仮の社
「アレはオレらを祀って建てられた社だったモノだ」
ボロボロになった木材の塊は、もともとお社だったらしい。
「ガキどもが来たせいでこんなことになっちまった」
「ごめん、なさい」
双子の精霊の話を受け、リアサが俺の手を離して頭を下げた。
「近くで見てもいいですか?」
気になることがあるので、じっくり見せてもらえないかと二人に訊ねる。
「「いいよー」」
軽い了承を得たので、木材の塊に近付いて見る。
そこにあった木材は朽ちてボロボロだった。
獣人の子どもたちが悪さをした結果らしいが、この様子だといつ壊れてもおかしくなかったんじゃないかと思う。
たまたま運悪く、最後の一押しになってしまったという感じだ。
子どもたちがすべて悪いとも言いきれないかもしれないなあ。
まあ獣人の大人からすれば、そういう事態を避けるために近付くなという掟を作ったのだろうし、それを破ってしまったのは良くないことだろう。
とはいえ、村全体で罰は受けたことだし、これ以上苦しむ事態は回避してあげたいところだ。
ではどうするのか。どうするべきなのか。
俺のやるべきことは決まっている。
精霊を祀るお社を再建。
それは転生する際、神さまにやって欲しいと言われたことそのものと言っても過言ではない。
とはいえ、今から建てるのは時間も無ければ設計図もアイデアもセンスも無い。
まあ、時間があってもセンスも何も無いので、どんなものができあがるかわからないが。
「お二人にお願いがあります」
「「なんだ?」」
「お二人のお社を俺が新たに建てますので、村の人たちへの罰を止めてくれませんか?」
「「ほう?」」
「ただ、時間が無いので一旦今すぐ仮のお社を建てます。しばらくはそれで許してもらえませんか?」
「仮の社を」「今すぐに」「「だと?」」
「はい」
「そんな」「ことが」「「できるのか?」」
「納得してもらえるものかはわかりませんができます」
「よく」「わからないが」「「やってみろ」」
双子のコンビネーション芸による許可を得た。
「木が欲しいのですが、この辺にある木で三本ほど伐ってもいいやつありますか?」
「「ふむ」」「アレと」「アレと」「「アレ」」
指定された三本の木を伐るために、インベントリから「切断」が『特性付与』された石斧を取り出す。
「手伝う」
とリアサ。
たしかに俺が伐るより任せたほうが早いかもしれない。
「これ、木を伐るために特化した斧だから、サクッといけるはず」
石斧をリアサに手渡す。
「任せて」
「思ってるより伐りやすいはずだから、最初は慎重に。気をつけてね」
「ん」
リアサは頷くと、指定された三本のうちの一本に近付き石斧を振るう。
「あれ?」
おそらく何の手応えも無かったのだろう。戸惑うリアサ。
こうなるだろうと思っていて、斧を振り回す半径から離れていた俺は、急いで駆け寄り伐られた木をインベントリに回収する。
「お見事」
「この斧、すごい」
リアサは石斧の切れ味に興奮しているようで、嬉しそうにぶんぶん振っている。
村の子どもたちが申し訳ないという気持ちから、私が木を伐るという申し出をリアサはしてくれたのだろうと思うが、すっかり石斧の威力にテンションを持っていかれているようだ。
リアサはその勢いで、二本目、三本目と伐っていき、俺も即回収していく。
では、早速手に入れた木で【クラフト】していこうか。
伐ったばかりの木を建材にするのは有識者に怒られそうな気もするが、木を乾燥させる方法も何も知らないし、仮の建物だし、【クラフト】で良い感じの木材に加工して使うし、生木でやってしまおう。
問題は、仮とはいえどんな形にするのがいいか全然決められないことだ。
建設業に携わっていたとはいえ、俺がやっていたのは図面に合わせて外壁を取り付けるだけの作業。
建物そのものの設計やデザインなんてしたことない。
しかし、考えている時間もないので、今回は犬小屋を大きくしたようなものを建てようと思う。
三角屋根――切妻屋根とかいうんだっけか。何かの資格講習で習ったような気もする――のシンプルな建物を作る。
規模感がわからないが、床面積が3000×4000――長さの単位は全てミリメートルで考える。こっちのが慣れてるので――高さが2500,三角屋根の頂点で3000くらいでいくか。
これ、もしかして木材が足りないか?
足りなければ追加すればいいか。幸いこの山の精霊がいるわけだし、丁度良い木は他にもあるだろう。
まずは2500の柱を四隅に立て、梁で繋いでいく。
これ、足元に水平方向に繋ぐものも「梁」という呼び方でいいんだっけか? 柱と梁くらいしか関わりなかったので、正式名称がよくわからん。
とにかく、柱の頂点部と下から100ほど上がった位置で、水平に柱と柱を繋いでいく。
二本の短辺の梁の中心に、500の小さい柱を立て、その二つも梁(?)で繋いで、三角屋根の頂点にする。
ここで木材が足りなくなる。全然足りないじゃないか。
「すみません。木が足りなくなったんでもう少し伐っていいですか?」
「足りないって」「さっき伐った木は」「「どこへ行ったんだ?」」
「どこかは言えないですけど、今使っているところです」
「「また秘密か」」
「すみませんが秘密です」
「よくわからんが」「追加で伐るのなら」「あの辺の木のせいで日当りが悪くなってるから」「伐るならあの辺だな」
「わかりました。ありがとうございます」
追加で伐る許可をもらったので、早速リアサに頼む。
「じゃあ、これとそれとあれとあれ、リアサお願いできる?」
「ん」
勢いよく伐るリアサと、回収即板材へと【クラフト】していく俺。
今日、これだけ【クラフト】しているのに魔力不足に陥らないのは、この一年の成果と言ってもいいだろう。
まずは床板、を敷く前に、床板を受ける木材――名称はわからない――を取り付ける。
そこに床板を敷き詰めた後、外壁をぐるっと取り付けていく。
お次は屋根。
三角屋根の頂点になる位置に通っている木材――これも名称知らず――に屋根となる板材を付けていく。
屋根の取り付け方もよく知らないが、本来ならきっと、もう一本か二本屋根を受ける木材が必要そうな気がする。
まあ仮だし、『特性』による「固定」だし、これでもかなり強度は出てるはずだ。
最後は出入り口。
短辺方向の中心に、幅900、高さ1800の入り口を設ける。
扉は引き戸にしよう。
同じ位置に並べた、左右に開く二枚の扉を、閉め切った状態で壁に50かぶるように500で【クラフト】。
扉が前後にはズレないが左右には動くよう、上下に木材を取り付ける。
鍵も何も無いので、セキュリティ弱々物件だが許してもらうことにする。
こんなところで建物自体は完成でいいだろうか?
窓も明かり取りも無いが、それは次にちゃんと作る時に取っておこう。
「何をしているか」「さっぱりわからんが」「「本当に作れるのか?」」
インベントリの中で【クラフト】しているだけなので、周りからは見たら謎の行動を取っているようにしか見えないだろう俺に、二人が訊いてくる。
「お社を建てるのは、使命みたいもんですしねえ」
「使命?」「みたいなもん?」「「誰かに命じられてるのか?」」
「それも秘密です」
「「「秘密主義者め」」」
あれ? 声が三つ聞こえたんだが? リアサさん?
まあそれは置いといて、【クラフト】したお社を置く場所を作る。
柱を設置する地面の水平を取る。
水平を測る方法だが、実はそのための道具を【クラフト】してあったのでそれを使う。
まず桶に水を張り、船のようなものを浮かべ、その上に「光」の『属性』と「直進」の『特性』――真っ直ぐにだけ進む乗り物を【クラフト】して遊んでいるうちに習得した――を付与した水晶を載せる。
この水晶から光を、水面にきっちり平行に出せるように微調整するのが大変だった。
次に、木の棒を使って水晶から出る光と地面までの距離を測り、同じになるように掘ったり埋めたり固めたりしていく。
「それは」「一体」「「何をしているんだ?」」
「水平を取ってます」
「「すいへいをとる?」」
「はいそうです」
面倒なので説明はせず、淡々と作業を進める。
「よし。おっけい」
地面を真っ平らにしたところに、【クラフト】したお社をインベントリから取り出して設置。
「「えっ?」」
「なにこれ?」
双子もリアサも驚いている。
「とりあえず仮のお社はこんな感じです」
この社、実際作るとしたら、屋根の角度が緩くて変な感じになりそうですがそのままでいきます。
作り直す時にはもう少し良くなることを期待しましょう。
読んでいただきありがとうございます。
また次回も読んでいただければ幸いです。




