リアサのお母
俺の【クラフト】した「治癒系特性全盛り水」――以後超ポーションと呼ぶことにする。(仮)も面倒なので無し――を飲み、コップを置いたリアサの母――お母――は、俺に訊いてきた。
「これで、すぐ、治るのかい?」
「人によって差はありますが、長くても一時間くらいで効果が出てくると思います」
逆に言うとそれでも効果がでなければ俺では治せないという可能性が高い。
「失礼、するよ」
そう言ってお母は横になる。
「おい、大丈夫、なのか?」
お父がお母に話しかける。
「リアサが、信頼してる。なら、大丈夫」
「だがなあ……」
納得いかない様子で頭を振るお父。
「アナタ、名前は?」
「おい、そんな、人間と、話すな」
「アンタは、黙って寝てな」
体調悪くても夫婦喧嘩は起こるようだ。
「オウギ、です」
そんな夫婦喧嘩は置いといて、お母の問いに答える。
「オウギ君は、リアサと、何があって、ここに来ることに?」
「お母。まだ、寝てて」
リアサが心配そうにお母に寄り添う。
「ありがとう。リアサ。でも、ただ寝てても、ヒマだから」
超ポーションの効果が出るまでの暇つぶしを要求しているらしい。
「リアサさんがすごい勢いで跳んできたことで、体中キズだらけになっていたので、たまたま居合わせた俺が治療した、って感じですね」
「リアサ、大丈夫、なのか?」
お父が心配そうに尋ね、お母もリアサを見る。
「ん。問題ない」
当のリアサはこともなさげな様子で答えた。
「ふむ。それで、連れて来ることに、したんだね」
「そう」
お母の言葉にリアサが頷く。
「リアサを治した方法や、この水について、詳しく訊いても?」
「申し訳ないですが、言えません」
「ワケアリってことかい?」
「はい」
わけも何も、俺の能力が変に広まって、不利益を被ることを避けたいというだけのものでしかないが。
それに、隠すつもりではあるが、治療が成功すればこの村の中では、少なくとも治療に関する何らかの、知識なり能力を持つ人間と認識されることは避けられないだろう。
そうなると素直に話してしまうのもアリなのか? と今更ながらに思ってしまった。
いやしかし、【クラフト】にしても、インベントリにしても、「治癒」の『特性』にしても、俺自身の能力ではあるが授かりものでしかない。
ただ授けられただけのものですと答えるしかなく、それはそれで胡散臭いか。
「そんな、何も、話せない、ものを、げほっ」
お父が怒りを込めて言うが咳き込んでしまう。
「もう飲んじまったし、いつまでもグチグチ言わない!」
お母の怒鳴り声が響く。
「お母?」
「うん?」
「叫んでも、大丈夫?」
「あー?」
リアサに問いかけにお母は立ち上がり、声を出したり身体を動かしたりと、どうやら自らの状態を確認しているようだ。
お母は一通り確認が終わると「うん」と頷き、「治ったわ!」と宣言した。
元気になったと思われるお母に、リアサが飛び込むようにして抱きつく。
「お母」
「ありがとねリアサ」
あまりにも早すぎるが、超ポーションを飲んでから数分しか経っていないというのに、効果が出たらしい。
獣人の回復力が高いのか、お母の回復力が高いのか、俺の治癒系『特性』の効果が高くなっているのか。
いずれにしても、治療に成功したのは間違いない。
魔力を視ても、最初に視た時とは比べものにならないくらいに力強く身体中を巡っているのが分かる。
お父と比べても一目瞭然だ。
「オウギ君もありがとう」
お母が俺に頭を下げる。
「お礼は後にしましょう。少なくともお母さんには効果があるとわかったと思いますし、できればみなさんに飲んでもらえるようにお願いしたいのですが」
一瞬、お父から、お前の「お母」ではないだろ何を言っているんだという怒気のはらんだ視線が飛んできたように感じたが、お母によって遮られる。
「さあ、あんたも飲むんだよ!」
「いや、待て」
「いやも待てもないよ!」
半ば無理やりに、お母が手に持ったコップの中に入っている超ポーションをお父に飲ませる。
「ユーシ、起きれる?」
お母はここまでずっと寝ていた、彼ら夫婦の子だと思われるクマ獣人に声をかける。
「これ飲めるかい?」
気怠そうに起きたユーシと呼ばれた子クマ獣人に、お母は超ポーションを渡して飲ませる。
「これでうちは良いとして――オウギ君、次はどうしたらいいんだい?」
治療に成功したことでお母の信用を得たようで、俺に次の行動の指針を尋ねてきた。
「ほかの苦しんでいる人たちにもこれを飲んでもらいたいので、まずはこの村の長とかまとめ役のような説得力のある人に飲んでもらって、効果を理解してもらいたいところですね」
俺がそう答えると、お母はニヤリと笑ってみせた――ような気がしたが、正直なところ獣人さんの表情はよくわからない。
「ああ、それならもう済んでるよ」
リアサのお父――ユーヒ
リアサのお母――ユーリア
リアサの弟――ユーシ




