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【クラフト】なるスキルをもらって転生しました。  作者: きゆつき


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父上

 特にゴテゴテの装飾などもない、仕事するためだけにレイアウトされたと思われる父上の執務室。


 その、執務机に向かって座っている父上を見る。


 目つきは鋭く、力強さを感じるが、頬はやや痩けていて、仕事の疲れが溜まっているのか、やつれているようにも見える。


 魔力は――黄色で、かなりの量を全身にまとっており、魔力を使う研鑽を欠かさずに行っているように思える。


 見た目と反して武闘系なのかもしれない。


「何の用だ?」


 父上の問いかけに答えるよう、俺はゴウジの前に出る。


「この度は無断で外出し、申し訳ございませんでした」


 頭を下げる。


「ふむ。それで?」


 かーらーのー? みたいな振りをいただいてしまった。


「フオリ家に利益を持ち帰りますので、今後の外出の許可をいただきたいです」


 謝罪は済んだとばかりの俺の発言に、父上がどうするか、出方をうかがう。


 ちなみにゴウジは、「それはいきなりすぎですオウギ様」って表情をしている。


 本来であれば、こんな直球――この世界でも「直球」で意味が伝わるかは不明――ではなく、段階を踏んで話を進めていくべきなんだろう。


 とはいえ、そもそも俺は建設作業員の下っ端で、商談とか交渉なんてしたことが無い。


 他職と作業エリアが被った際に、時間をズラすとか、順番を調整するとか、ちょっとした打ち合わせをする程度だ。


 とはいえ、単刀直入に切り込んだのは慣れていないというだけではなく、いくつか理由がある。


 まず、離れに隔離、放置しやがってという父上への怒りが、顔を見た時からわいてきていたこと。


 次に、獣人たちの村を知ったことで、最悪は家を飛び出して、村作り編を始めてもいいなという心の余裕ができたこと。


 最後に、今日一日色々あったことで、疲れすぎてちゃっちゃと済ませたくなったという投げやり具合。


 あれこれ組み合わさって、出てきてしまったという感じだ。


 とにかく、口に出してしまった以上は引き返せないので、そのまま話を進めていく。


「僕は子どもですし、お金を稼ぐ手段も伝手(つて)もなく、一人で生きていくことなどできません」


 実際には【クラフト】した物を売るという手段はある。しかし、取引先――売る相手はいない。


 この世界のお金の価値もよくわかっていないし、売れる物を用意できたとして、きちんと売りさばけるか、しっかりと対価を手にできるかは難しいところだ。


「衣食住を頼りながら好き勝手させてくれというのは、さすがに虫が良すぎると思いますので、それなりの対価を支払うので、認めていただけませんでしょうか?」


 父上は表情を変えることなく話を聞いてくれている。


 衝撃的な話をしたと思うんだが、偉くなるとこれくらいで反応していられないのかもしれない。


 驚きすぎて反応できなかったって説も一応あるか。


 さて、父上はどう返してくるのか。


 一旦俺の言いたいことは言い終えたのだが。


 父上と目が合う。


 そこからたっぷり、一分くらいは見つめ――睨み合って――いただろうか。


 先に折れたのは父上だった。


「はあ……」 


 父上が天を仰ぐ。


 家の中だから天は見えないけどね。


「では、稼ぐ手段が無いと言うお前が、どんな風に利益を持ち込んでくれるというのだ?」


 おお。どうやら俺の話に乗ってくれるらしい。


 真面目で堅物そうな見た目の父上だが、柔軟な応対をしてくれるようだ。 


「はい。さっき採ってきたものですが、とりあえず今回はこれです」


 父上のいる執務机とは別の机の上に、手に持っていた薬草を置く。


 薬草(これ)を採ったのはかなり前だが、インベントリの中で新鮮さは保たれている。


「品質は良いと思うんですけど」


 魔力の強い薬草だけを選んだし、価値は高いと思う。


 あれ? この薬草の価値って、この家でもちゃんとはかれるのだろうか?


「薬草、か。

 ゴウジ、ガイゼを呼んでくれ」


「かしこまりました」


 父上の言葉を受けてゴウジが部屋を出て行く。


 父上と部屋の中で二人きり。ちょっと気まずいか。


 ところでガイゼという人間だが、オウギ君の記憶によればこの家の男性料理人のようだ。


 俺の朝と夕ご飯を作ってくれている方である。丁重にお出迎えしたいところだが、ここは俺の部屋じゃないから無理か。


 しかし、なんでシェフを呼ぶんだろう?


 薬草も食材の一種ということだろうか。


 しばらく待っていると、ゴウジがガイゼを連れて戻ってきた。


「旦那様、薬草の鑑定とのことですが」


「そこの机の上にある薬草を頼む」


「こちらですね。かしこまりました」


 うちのシェフは薬草の鑑定もできるらしい。


 ガイゼが薬草を手に持とうと近付いたところで、ようやく俺の存在に気付いたらしく、「うお?」と声をあげた。


「ガイゼさん、毎日のお食事、ありがとうございます。おいしくいただいております」


 ぺこり。


「え? あー。オ、オウギ様、ですか」


「はい。ご無沙汰しております」


「何故ここに……ではなくて、最近は体調を崩されることも減り、食事量も増えているようでなによりでございます」


「おかげさまです」


 美味しくいただいたり、こっそりインベントリに収納して非常食として保存させていただいたりと、助かっております。


「どうぞ、僕に構わずお役目を果たしてください」


 是非とも()()()をお願いしたい。高評価ってマジで嬉しいもんな。高評価っていうか、評価されることもなくなっていくしなあ。評価してもらえることが嬉しいよな。それが良い方のものだとめちゃくちゃ喜ばしいよなあ。


 ガイゼが机の上の薬草を手に取る。


「おおー。これは」


 ガイゼが驚嘆の声をあげた。

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