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特性

 草を刈り取り、切り、叩くという作業を積み重ねた結果、「切断」「殴打」の『特性』が使えるようになったのだ。


 とはいえ、『特性』についての説明などは何もない。


 手探りで理解していくより無さそうなので、色々試してみた。


 その結果、まずわかったのが、【クラフト】で素材を加工する時の効率が上がるということ。


 「切断」であれば切る、「殴打」であれば叩く、それぞれの作業効率がアップしたのだ。


 例えば、工具無しで木を切断加工するのであれば、今までに比べて魔力の消費が格段に抑えられた上に、スパっと切断面も美しく仕上がる。


 更には複雑な加工まで簡単にできてしまった。


 工具を使っての【クラフト】によって、作業効率は上がっていたが、『特性』が使える作業はさらに効率が上昇したというわけだ。


 そして『特性』についてわかったことがもう一つ。


 むしろこっちこそが真髄といってもいいだろう。


 効率アップはあくまで効率が良くなったというだけで、今まででもできていたことなのだ。


 それに引き換え、こちらは新機能。


 それが――『特性付与』だ。


 【クラフト】で製作した物に『特性』を付与する。


 文字通りの効果だが、その効果がハンパないのだ。


 今まで、「切る」作業に使っていたナイフ代わりの工具は、石を加工して刃としての役割を持たせていたのだが、これに「切断」の『特性』を付与すると、元の世界で使っていた刃物を超える切れ味となる。


 そしてこの『特性付与』は、形状は選ぶが、素材は選ばない。


 つまり、「切断」の『特性』を付与したいのであれば、断面で見れば鋭く尖った、「包丁」や「ナイフ」や「剣」のような「刃物」状でなければならないようだが、素材は「木」でもなんでも構わないのだ。


 加工しやすい「木」でナイフを作り、「切断」の『特性付与』をする。


 これで、単なる石で作ったナイフとは比べ物にならない切れ味を発揮する。


 おそらく、元の性能が高い方が、『特性付与』した後の効果も高くなると思われるが、現状使える素材が、「土」か「木」か「石」くらいしかない。


 「木」と「石」では「石」の方が強そうだが、「鉄」や「鋼」、こっちの世界に存在するであろう、各種異世界の「金属」なんてものに比べれば、「木」も「石」も大差ないはずだ。


 『特性付与』の有無の方が重要であるならば、むしろ加工しやすい「木」にアドバンテージがあると言っていいだろう。


 そんな『特性付与』だが、デメリットがあるとすれば、その魔力消費量の多さだろう。


 一回の『特性付与』でガッツリと魔力を持っていかれる。


 こつこつと魔力を消費したり、身体強化の魔術によってかなり増えた魔力の、半分以上を持っていかれるのだ。 


 現状では一日に一品が『特性付与』の限界だが、俺の魔力量自体はまだまだ成長中なので、そのうち二品、三品と作れるようになる――はずだ。


 ここのところは魔力を使い切るのも大変だったので、魔力を消費して総量を増やすという意味では、効率の良い魔力消費手段ができて良かったのかもしれない。




 ――木で【クラフト】し、『特性付与』を施したナイフや斧などを携え、今日もこっそりと外の探検に出る。


 あ、もちろんちゃんと日課となっている、ラジオ体操はばっちりこなした。


 家から外には当然窓から出るが、さすがにいつまでも椅子をインベントリに出し入れして外出していたわけではない。


 窓からの外出専用足場――というかほぼ脚立――を木で【クラフト】してあるのだ。


 これをインベントリから出して設置し、外に出たらインベントリに収納する。


 ちなみにこれに上る時は当然だが、降りる時も、この足場というか脚立というか梯子というかを正面に見る体勢で使う。


 立馬(たちうま)伸び馬(のびうま)と呼ばれる可搬式作業台を使う時に、背を向けて降りるなというのは、現場監督であれば口が酸っぱくなるほど言うセリフだろうし、朝礼時に散々繰り返し言われたもので、これはもう元の世界での作業時におけるクセで、これを使う時にも同じように行動してしまう。


 閑話休題。


 家の北側に広がる山の中を慎重に進む。


 目印を確認しつつ、目印のないところには新たに作る。


 そんなふうに未知のエリアを探索していると、違和感のある景色に出くわした。

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