決着
振り上げた棍棒をスライムに叩きつける。
手応えは――よくわからん!
なので何度も叩く。
ぜーーー。はーーー。ふーーー。ふーーー。
スライム――というよりは地面を、十回程叩き付けたところで、その場から一歩下がり状況を確認する。
スライムを小さくすることで、確実に核を叩けたとは思うが、あまりに実感が無い。
地面や周囲、手に持っている棍棒をまじまじと見てみるが、スライムの核の形跡は見当たらない。
普通に見えないのならばと、じっくりと魔力を探ってみるが、それも視えない。
となると、スライム討伐に成功したということでいいと思うが……。
一応、スライムがいた周辺の地面を浚ってインベントリへと収納する。
そしてもう一度魔力確認。
とくになし。よしっ!
勝った――でいいはずだ。
気合を入れて臨んだわりに、あまりに手応えのない勝利ではあるが。
現実というのは、得てしてこんな風にあっさりとしたものなのかもしれない。
「ふう」
あっさりとしたものではあっても、精神的負荷はかなりかかっていたのだろう。どっと疲れが押し寄せて来る感覚に襲われた。
いったん地べたに座り込むかと気を抜きかけたところで、冷静になった俺の脳――つまりはビビりなチキン魂――が起動した。
落ち着いて油断した瞬間が一番危険かもしれない。
いったん休もうという身体中からの訴えに後ろ髪引かれつつ、まずは周囲を見回す。
ついでに上も。
魔力反応無し。
安全確認よしっ!
たぶんガバガバ判定な気もしないでもないが、これ以上の確認方法も無いので、これでよしとして座り込む。
「なんかめっちゃつかれたー」
戦闘自体は俺の想定通りに進み、ダメージを受けることもなかったし、疲れる要素はそんなに無かったはずなんだが。
おそらく、戦闘という行為が疲労感を齎したのだろう。
前の世界で、戦闘や喧嘩などをした記憶などないし、何かを殺すというのも、蚊やGくらいのものだった。
スライムという、あのサイズの生物を殺そうとしたことも無ければ、場合によってはこちらが殺されるかもしれないというストレスなど、体感したこと無かった。
思わず寝転がりたくなるが、さすがに服が土汚れにまみれそうだしやめておこう。
十分ほど休憩して、再び周囲の魔力チェック。
やはり特に異常を感知しなかったし、これ以上のイベント事は発生しないでくれと祈りつつ、今日のところは後片付けをして帰ろう。
まずは、スライムがいた周辺の地面を埋め戻す。
次に、フィールドを区切るように張った紐を掴み、インベントリの中へと収納。
長く一本の紐として【クラフト】したものなので、一発――それを上下に二本張ったので、正確には二発――で回収することができる。
そして、掘った壕も埋めておく。
誰かが通って、落ちてケガしたなんて事態は避けるべきだしね。
一通り後片付けを済ませて、家に帰る。
一応、今でも目印を確認してはいるが、さすがにこの辺の景色は覚えているので、さくさくと歩く。
とはいえ、身体は重く感じる。
やはり初戦闘というのは、なかなかにクるものがあったのだろう。
命を失うかもしれないというストレスと、命を奪うというストレス。
殺されたくなんて無いが、殺すという行為も、簡単には飲み込めないものだろう。
今回はスライムだったが、いつかは狼や猪のような「動物」感の強い魔物と、その先はゴブリンのような「人型」の魔物と、果ては「人間」そのものと命のやりとりをすることになるかもしれない。
俺の精神がどこまで耐えれるかわからないが、いつかは人と殺し合いをする覚悟が必要になるかもしれない。
正直、現時点では全く持てない覚悟ではあるが、不意に襲われて、そのまま死ぬというのは受け入れられないと思っている以上、相手の命を奪う覚悟は持っておくべきなんだろう。
当然、そういう事態にならないに越したことはないんだが。
家で一生引きこもっているのであれば、これ以上戦うこともないかもしれないが、そうはならないだろう。
転生時に頼まれた、四大精霊の祭壇うんぬんもあるし、何より俺自身がこの世界を堪能したいと思ってしまっている。
そんな事を考えながら歩き、家に帰ってきた。
一目散にベッドに飛び込みたくなる気分を抑え、汚れを落とす為に着ているものをインベントリに入れる。
いつの間にかインベントリの中で、ホコリや泥汚れを取り除けるようになっていた。
【クラフト】便利過ぎる。
ついでに、インベントリから濡らしたタオルを取り出し体を拭く。
そして、インベントリから服を取り出して――
「ん???」
作者からのお願い。
これを読んで面白いと思ってくださった、天候や気温を操れる能力者さん。最高気温を25度程度に下げていただけるとありがたいです!
この投稿時期が9月だというのに、残暑厳しすぎです。
気温が下がることで、気力や体力も維持できて、作者のやる気、モチベーションに繋がります。
ぜひともよろしくお願いします!
という下らない冗談まで読んでくださって、本当にありがとうございます。
残暑厳しき折、皆様どうぞご自愛くださいませ。




