表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【クラフト】なるスキルをもらって転生しました。  作者: きゆつき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/60

夕焼け

 何も無い所から突如出てきた木造建築に驚いているのだろう、双子の精霊さんはしばらく呆然と建物を見つめていた。


「ええと、どうですか?」


 いつまでも黙って突っ立っていられても困るので、答えを促す。


「ああ」「まあ」「「いいんじゃないか」」


 とりあえず合格ということでいいだろう。


 しかし、改めて見るとバランスが悪いような気もする。


 わかりやすい数字に合わせて組み立てたので、やはり実物を俯瞰で見ないとどうなるか全然わからないな。


「中も見ますか」


 入り口を開けようとしたが、思ったより高かったので、踏み台代わりにいい感じの石を階段状に配置する。


「どうぞー」


 引き戸を開いて招き入れる。


 と言っても俺の家ではないが。


 中は窓も内装も何も無い、物置のような殺風景具合だ。


「「おおー」」


 それでも、精霊の二人は感嘆の声を上げる。


 しかし何も無さすぎて寂しいか。


 布で繊維をぎゅうぎゅうに包んだ敷き布団と、軽めに包んだ掛け布団二枚と、枕二つを【クラフト】して床に配置する。


「これで良しっと」


「いや」「ホント」「「どうなってんだ?」」


 あ。床に直接布団を敷くのは日本式すぎて変か?


「直接床に敷いて申し訳ない。ベッドは今度用意するんで」


「いやいや」「いやいや」「「それは構わないが」」


 これで良いらしい。


 掛け布団を【クラフト】してみたが、羽毛布団欲しいな。どこかで鳥の羽根を集めたいところだ。


「これで、村の人たちを許してもらえないでしょうか?」


「「ああ」」


 村の人たちは許してもらえそうで良かった。


「ところで、村の人たちにはどんな罰を?」


「飲み水に」「ちょっと」「「混ぜ物だ」」


(のろ)いとか?」


「いや」「ただの」「「毒草」」


 精霊さまの祟り(物理的な)だったか。


 村の皆が飲む水に細工をするとはかなりあくどいが、死者は出ていないようなので、多少は弱めの毒を選んだりしたのかもしれない。


 それでも、俺が来なければ身体の弱い年寄りや子供は亡くなっていたかもしれないが。


 それにしても、リアサに効果が無かったのは何でだろう?


 水を飲まないということは無さそうだし、纏っている魔力も独特だし、「毒無効」みたいなものでも持っているのかもしれない。

 

「すぐにとは言えないんですが、今度きちんと建て直しに来ますので、今日のところはこれで失礼します」


「「わかった」」


「リアサ、村まで案内してもらえる?」


「ん!」


「ではおやすみなさい」


「おやすみなさい」


 俺とリアサが精霊さんに向かって頭を下げた後、村に向かって歩き出す。


「「ちょっと待った」」


 引き留められた。


「「忘れものがある」」


「え? 忘れもの?」


 何を忘れたんだ俺は?


「あの」「跳ぶやつ」「「作ってくれ!」」


 まさかのトランポリン製作依頼だった。




 ――ということで、ちゃちゃっとトランポリンを三つ設置して、双子の精霊のもとを離れた。


 村に戻るためにリアサと手を繋いで森の中を進んでいる。


「一応、さっきの精霊さんのところで見たことも秘密で」


 リアサに話しかける。


「ん。オウギは、秘密主義者」


「もしかすると村の人たちには話すかもしれないけどね。そうなったら村の中では話してもいいかな」


 今後、獣人たちの村を利用するのであれば、【クラフト】を隠すことは難しい――というか、【クラフト】の実験をあれこれすることになるはずなので、積極的に見せていくことになるだろう。


 そんなことを話しているうちに、森を抜けて村に着いた。


 夕焼け空がキレイだ。


 外で見る夕焼け空なんて、転生してから初めてかもしれない。


 この時間は部屋の中に確実に居たからね。


 こんな時間まで外にいるという状況から、この後の展開を考えると億劫な気持ちになる。


 だが仕方ない。自分で選んだことだ。


「おい! 二人で、どこに行ってた? って、(なに)手を繋いでやがる!」


 村に戻って来るなりリアサのお(とう)、ユーヒに睨みつけられた。


 あまり絡まれると面倒なので、慌てて手を離そうとしたが、リアサはぎゅうっと握る力を強めてきた。


 ――ってか痛いです。


「お父、聞いて」


「いや、言い訳なんて聞いてられるか!」


「聞! い! て!」


「ダメだ聞けんって、いてえ」


 リアサのお(かあ)がポカリと攻撃したことで、お父の動きが止まった。


「黙って聞きな」


「う。お、おう」


「オウギが、全部、解決した」


 表情の変化が乏しいので正確にはわからないが、おそらくドヤっているリアサ。


 とはいえ、それだけでは伝わらないだろうから、山の精霊のことや、子どもたちがお社を壊してしまった可能性があること、苦しんだのはそれによる罰であることや、とりあえず許してもらったことなどを伝えた。


「そ、そうか。恩に、着る」


 お礼はするが、お礼相手に素直に言いたくないというお父の気持ちが透けて見える。


「しかし、子どもとはいえ、掟を破るとは……」


 そう呟いてお父は眉間にしわを寄せる。クマの獣人とはいえ、その表情は見て取れた。


「リアサ、何か知ってるか?」


「知らない」


 リアサが(かぶり)を振る。


「あくまで精霊の言い分ですので。

 それに、全て真実だとしても、お社はいつ壊れてもおかしくない状態だったと思います。だから仕方ないとは言いませんが、情状酌量の余地はあると思います。

 ただ、余所者の俺が出過ぎた真似をしているのも自覚してますので、子どもたちのことは村の中で決めるべきだとは思います」


 俺の言葉にリアサが訳わからんという表情をしている――気がする。


「あ、ああ。子どもたちのことは、こちらで話を聞いてからだな」


「それが良いと思います」


「では、君へのお礼についてなんだが……」


「それについては一旦保留でいいでしょうか?」


「保留だと?」


「はい。さすがにそろそろ家に帰らないと怒られてしまうので」


 たぶん今から帰っても怒られるだろうけど。


 病気がちで出歩くこともままならなかった領主の息子が、無断で夜になるまで一人どこかでほっつき歩いていたなんて、とんでもない事態であることには間違いないだろう。


「あらそうかい? うちに泊まってもらおうと思っていたけどねえ」


「ん。泊まっていくべき」


 お母の言葉にリアサも同調する。


 めちゃくちゃ疲れたし、いっそ泊まっていきたいくらいではあるが、そうもいかない。


「明日――は難しい気がしますが、数日以内にはまた来たいと思います」


 明日来るとしたら、家を追い出された時かな?


「さっきも言ったが何も無い村だ。こちらとしても考えてはみるが、君からの希望があるならば応えよう」


「はい。ありがとうございます。考えてみます」


 そろそろお暇しなければ。


「では、今日は帰ろうと思うんですが」


「うん? どうした?」


「帰り道がわからないので、谷のところまで案内お願いできませんか?」


 谷のところまで案内してもらった後で、女の子一人で帰すのもどうかと思ったので、お父にも付いてきてもらうつもりだったのだが。


「ん。任せて」


 と、リアサは俺を引きずって駆け出した。


「お、おい。リアサ待ちなさい」


「アンタ、邪魔すんじゃないよ」


 慌てて走り出そうとしたお父を羽交い締めにして止めたお母。そんな二人の姿が小さく遠くなっていくのを見ながら村を出た。




 リアサに引きずられるようにして、あっという間に橋を架けてこっち側にやってきた場所まで戻ってきた。


「ありがとうリアサ」


「ううん。こちらこそ、ありがとう。オウギ」 


「また橋を架けるけど、渡りきったら消すから、乗ったりしないでね」


「ん」


「あとはこれ」


 インベントリの中から、「光」を『属性付与』した水晶と、「伝導」を『特性付与』した木の棒を組み合わせて【クラフト】した、懐中電灯を取り出しリアサに手渡す。


「これは?」


「魔力を込めて握ってみて」


「ん」


 すると、木の棒の先にはめ込まれた水晶から光が直線状に伸びた。


「おー」


「これで暗くても足元が見えるはず」


 もうすぐ太陽が完全に沈む。


 空にはわずかにオレンジが残っているが、視界は既にほぼ真っ暗だ。


 リアサなら夜目が利く可能性もあるんじゃないかと思えてくるし、だからこそお母も送り出したのではないかと思うが、見えなかったら暗闇の中を歩かせることになってしまう。


 ここまで案内してくれたリアサに、そんな危険な状況で帰らせるわけにはいかないだろう。


「魔力を使って光ってるから、使い過ぎに注意ね」


 リアサの魔力を視る限り、数時間使い続けても問題ないだろうけど。

 

「わかった。オウギ。ありがとう」


「うん。じゃあまたね」


「オウギ」


「うん?」


「絶対に、また来て」


「うん。もちろん」


「来なかったら、あたしが、行くから」


「うーん。無理矢理に谷を越えて、またケガなんてして欲しくないし、絶対に行くから」


「約束」


「うん。約束する」


「オウギ」


 何? と返事をしようと思ったら、すぐ目の前にリアサの顔があった。


 首の後ろに回された手と、左頬に当たる柔らかい感覚。


「またね」


 それだけ残し、言葉を失う俺に背を向けて、リアサは駆けて行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ