クマ退治
クマに向けてスリングショットで放った一発目――見事に外れる。
命中率の低さは自覚していたが、ここまで下手くそとは。
我ながら情けない。
しかし、ここで凹んでいる暇も余裕も無い。
インベントリから次弾を取り出し、スリングショットで放つ。
クマに反応あり。
どこにかはわかってないが、当たったらしい。
この後、クマが逃げようとするのか、反撃しようとするのかわからないが、リアクションを待っている場合ではない。
クマに向けて次々に弾を放っていく。
ひたすらに、我武者羅に三十発ほど撃ったところでクマの動きを見る。
クリーンヒットしたのは五発くらいだろうか。
クマはうつ伏せに倒れたまま動かなくなっている。
魔力を視ても動きはなし。
一応周囲も確認――よし。
まあ、このクマを見逃してる時点でよしも何もないか。
とりあえず深さ四メートルの穴に飛び込むわけにはいかないので、インベントリから土をだばだばと流し入れ、スロープを作る。
穴の中へ降りていき、クマが急に動き出したりしないか警戒しつつ近づいていく。
死んだふりとかされていたら、一転大ピンチに陥りかねないので、石を投げ当てて反応を見る。
うん。大丈夫。
あとはインベントリにあのクマを収納できればオーケーだ。
インベントリに基本的に生物は収納できない。
インベントリは生死判定にも利用できるということだ。
とはいえ、土の中の微生物や菌類、植物などは普通に収納できている。
ざっと、目に見えない生物や植物、菌類は収納可能という感じか。
動くなよと願いながらクマに近付き、タッチしてインベントリに収納――できた。
よし!
これで一息つける――けれどつかない。
おそらくアドレナリンがドバドバ出ているであろうこの状態で、後処理を終わらせることにする。
まずこの穴を埋めて固める。
次に目印を頼りに来た道を戻り、トンネルに入って出入り口を塞ぐ。
そして家まで走って帰る。
落ち着いて冷静になったらあまり良くなさそうな気がしたので、ひたすら走った。
楽に移動するための乗り物を試作していて、実用試験をしようと思っていたが、それすら忘れて走った。
息を切らしながら床下から自室に帰り、床、ベッドを元通りに戻す。
着ているものの汚れをインベントリに収納して落としつつ、濡らしたタオルを取り出して全身の汗を拭き取る。
服を着直してベッドに飛び込んだ。
「ふうぅぅぅ」
落ち着いたところで反省モードオン。
トンネルが繋がって舞い上がり過ぎたかー。
警戒はしているつもりだったが、全然甘かった。
今回は森の中だったが、森に限らず視界が悪い時はもっともっと警戒を強めなければならないのだろう。
それにしてもあのクマ冬眠明けだったのだろうか? 魔物が冬眠するかはわからないが。
元の世界でクマに遭遇したことなどないが、映像などで見たクマより一回り――いや二回りは大きいんじゃないだろうか。
まともに戦おうとすれば、やられていたのは俺の方だろう。
そんなクマを仕留めたわけだ。
遠距離攻撃だった上に夢我夢中だったので、手に直接感触が残っているというわけではない。
それでも、生物の命を奪ったという感覚はある。
時間が経って気持ちが落ち着いていくにつれ、その感覚が強くなっていく。
魔物がうろつく場所を探索する以上、こういう戦闘は避けられないものなのだろうが、初の獣タイプの魔物討伐は、精神的にはクるものがある。
繰り返していくうちに慣れていくのだろうか。
自分の身を守るという観点からは慣れていくべきだろうし、命を奪うという観点からは慣れてはいけない部分もあるのだろう。
とにもかくにもさっさと家に帰ってきたのは正解だった。
あの場で落ち着こうものなら、精神的なダメージで動けなくなっていたかもしれない。
現にこうしている今は、体が重く感じてしまって動きたくない状態になっているくらいだ。
今日はもうずっとこうして横になっているだけかな。
寝て起きれば気分もリセットされるだろうし、色々確認したいこともあるがそれは明日の俺に任せることにしよう。




