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上から女の子が

 空から女の子が降ってきた?


 いや、空からかはわからないが、どこからか木に向かって飛んできた感じだろうか?


 かなりの勢いで木にぶつかったようで、枝によって付けられたと思しきキズが全身あちこちにある。


 そこからさらに地面に叩きつけられていて、死んでいてもおかしくないくらいのダメージを負っていそうだが、呼吸もしているし、魔力を視てもちゃんと生きている。


 ただ、どうやら意識は失っているようだ。


 目を閉じていても、整っていて美しいとわかる顔。


 しかし、赤いロングヘアーは手入れされていなさそうで、毛先も雑にカットされている。


 気絶している女の子をジロジロ見るのもどうかとは思うが、ついつい見てしまう。


 さて、ここまで可能な限り他人と関わらないようにしてきたので、一瞬放置して立ち去るという選択肢も頭に浮かんだが、さすがにケガ人を放置することはできなかった。


 特に大きい左腕と左脚のキズは、早く処置する必要がありそうだ。


 インベントリから「浄化」を付与した水に浸けた布を取り出し、キズ口やその周りの血を拭っていく。


 血の匂いで魔物が寄ってきても面倒なので、血のついた布はきっちりインベントリに収納。


 次に、「治癒」「回復」「浄化」の付与した水――最初からこれで良いような気もするが、何となく消毒用と分けてみた――で浸けた布をキズ口に当てていく。


 細かいキズには先程の「キズなおし用『特性』付与水」を塗り付ける感じでささっと拭いていく。


 すると、「キズなおし用『特性』付与水」のおかげか、本人の自己治癒能力の高さか、みるみるうちに小さいキズがふさがっていく。


 いっそ気持ち悪さすら覚える早さだ。


 大きなキズの方も、あてがった布がくっつかないようにインベントリに収納すると、かなり治っている。


 外傷はもうすぐにでも消えてなくなりそうだ。


 あとは臓器や骨など、見えないところを負傷しているかどうかだが、これは本人でなければわからないだろう。


 医師など治療の心得があるような人間ならばわかるのかもしれないが、俺にはそんなものは無い。


 見えるキズがほぼすべてふさがったところで、声を掛けて意識を呼び戻す。


「おーい。大丈夫ですかー? 生きてますかー?」


 反応無し。


 意識の無い女の子に触れるのに若干はばかられたが、この場面では仕方がない。


 というか、精神的にはおっさんでも、見た目は十歳くらいの男の子なんだから、体を揺するくらいは許されるか。


「大丈夫ですかー? 起きれますかー?」


 肩を掴んでゆさゆさ揺らしてみる。


 すると、女の子の大きな瞳がパッと開いた。


「っ!?」


 彼女は言葉にならない声を発し、俺から離れるように飛び退く。


「ううっ」


 急に動いたことで、体に痛みを感じたのだろう。彼女は脇を押さえてうめき声を上げる。


 やはり先程の木にぶつかった衝撃か、そこから落下したことでダメージを負っていたのだろう。

 

「えっと、一旦見えるキズは治したんだけど、まだ痛む場所ある?」


 俺は両手を上げ、敵対する意思も攻撃する意思も無いと伝えつつ訊ねる。


 対して彼女は、俺に警戒を強くしつつ自身の身体を確かめているようだ。


「警戒するのはわかるけど、そもそも何か酷いことをしようとか、悪いことをするなら、意識が無い状態ですると思わない? わざわざ起こさないでしょ?」


「…………それは、そう……かな」


 俺の言葉に多少は納得したのか、恐る恐るではあるものの、彼女は俺の方に近づいてきた。


 近くで見ると彼女の顔の良さがよくわかる。


 美人というよりは可愛いというタイプだ。


「これ、治せる?」


 彼女はばっと服をめくり上げ、俺は思わず目をそらす。


「ん? 見て。これ」


「え。あ、うん」


 急に服を脱ごうとしたのかと思って目をそらしてしまったが、ヘソの横に俺の気付かなかったキズがあった。


 木に突っ込んだ時に服がめくれて皮膚が切れ、落ちてくる間に服で隠れたのだろう。


 服を脱がしてまでキズを探したりはしなかったので、見逃してしまった。


「ちょっとしみると思うけど我慢してね」


「ん」


 俺の言葉に応えつつ、彼女はくんくんと何かの匂いをかいでいるようだ。


 俺、匂うんか? 自室に近い場所に地下のトンネル脇に地下室を作り、浴室を用意して定期的に体を洗い流してはいるんだが。


 自分の体臭を気にしながらも、「浄化」付与水でキズ口を消毒し、キズなおしセット水を染み込ませた布を当てる。


「これでこのキズは少ししたら治ると思う。他にも痛むところはある?」


「ここ」


 彼女は自らのみぞおちの脇を指さす。


 位置的に肋骨だろうか? 仮に骨折だとして、ポーション(仮)を飲んで治るのだろうか?


「効果があるのかも、あったとしてもすぐに効くかはわかんないけど」


 痛みがあると訴える辺りに「治癒水」――名称が安定しないが、回復系の『特性』盛り盛り水――を塗りつつ、「治癒」「回復」を付与した水――強ポーション(仮)を竹のコップに入れてインベントリから取り出す。


 一応腕を背中側に持っていき見えないようにインベントリから取り出しているが、何も無さそうなところから出してきていることに何も思っていなさそうなのでそのまま続ける。


 今後こういう事態を想定して、かばんのようなものを用意しておくべきなのかもしれない。


 取り出した強ポーション(仮)をまず俺が一口飲む。


「変なものは入ってないから、これを飲んでほしい。これで良くなるはず」


「わかった」


 そう言って手渡すと、彼女はあっさりと受け入れ飲み干した。


「あなたの、匂い、なんか、懐かしい。

 だから、信用できる」


「それは、勘みたいなもの?」


「ん。そう」


 彼女は頷く。


 匂いでわかるらしい。凄まじい嗅覚を持っているのかもしれない。


 さて、このまま効果が出るまですることもないし、不快に深入りしない程度に話を聞いてみるか。


「木に突っ込んできたように見えたけど、あなたはどこから来たんですか?」


「リアサ」


「リアサから来た?」


「違う」


「違うんですか」


「名前。リアサ」


「あなたのお名前がリアサさん?」


「そう」


 彼女の名前はリアサというらしい。


「そっちは?」


「俺はオウギです」


「オウギ」


 彼女はそのまま何度も「オウギ」と口に出して繰り返す。


「オウギ。覚えた」


「それで、リアサさんはどこから?」


「リアサ」


 呼び捨て希望らしい。


 名前の呼び方を指定されるのは若干のハラスメントみを感じるが、かといって拒否する理由もないか。


「リアサはどこから来た?」


「あっち」


 そう言いながらリアサが指さしたのは、谷の向こう側のここよりも標高の高い方向だった。

ようやく身内以外の人間(?)を登場させることができました。

予告に出した名前を変えることなく出せて良かった。

まあ、この後変更する可能性も無くはないんでしょうが、無いことを願います。


さて、年明けから四日連続で投稿しましたが、ストックが無くなったのでまた一週間毎になる予定です。


読んでくださった皆様、評価、ブックマーク、リアクションをしていただいた皆様、本当にありがとうございます。

よろしければ次回も立ち寄っていただければ幸いです。

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