表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/33

大まかな方針

 いやはや、衝撃的な話を聞いてしまった。


 使用人二人の世間話か、愚痴程度の話だろうと思っていたのに。

 

 オウギ君が離れに押し込まれ、寂しく生活させられていたのがまさかそんな理由だったとは。


 オウギ君からすれば、勝手に産んでおきながら、理不尽な怒りを静めるために育児放棄。


 逆怨みもいいところである。


 現オウギ君である俺にとっては、許してはならない事態であろう。


 しかし――だがしかしだ。

 

 四十年近く生きたおっさんともなると、愛する人間をこの世から喪わせたと、オウギ君に怒りや恨みや整理できない感情の全てを押し付けてしまうことを、理解も同情もできないが、理不尽でもそうしてしまう人間もいるだろうなと、受け入れてしまえないこともないのだ。


 もちろん、それでオウギ君に当たるのは絶対に違うし、間違っていると思うが、人間ってそうしてしまうくらいには弱いものだよなとも思ってしまう。 


 とはいえ、オウギ君の身体を頂戴した以上、同情できるからといって、全てを受け入れて許すのも違う気がする。


 けれど、衣食住の全てを委ねている現状で、反抗して自ら生きにくくするのももったいないし。


 得られる利益は最大限受け取りつつ、オウギ君に寂しい思いをさせた報いを、どうにかして受けてもらおう。


 オウギ君がそれを望んでいるかはわからないが、育児放棄の親が何もお咎めなしというのもどうかと思うしね。


 そもそもオウギ君は、両親に対して何もできない自分自身を嘆き、何かしらの役に立ちたかった、という風に思っていたようだ。


 だが、この仕打ちを知ってもその感情が変わらないかはわからない。

 

 今すぐ何かできるわけではないが、将来的には、オウギ君の有能さを認めさせつつ、それなりに役に立ってみせた上で、見捨てられたことを盾に、両親の思惑から外れたところでのびのびと行動させてもらうのがベストだろうか。


 息子がもたらす多くの利益を、自らの行いのせいで簡単には享受できない状態を作り上げようということだ。

 

 俺自身が頑張る必要がある上に、有用さをアピールしながらも、思い通りにさせないという立ち回りが必要になるので、一筋縄ではいかなさそうだが、それくらいの方がやりがいがある――と、思っておくことにしよう。


 領主であり貴族である立場から、無理矢理にでも搾取しようとしてきたら、ささっと離れないといけなくなるかもなあ。


 いずれにせよ、現時点で具体的なアイデアがあるわけではないし、簡単にやれることなんて何一つ無い。


 まずは自分のやれることを把握し、やれることを増やし、やれることの練度、精度を上げていく。


 一つ一つ積み重ねていくのみだ。


 元の世界ではそうやって働いてきた。


 一つの物件を施工するという建築工事全体で見ても、自分の担当作業で見ても、一つ一つの作業を完了させ、次の工程へと進んでいく。


 そうやって成り立っていた。


 この世界で生きていくということに、そのまま当てはめることはできなくても、考え方ややり方を参考にしたり、応用することは可能なはずだ。


 転生者としてのあり方でいえば、むしろ知識や経験を活かすことこそが重要で、この世界を優位に生きていくための武器となるものだろう。


 意外な真実――と思われる話――を知ってしまったことで、大まかな今後の方針を立てるに至ったわけだが、あくまで()()()()()()でしかない。


 これに縛られるつもりは毛頭ないのだ。


 今後、両親とのやり取りをしていく中で、それによって自分の利益が大きいと判断したら、オウギ君には悪いが、育児放棄されてたことなど水に流し、緊密で親密な関係を築くことも無くはない。


 とにもかくにも、現状はまだまだ自己強化――いわゆるファーム――のターンだろう。


 となるとやることは結局変わらない。


 素材を集め、【クラフト】し、特性を扱い、魔力を使う。


 ひたすらにその繰り返しである。




 そんな日々を送っていたある日、俺の目が魔力の塊を感知した――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ