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谷の向こう

「助けて、ください」


「ええっと……」


 困っている可愛い女の子から直接助けを求められる展開は、これが仮に神のシナリオに乗せられたものだとしてもアガるものがある。


 これまで、こうなったら断れずに流れにのまれ、面倒なことに巻き込まれるのがイヤで、そもそも他人に関わらないように過ごしてきたわけだが、こんなイベントが起きたら起きたで嬉しい気持ち自体はあるもんなんだな。


 まあなんにしても、目の前のリアサの様子を見て断わることなんてできないか。


 問題は治すことができるかどうかだ。


 治せるかどうかも実際にやってみなければわからないので、結局やるしかないか。


「お礼は、できる限りする、から」


 ここで「何でもしますから」とはさすがにこなかった。


 何でもしてもらうつもりも無いけど。


「とりあえず行って、見てみないことには治せるかもわからないから、案内してもらえるかな?」


「じゃあ」


 リアサが顔を上げると、無表情の中にもキラリと輝く期待感のこもった瞳がみえる。


「治せる保証はしないし、お礼は治すことができたら考えるってことで」


「わかった」


「谷の向こうだよね?」


「ん」


 リアサが頷く。


「どうやって行く?」


「え?」


 どうやらリアサは帰ること――というより人を連れて帰ること――を何も考えていなかったようだ。


「また、跳ぶ?」


 何故疑問形なんだ。


「いやいや、俺の体が保たないよ」


「守る」


「無理があるかなあ」


「うう」


 リアサはうつむいて考え込んでしまった。


 谷の向こうへ行く手段は当然俺にある。


 長い橋になるものを【クラフト】して架ければいいだけだ。


 しかし、さすがにバレるよなあ。俺のインベントリ。


 インベントリそのものがバレるわけではないが、俺がヤバそうな能力(ちから)を持ってることがはっきりくっきりと見えてしまう。


 さっきのケガの治療だって、あえて触れてないだけで不思議に思われているだろうし。


 ――単に細かいことは気にしない性格ってだけかもしれないけど。


 いやでも、みんなを治すとなるとどうしたってバレてしまうか?


 こんな谷の向こうに暮らす人々なら、バレても問題ないのか? 


 治しに行くと決めた以上は行くんだが、一応リアサに釘だけ刺しておくか。 


「谷を越える方法はある」


 リアサがバッとこちらを見る。


「ただ、これから俺がやることとか、治療できることとかを誰にも言わないで欲しい」


「みんなにも?」


「うん。治すときも、うまいこと合わせて欲しい」


 実際、こんな子どもが治療をすると言ったところで、素直に受けるとは限らない。


 さらに治す方法やそれで治るかもしれない理由の一切合切を伝える気が無いのだから、大人しく治されとけというほうが無理かもしれない。


 断固拒否という姿勢を取られたら、せっかく無理してまで跳んできたリアサには悪いが、さっさと引き返そう。

 

「無茶苦茶を言ってるけど、お願い」


「わかった」


「一旦は俺とリアサ、二人だけの秘密ということで」


「ん」


 リアサが力強く頷いた。




 リアサが谷の向こうのどこから来たのかわからないが、「みんな」を治すためにまずは谷を越える。


 トンネル出入り口を作ったすぐそこから、向こう側へ行くための橋を架けるとして、まずはその橋を【クラフト】しよう。


 谷の向こうまでの距離はおよそ二十メートル。


 長めに見積もって、三十メートルの橋を【クラフト】する。


 木材をいい感じに加工し、幅二メートル、長さ三十メートル、厚さ十センチメートル程で繋ぎ合わせて「固定」し、「硬化」で折れないように強化する。


 橋を設置する場所を二メートル四方で十センチメートル程掘り、木材で【クラフト】した橋をインベントリから取り出し設置。


 これで向こう側へ行ける。


 橋梁工事に携わったことはないので、こんな橋の架け方をして良いのかわからないが、こんな橋の架け方をすることなど前の世界では無いので、前の世界の基準でいえば確実に違法建築だ。


 高くて不安定な場所が苦手な俺としては、両サイドに手すりになるようなものを設置したいところだが、今回はただのデカくて長い板を置いただけのものにしておく。


 手すりもないし固定もしていないし、合法なところを探すほうが難しいくらいか。


「これで向こうまでいけるかな」


「すごい」


「これも秘密で」


「ん」


 さて――と、幅も広めに取ったし、途中で折れないように補強もしたし、大丈夫だとは思うが真ん中を慎重に進み始める。


 このはしわたるべからず、だ。


 なんてことを考えていたら強く手を引かれた。


「うええ?」


 当然リアサである。


 俺を引っ張って走り出したのだ。


「ちょっ、まー」


 引きずられるようにして谷を越える。


「待って、マジでちょっと待って」


 橋にした木から、赤茶けた土というよりは岩に近い固い地面にリアサが足を踏み入れたところで、俺は必死に叫んで止める。


「うん?」


「一旦橋を回収させて」


 谷を越えられる道を放置して、万が一人だったりこちらに居ない魔物が移動してきて、問題が起きるのは避けなければならない。


 まずこの橋にしている木の板をなぞるように地面に線を引く。これで、戻る時はこの位置に合わせて設置し直せばいいはずだ。

 

 それから橋に触れてインベントリに回収する。


 帰る手段とみんなを治せる可能性を得て、リアサとしては急いで帰りたそうに不満げ――表情だけでは変化に乏しくてわからないが、おそらくそう思ってそうな雰囲気――ではあるが、待っていてくれた。


「おっけー。じゃあみんなのところに案内してもらえる?」


「ん!」


 リアサは再び俺の手を引き、すごい勢いで走り出した。

別視点を入れてみたり、伏線ぽいものを張ってみたり、好き勝手している後書きですが、今回は作者の雑記ですので読み飛ばしても大丈夫なやつです。


皆さま、見てくださりありがとうございます。


評価やブックマーク、リアクションなどをしてくださった皆さま、ありがとうございます。


そんな皆さまの存在が、めちゃくちゃモチベーションアップに繋がっております。


もし、1%でも評価やブックマークをしてやってもいいと思っていただけましたら、ぜひともよろしくお願いいたします。


まあ俺自身、お願いされてもあまり積極的にしてこなかった人間ではあるので、本当に「してやってもいい」「してやるかー」と思っていただけた時で構いませんので、お願いいたします。


せっかく公開しているので、一人でも多くの方の目に触れてもらえるよう頑張ります。


それではまた来週お目にかかれたら幸いです。



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