく「火属性」を得意としていると思われるが、本人の魔力が持つ『属性』と本人の性格には何らかの相関関係があるような気がしてきた。
「火属性」で「熱血」なのではなく、「火属性」だから「熱血」みたいなことがあるのかもしれない。
この魔力の属性で性格診断できるかもって発想は、間違いなく元の世界で読んだマンガからきてるよなあ。
まあ、ゴウジも「火属性」なはずで、ゴウジからはそういう要素を感じたことが無いので、たまたまハーティックが一致しているだけかもしれない。
でも気になる。
今後サンプルをどんどん増やして、相関関係を調べてみたい。
さて、ちなみに現在はそんなことを悠長に考えている場合ではなく、ハーティックが打ち込んでくる剣を俺が受ける番だ。
ハーティックは明らかに手加減をしているとはいえ、剣による攻撃を剣で受けるなんてしたことないため、かなりの集中が求められる。
「オウギ様、剣術など知らないとおっしゃるわりに、良い感じに動けていますぞ!」
俺の動きをハーティックが評価する。
「もっと、手加減、してくれて、いいん、ですけど」
なんとか攻撃を受ける。
「ふう。だいぶ身体が温まってきましたぞ!」
ハーティックの全身から湯気が立ち上る。
「では、この後のこちらの攻撃を受けて、剣士の心を捨てることなく立っていられたら合格ですぞ!」
剣士の心を捨てずに立っていろ? なんか急にポエミーじゃないですか?
「どういうことですか?」
「やってみればわかりますぞ!」
「それって難しいんですか?」
「新人の訓練で、それができたものはほとんどおりませんな」
「それなら、合格できたら何かご褒美をください」
「ご褒美ですと?」
「はい」
「どんなものがお望みで?」
「じゃあ、なにか訓練とは関係の無いことから一つ質問させてください」
「聞かれても答えられないこともありますゆえ」
「答えられないことは答えられないでいいので」
「……わかりました。それなら問題ありませんぞ!」
ハーティックが了承してくれたので、何を訊くか考えなくちゃ。
その前に合格しなきゃいけないか。
剣士の心を捨てるな――か。
俺は剣士じゃないんだけどなあ。
とはいえ、この場で捨てちゃいけないものはコレしかないと思う。
であれば――。
「お願いします!」
準備を整えたところで木剣を握り直し、腰を落として構える。
「いきますぞおおお!」
ハーティックからの攻撃。俺は剣で受けた。ノーダメージ。
それを繰り返す。
ハーティックから脅しを受けたが、まだ先程までと変わらず、分かりやすい剣筋、目で追える速度のままだ。
しばらく攻撃を受けていると、ハーティックの魔力に変化が見られた。
剣の振り方は全く同じだが、明らかに魔力の込め方が違う。
全身に魔力を多く流し、さらには剣を握る手や腕と、踏ん張れるように脚により多くの魔力を集め、筋力の強化、補助に回す。
ドン!
木剣と木剣がぶつかったとは思えないような衝突音が全身に響いてきたのだった。
火属性――熱血。色々とうるさい。カッとしやすい。感情が表に出やすい。何事にも本気で向き合う。
水属性――物腰柔らか。柔軟な思考。一度攻撃的になるとどこまでも止まらなくなることも。
風属性――飄々としている。言動、行動が軽い。放浪癖。気まぐれ。
土属性――真面目。頑固。お固い。
氷属性――クール。感情の起伏に乏しい。心を許すとデレデレになりやすい。
雷属性――即断即決。すぐに行動に移す。
光属性――明るい。天真爛漫。周囲を振り回しがち。
闇属性――根暗。感情を殺しがち。狭い範囲で一つのことを突き詰める。
魔力の属性による性格診断。
その人の持つ魔力の属性毎の大まかな傾向というだけで、必ずしもこういう性格だと決め付けられるものではない。
火属性でも物静かな人もいるし、土属性でも不真面目な人もいる。
年齢を重ねるうちに薄れていく人もいれば、濃く出てくる人もいる。
※作者調べ。他にも属性アリ。あくまで印象によるもの。




