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属性

 インベントリの中で新たに発見したのは、『属性』という文字だった。


 この『属性』に分類されているのは、今のところ薄い文字――おそらく習得中を表している――で表示されている『水』のみ。


 幸運にも、湧き出ている水を発見し、扱える状況になり、【クラフト】でジュースを作ったり、手持ちの素材と混ぜ合わせてみたりしていただけではなく、手や顔を洗ったり、のどの渇きを癒したりしているうちに発現したと思われる。 


 『水』なるものがあるということは、『火』や『土』、『風』なんかも、上手くいけば習得できるのかもしれない。


 そもそも、『属性』がどんなふうに【クラフト】で使えるのかはわからないが、習得して損はないだろう。


 ということで、水の他に現状扱えて、『属性』の欄に収まりそうなものである、土に触れる時間を増やしてみた。


 『土属性』というのが、単に土いじりで得られるようなものかはわからないが、得られなかったとしても、試してみなければ「得られない」ということもわからないのだ。


 土を様々な形にこねてみたり、固めてみたり、水と練り合わせてみたりして過ごしていると、『属性』の欄に『土』の表示が出てきた。


 どう利用できるか定かではないが、水と土、この二つの属性を扱える可能性が出てきた。しかし、一番欲しいのは「火」だろう。


 実は今までも、「火」をなんとかしたいと思ってはいたのだが、いかんせん火をおこす方法も、安全に扱う方法も、いずれも難しそうだと諦めていたのだ。


 だが、よくよく考えてみると、火おこしなんてしたことはないが、【クラフト】で木同士を思い切り擦り合わせれば、火も生み出せるかもしれない。


 「火」そのものをインベントリに保管できるかはわからないが、燃えている棒――松明のような形ならいける気がする。


 とはいえ、外での火の扱いはちょっと怖いので、慎重にならざるを得ない。


 元の世界での仕事の際も、火の扱いには気を払っていたし。


 万が一家の近くで火事なんて起こしたら大問題になるし、何かを燃やしている煙で俺がこそこそ行動していることが、誰かに見つかってしまうかもしれない。


 わからないように密閉空間で火を扱って、一酸化炭素中毒にでもなったら目も当てられない。


 単純な話、火にビビっていたのだ。


 臆病過ぎて、火は危険で思考が止まっていた。


 もしかするとインベントリ内の【クラフト】で火をおこして、その火を用いてさらに【クラフト】する、なんて可能性に、ここまで思い至りもしていなかった。


 それができるのであれば、安全に火を扱えるかもしれない。


 そもそも、これまで【クラフト】は、あくまでインベントリ内の素材を加工するか、組み合わせるかしかしていなかった。


 新たな機能、『属性』をなんとかしようと考えたことで、【クラフト】の新たな使い方に至ったかもしれない。


 一旦『属性』は置いておいて、【クラフト】を試してみる。


 やることは、棒と石を植物の蔓で作った、ハンマーとして使っている工具で、植物をひたすら叩くというものだ。


 万が一、魔力を大量に消費することがあったらマズいので、夜にベッドで横になって試す。


 やってみると、あっさりと成功した。


 しかも、工具を使わないで行う【クラフト】よりも、圧倒的に魔力の消費が抑えることができたのだ。


 となると今後は、植物から繊維を取り出したり、取り出した繊維から糸を紡いだり、ひたすら叩いた後に水に溶かして紙を作ったりと、様々な使い方ができそうだ。


 木の加工や石の加工にも工具を使えるだろうし、やれる事の幅や量が増える。


 これで火まで使えるようになれば、食材を焼いて調理したり、いつかは鉄などの金属も扱えるようになるかもしれない。


 改めて【クラフト】の便利さを知り、やる気も増す。


 【クラフト】の新たな使い方を知り、魔力の量も増え、外での行動範囲も広がり、【クラフト】をこなしていったことで、待望の変化が訪れた――

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