世間知らずの白髪の少女と古代魔法都市(花嫁編)「最強王女は九尾の狐のお嫁さんになります!」
これは、短編小説:世間知らずの白髪の少女と古代魔法都市(絶望と再生の物語)「あなたが見ている世界。それは、本当に本当の世界ですか?」の女主人公”あやの”の姉”ユイ”のお話です。
深い緑に覆われた森の奥深く、ひっそりと佇む古木の洞で、九尾の狐、アヤメは穏やかな日々を送っていた。陽光は木漏れ日となって柔らかな光の粒を落とし、鳥のさえずりや風の囁きが、静寂を優しく彩る。アヤメは、この森の動物たち、草木の一本一本を慈しみ、共に生きてきた。九つの尾は、豊かな自然のエネルギーを吸い上げ、彼の強大な力の源となっていた。
しかし、そんな平和な日々は、突如として終わりを告げる。人間の王国が、アヤメの持つ強大な力を聞きつけ、それを手に入れようと動き出したのだ。王国の兵士たちは、森の静寂を切り裂くように侵入し、何の罪もない動物たちを次々と虐殺していった。小さなウサギ、賢いリス、歌う鳥たち……彼らの悲鳴が、アヤメの敏感な耳に突き刺さる。
怒りに震えたアヤメは、その紅い瞳を残酷な赤色に染め上げた。彼にとって、森の動物たちもまた、家族同然だったのだ。抑えきれない怒りは、強大な妖力となって爆発する。九つの尾が天を焦がす炎のように赤く燃え上がり、アヤメは動物たちを虐殺した兵士たちのキャンプへと急いで駆け下りた。
阿鼻叫喚の中、アヤメは容赦なく牙をむき出し、 動物たちの命を奪った兵士たちを噛み砕いた。彼の怒りは、 キャンプの兵士たちを血の色に染め上げた。
それを理由に、 王国はさらに激しいいかりを燃え上がらせた 。アヤメが守ってきた 神聖な森に、復讐の炎を放ったのだ。燃え盛る炎は、 古代の木々を灼熱にして 、無数の動物たちを焼き殺し、アヤメの心に深い傷跡を残した。緑豊かな森は、黒煙と真っ赤な炎に包まれ、 動物たちの最後の悲鳴が風に乗ってアヤメの耳に届く。
もはや、穏やかな心は残酷な復讐心に塗り替えられていた。アヤメは、王国への深い憎しみを胸に、 9本の尾を高らかに掲げ、 真っ赤な炎を纏いながら 王城へと孤独な歩みを始めた。彼の目的はただ一つ、この残酷な王国に破壊をもたらすこと。
王国の兵士たちは、赤い瞳を燃やす巨大な九尾の狐の出現に恐怖を感じ、 あらゆる手段で彼 を止めようとした。無数の矢が放たれ、 魔法の攻撃が繰り出される。しかし、アヤメの前では、それらは何の意味もない抵抗にしかならなかった。彼の9本の尾は痛々しいほどに 暴れまわり、彼の周りに強烈な風の壁を作り出し、あらゆる攻撃を軽々と弾き返す。 真っ赤な炎は街を焼き払い、 彼が通った跡には、破壊のみが残った。
しかし、 長い戦いは、アヤメの強大な妖力をも徐々に奪っていった。 多数の傷を負い、彼の赤い瞳の輝きも徐々に薄れていく。ついに、アヤメは力尽き、地面に倒れてしまった。
その時、 偶然にも、彼の目の前に人影が現れた。一人は、 長い髪の銀髪に赤い瞳を持つ、凛とした佇まいの若い女性。彼女こそ、主人公のユイだった。そして、 彼女の近くには、 4人の仲間たちの姿もあった。
ユイは、 強大な力を持っていた。空間を自在に操る能力、空間操作能力。彼女は、倒れているアヤメを見ると、躊躇うことなく 彼に近づき、 空間操作能力を使って、傷口に薬を塗ったり、丁寧に包帯を巻いたりし始めた。 彼女の手は優しく、その赤い瞳には、敵意のようなものは微塵も感じられなかった。仲間たちも、ユイの行動を静かに見守っている。
10日後、アヤメは重い、まぶたをゆっくりと開けた。ぼやける視界の中に映ったのは、 見たことがある生き物の姿だった。
「人……!」
その姿が目に映った瞬間、アヤメの脳裏に憎しみが真っ赤な炎のように燃え上がった。森を焼き、 動物たちを殺した憎き敵。理性など吹き飛んでいた。本能のままに、アヤメは目の前の人影に向かって牙をむき出し、短い唸り声を上げた。
「ユイ!」
仲間の声が、 ユイの耳に届いた。
「手を出すな!」ユイは、とっさに仲間たちに叫ぶ。
ユイは、空間操作能力の力の片鱗である空間認識能力で、事のすべてを知っていた。森で起こった悲惨な出来事、アヤメの悲しみと怒り、そして、彼があの王国を襲った理由。これは、 偶然な出会いではなかった。
アヤメとユイの戦いは、それから10日にも及んだ。アヤメは、残された力を振り絞り、鋭い爪と牙でユイを襲い続けた。真っ赤な炎を纏った9本の尾は天を舞い、大地を 打ち砕く 。しかし、ユイは軽快な身のこなしで、アヤメの攻撃を軽々とかわしていく。彼女は、 空間操作能力を自分の体に使い、まるで風のようにヒラリヒラリとアヤメの攻撃をいなすだけだった。一度も、アヤメに攻撃を加えることはなかった。
激しい戦いの末、ついにアヤメは体力を使い果たし、また地面に倒れてしまった。 彼の赤い瞳からは光が消え、 9本の尾も力なく地面に横になる 。
どれくらいの時間が経ったのだろうか。アヤメがゆっくり目を開けると、 目の前に信じられない光景が広がっていた。銀色の髪が陽光を受けてキラキラと輝き、 深い赤い瞳が、 くったくな笑顔を浮かべて彼を見つめていた。それは、 以前戦った人の少女、ユイだった。
警戒しながらも、アヤメは沈黙を守った。ユイは、そんなアヤメの様子を気にすることもなく、優しく語り始めた。森の動物たちのこと、王国の崩壊 、そして、彼女がアヤメに出会うまでの経緯を。 彼女の声は温かく、アヤメの凍り付いた心をゆっくりと溶かしていくようだった。
二人は、たくさん様々なことを話し合った。言葉を交わすうちに、アヤメの心にあった 人への深い憎しみは、 ゆっくりと薄れていった。ユイの純粋な心と、動物たちへの深い愛情に触れるうちに、アヤメは彼女に 特別な感情を抱き始めていた。それは、いままで知らなかった、温かく、優しい感情だった。
そして、ある日、ユイはアヤメに言った。「私と一緒に、私の住む王国へ来ませんか?」
アヤメは、少しためらった後、静かに頷いた。かつては憎むべき敵だった人の少女の隣で、今まで感じたことのない安心感 を覚えていた。
二人は、ユイの住む王国へと戻った。 王国の人々は、予想外のアヤメの登場に恐怖を感じたが、ユイの強い説得により、 彼を受け入れることになった。
時は流れ、アヤメとユイの間には、硬い魂の絆が育っていた。種族の違い、 以前の敵対関係、 どんな壁も乗り越え、二人の心はしっかりと結びついていた。
アヤメの顔は穏やかになり、体の大きさは自由に調整できる。
そして、 すぐ、二人の間には、二つの小さな命が宿った。金色の髪と 紫の瞳を持つ長女のましろ。 金色の髪と緑の瞳を持つ侍女のさなえ。。一人は母親であるユイの優しさを、もう一人はアヤメの神秘的な美しさを継承していた。
最強の王女と、 9本の尾を持つ九尾の狐。二人の特別な 家族の団らんの場 は、 愛と幸せに満ち溢れていた。かつて、 憎しみに満ちていたアヤメの心は、 今 、 温かい愛情と、小さな娘たちの無邪気な笑顔によって、 いつも温められていた。森の動物たちの魂も、きっと天国から、幸せそうな二人を見守っているだろう。
ユイ:「まだやるかい、坊や?」
九尾の狐:「坊やだと!?俺を何才だと思っているんだ!?小娘!?」
ユイ:「そんなの関係ないよ(笑)年上だからって、私より偉いとは限らないでしょ?私は、王族だし、それに、人の社会じゃね。」
九尾の狐:「・・・。」
九尾の狐:「なぜ、俺を助けた?」
ユイ:「惚れたから。」
九尾の狐:「ハッ!?」
ユイ:「オマエ、かっこいい。」
ユイ:「私をあなたの妻にしてください。」
九尾の狐:「俺とお前みたいな小娘が釣り合うわけないだろ!?」
九尾の狐:「それに俺の何を知ってる?」
ユイ:「普段からあなたのことは、感知してたの。私の空間操作能力の空間認識能力でね♪」
九尾の狐:「王族って言ったな?お前も俺の力を利用しようという気か?」
ユイ:「アナタみたいな弱っちい子いらないよ。私が住むアストレア王国じゃ、私と妹の”あやの”は、限りなく世界最強だからね♪アナタよりも。」
九尾の狐:「あぁ・・・。あいつか。俺たちを人形にした。」
九尾の狐:「あの娘の境遇は、俺も知っている。そうか・・・、お前はあいつの姉か。」
ユイ:「そういうこと。」
九尾の狐:「ぐはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ~!!!」
九尾の狐:「いいだろう!お前を俺の妻にしてやる。」
ユイ;「ありがとうございます。えっと、ところでお名前は何とおっしゃいましたっけ?」
九尾の狐:「俺の名は、アヤメ。」
ユイ:「私は、ユイ。」
アヤメ:「よろしくな、ユイ。我妻よ。」
ユイ:「はい。こちらこそ、よろしくお願いいたします。アヤメ様。」
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。
それでは、良い一日をお過ごしください。
親愛なる貴方様へ。
希望の王より。