外の情報が欲しい
――未来予告
――距離にして三〜四メートル程。
――さすがにこの距離まで近付けば、俺の存在は認識されているだろう。
――俺は身構えると、インベントリの中から攻撃するための武器を取り出す。
こちらは、まだ書いていないが、脳内にあるシーンの一部を書いておこうという試みです。
まだ書いていないシーンなので、細かいニュアンスや表現、人物名、設定その他諸々、変更される可能性があります。
さらには、シーンそのものが無くことも、そのシーンまでたどり着くことなく筆を放り投げる可能性すらもあるくらいですが、そのまま使えるように書き続けていきたい所存です。
「んーーーー?」
パンから小麦粉に戻そうという試みは、どうやら失敗したようだった。
魔力が減った感覚もないし、何も発動していないはずだ。
魔力が足りなかったのか、スキルの練度が足りなかったのか、俺のイメージ力が足りなかったのか、そもそも不可能なのか。
詳しい理由も理屈も現状わからないが、こうやってサンプルを集めていくことが、理解するために必要なものだろう。
とりあえず現状やれそうなことをやるとして、小さくなったパンをさらにちぎりまくってみるか。
パンをただ細かくちぎって、結構な魔力消費感と生パン粉のようなものを得ることができた。
魔力をかなり消費したような感覚で、疲労感がめちゃくちゃあるのは、半日前に魔力枯渇状態に陥ったせいで回復しきれていないからかもしれない。
で、このパン粉を集めてくっ付けると――。
――おはようございます。
案の定意識を失った俺は、増量してもらった朝食をいただいております。
この短期間で二回も気絶して大丈夫なのかという不安もあるが、大丈夫かつ得るものがあると信じるしかない。
朝食をとりながら、ついでにインベントリの検証を行う。
温かいスープをインベントリの中に入れたり出したり。
器ごとは当然入るが、スープのみでもインベントリの中に収納することが可能だった。
ただし、インベントリから出したときには、器なり入れ物なりがないと、その辺にまき散らすことになる。
器ごとインベントリに入れてしまうと、この後の下げ膳の際に、スープが入ってた皿は何処へ消えた? となってしまうので、スープだけをインベントリにしまっておく。
温かいスープをインベントリの中に入れることで、スープの温度変化を確認しようと思う。
温度が保たれていた場合、インベントリの中では時が経過しないという可能性が出てくる。
こういうのは、インベントリの中だと変化が起きないというのが定番だし、そのままを保ってくれるなら、食糧貯蔵庫として優秀過ぎるものになる。
インベントリの中のフォーカスを、スープから隣に移しそこにあるものを取り出す。
これは、昨日の気絶前に【クラフト】を行った結果、できあがったパン粉を固めたものである。
俺のイメージ力が足りなかったのか、スキル練度が足りなかったのか、元のパンとはほど遠い物体となってしまった。
手の上で転がしてみるが、バラバラになることなく一体化している。
このまま残りの元のパンともくっつけられるか試してみたいところだが、今それをすることはしない。
今日はここで意識を失うわけにはいかない。
なぜならば、この後おじいちゃん執事――ゴウジによるお勉強タイムが待ち受けているからだ。
お勉強といっても、教わっているのは完全に日本語であり、小学生低学年レベルの読みなので、俺にはまったく必要のないものではあるが、転生してきたことを知られたくないので、大人しく教わるつもりでいる。
朝食を終え、食器を下げてもらい、ぼへーっと待っていると、ノックの音が聞こえてきた。
「オウギ様、よろしいでしょうか?」
「はーい」
ドアを開けて入ってきたのは、白髪の老執事ゴウジ。
「さて、今日はこちらを――」
「あの、ゴウ爺」
ゴウジが一冊の本を広げようとするところで制止する。
「オウギ様? 如何なされましたか?」
ゴウジのお勉強とは、基本的には本を読むことである。
毎回ゴウジが選んできた本を読み、わからない文字や言葉があればゴウジに訊いて調べる――つまり、ゴウジという辞書を用いて、本に書かれた内容を理解するという時間になる。
この家にはそれなりの数の本があるようで、今のところ同じ本が出てきたことはない。
製紙技術がきちんと発達している世界なのかもしれない。
とはいえ、練習の為だけに紙や筆記用具を使うほど有り余っている訳ではなさそうで、書く練習はほとんどしていなかった。
ということで、本日もゴウジは本を選んで持ってきたわけだ。
「外には魔物がいるんですよね?」
「はい。様々な魔物が存在してございます」
「どんな魔物がいるのか気になるから、魔物に関する本を読んでみたいです。
――もちろん、そんな本があればの話で、今日じゃなくて今度でいいんですけど」
手持ちのスキルの情報を集めている最中ではあるが、もらえるのであれば、この世界の情報はなんだって欲しい。
当然、魔物――モンスターに関する情報も欲しい。
そんな都合の良い本があるかはわからないが、ここで希望を伝えておけば、手に入った時に俺にも見せてくれるかもしれない。
そんな思惑を抱えて伝えた言葉を聞いたゴウジは、今日のために持ってきた本を持ち直し、
「オウギ様。少々お待ちください」
そう言って部屋を出ていった。
しばらくして、先程とは違う本を持ってゴウジが戻ってきた。
「では本日は、こちらの本を読んでいただきましょう」