目を開くとそこは
一話分書くのに一週間以上かかることもあるくらい筆が遅いので、ある程度書き溜め分を吐き出した後は、一週間に一話書き上げるを目標にやっていく予定です。
目を開くとそこは、真っ白な空間だった。
「鹿仏宣守だよね?」
そう俺の名前を呼んだのは、いつの間にか目の前に立っていた二十代くらいに見える若い男。
「えっと。ええ?」
ここはどこで、なんでこんなところにいるのか。
俺自身に起きていることにも関わらず、俺には全く状況が掴めず、思考停止というような状態に陥っていた。
「君は残念ながら死んでしまいました。ご愁傷さまです」
「はあ……?」
見知らぬ人物からのあっさりとした死亡宣告。
「俺が……死んだ?」
じゃあここにいる俺はなんなんだ? 幽霊ってことか?
「あれ? 覚えてません? 仕事中に死んだんですけど」
「仕事中に……」
たしかに俺は、鉄骨造の建設現場で、足場の上で作業していた記憶がある。
しっかりと安全帯――墜落制止用器具だかなんだかに、名称変更されたらしいが、未だに安全帯と呼ばれ続けている、いわゆる命綱――を使用し、落下対策はしていたはずだ。
「あの状況で死ぬことがあるのか? って顔ですね。
君は危険な行動も間違った行動もしていなかった。ただ、君には運が無かった。
不運と不幸が重なって、巻き込まれる形で死んでしまいました」
自分自身に起きたという出来事に、全く記憶も実感もない。
ふと自分の身体を見る。
もうすぐ不惑を迎えようというこの身体。
仕事上、筋肉はついているが、年相応のぜい肉が否応なく付きまとう。
ということが見てわかる状態――全裸で俺はこの謎の空間にいた。
感覚的に身体に痛みや違和感はなく、見た目にも傷などはない。
とはいえ、実感はないが、こんな不思議な状況にあれば、ここが死後の世界と言われたら受け入れるしかなさそうではあった。
「苦しむことも、苦しみを引きずることもなく死ねたのは、不幸中の幸いってやつかもしれないですね」
「俺が死んでいるとして、あなたはどちら様ですか?」
「君が死んでるってことなら、ボクが誰だかちょっと考えればわかるんじゃないです?」
「神……さま?」
「そう! ボクが神です」
神――というには若すぎるように見えるが、神であるならば、俺の理解を超えた存在であり、見た目の若さに捉われてはいけないということだろう。
「天国か地獄か、ここで決められる――と?」
「いやいやそうじゃない」
「ならなんで俺はここにいるんですか?」
「あまりにも不運な死に様だったので、救済しなきゃなあ――と」
「生き返してくれるんですか?」
「それは無理!」
即座にそんな強く否定しなくてもいいと思う。
「では救済とは?」
「君もオタクの端くれなら、こういう時に神さまが何をしてくれるかわかるんじゃない?」
建設業は、陽キャ、ヤンキー、パリピが跋扈する業界であるが、俺はれっきとした陰キャ、オタク属性の人間である。
ひきこもり同然の生活をしていたところを、父親に引っ張り出され、この仕事をすることになった。
朱に交われば赤くなるという言葉の通り、陽キャだらけの中で働いているうちに、そちら側にガワは染まっていったものの、本質――芯の部分は変わらなかった。
そして、こういう状況の定番として思い当たる展開が当然のようにあった。
「転生……とか?」
「そう!
それも、魔法や魔獣が存在するファンタジー世界への、異世界転生ってやつだね」
マジかよ異世界転生!!?
――と、もっと若ければはしゃいでいたのかもしれない。
歳を重ねたせいか、実感がさっぱりわかないせいか、いまいちどう反応していいのかわからなかった。
「あれ? なんかリアクションが芳しくないね?」
「いや、まあ。うーん……」
「ま、この世界でのことは残念だったと諦めて、異世界を堪能してほしいところだね」
「そう簡単に切り替えられないというか、そもそも納得できてないというか……」
「君の気持ちはどうあれ、受け入れてもらうしかないんだけどね」
「はあ……」
「それで、職人だった君に頼みがあってね。
その世界には四大精霊を祀っている祭壇があって、魔王の封印に重要な役割を果たしてるんだけど、かなりボロボロでね。
修復――いや、いっそ絢爛豪華に造り直しでもいいから、なんとかしてもらいたいんだよね」
どうやら俺が転生する世界には、魔王が封印されているらしい。
「そしてそのために相応しいスキル、【クラフト】を君に授けよう」
スキルもくれるらしい。
「後はある程度自由に生きていける環境だよね。転生して即死ぬとかやってられないしね」
転生したら魔獣の群れの中、というような状況は回避されるらしい。
「あと転生者特典もつけようかな」
なにかしらの特典もあるらしい。
「じゃあまあそういうことで。頑張ってねー」
――目を開くとそこは、真っ暗な部屋の中だった。
――未来予告
――リアサの顔が離れる。
――「ん。これで良し」
――リアサが満足気に頷く。
――「リアサが良くても、エルは良くないだろ」
――視線がエルルネに向く。
――「はあ……。イヤ――じゃない」
こちらは、まだ書いていないが、脳内にあるシーンの一部を書いておこうという試みです。
まだ書いていないシーンなので、細かいニュアンスや表現、人物名、設定その他諸々、変更される可能性があります。
さらには、シーンそのものが無くことも、そのシーンまでたどり着くことなく筆を放り投げる可能性すらもあるくらいですが、そのまま使えるように書き続けていきたい所存です。