表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/9

第七話:マンネリ

家が崩れた後、フィルは瓦礫の山の上に立っていた。


「やはり、生き残れたか」


ビチビチと筋肉を直し、瓦礫から飛び降りる。

周りを見渡すと、まだ薄く白い煙が立ち上っていた。

その煙の中を抜け、森をしばらく走った。


肩で息をしながら、見上げたのは、教会であった。

慎重な足取りで中に入り、中を捜索した。


室内に人影を目撃し、走る。肩を掴んで思い切り引く。しかし、それは探し者とは違っていた。


「え、だれ?」


彼女は恐怖に顔を歪めると、叫びながらこちらに手を向けた


”イディティウム・デ・テカト”


瞬間、彼女の手から光が拡散した。光に目が眩む。次に目の前を見たときにはもう誰もいなかった。


「しくった!」


フィルは必死にあたりを探したが、なにもなかった。


「チッチッチッ、カスがぁ!」


近くの壁を蹴る。木製の壁は大破するかに思われたが、ガラスが割れるような音とともに、空間が現れた。


「なんだ、これは?」


フィルはそこに吸い込まれるように入っていった。

そこは赤に紫が溶けたような色をした不気味な空間だった。

奥に進んでいくと


”立ち去れ”

”呪ってやる”


と頭に響いてきた。しかし、フィルは微塵も気にせず、先に進むと、突如、


”ババババババババ”


と音が響く。フィルの頬から汗が落ちる、ダラダラと何滴も。


”熱い”


まるで炎に包まれたかのような熱さは加速していき、身体から煙が昇った


”汗が蒸発している”


”バババババッ”


瞬間、フィルは右へ回避行動を取った。それは地面に突き刺さった。

風圧で、フィルは飛ばされる。

20秒ほど経っただろうか?やっと風が収まり、フィルはゆっくりと目を開けた。


そこには赤い刀身を持ち、ガードに紅玉がはめ込まれた大剣があった。


”なんか、見たことあるような...”


まぁ、いっかとフィルはその剣のグリップを握った。


瞬間、大量の情報が頭に流れた。


「ふーん、そういうふうに使うのね」


フィルは剣を正眼に構えた。

すると空間は崩れ去り、気づけば、先ほどの廊下に立っていた。


足元に違和感を感じる。


下を見ると、先ほど剣を構えるときに切っ先が通った部分に何よりも黒い漆黒の線がついていた。


ドタドタと何者かが走ってくる音が聞こえる。後ろに振り返ると、

そこには黒いローブを着た者が数人立っていた。


「なんのようだ?」

「司牧、あの男...」


取り巻きの内の一人が司牧に話しかける。


「フィル、あなた...!」

「ん?」


フィルは首をかしげた。その後微笑を浮かべ、フィルは切っ先をその老婆に向けて言った。


「やっと、見つけた」


瞬間、動かした切っ先に沿って空間は切り裂かれていた。それに巻き込まれ、彼女らは両断されていた。


「さよなら、ハンナさん」


死体を見下ろしながらフィルはそう口にした。その顔は揺れていた。

剣をまじまじと見つめる。


「これが、ドゥオ・イナニス(レド)」



一方その頃ゼノンは持てる力を持って全力で逃げていた。


”なんで、なんでなんでなんでなんで”


昨夜のことを思い起こす。


部屋に入ってすぐの所にフィルが倒れており、目を上げると、ヘリナの首を締めた男の姿を望むことができた。


「ヘリナ!」


俺は首にかかった手に向かって高速移動した。


”よし、届く”


瞬間、男は首を離した。伸ばした手は、首と手の間の空間を触った。

体勢が崩れる。相手はそれに合わせるように、ヘリナを背中に乗せ、その体重でゼノンの背中をナイフで刺した。


”ドバン”


床にナイフが刺さる。骨を砕き、臓物を割り、身体を貫通して。


「グアフォ」


口から悲鳴と血を吐き出す。それを確認した男は立ち上がり、ヘリナの気絶を確認した。

言葉にできないほどの痛みがほとばしる中、ゼノンは手を伸ばし、魔術を念じた。


”ボカレ・ドゥオ・イナニス・カエロリム”


瞬間、ゼノンの手前の空間が歪み、その歪みが剣の形を形成する。

それを握ると、青い刀身のガードに蒼玉が埋め込まれた剣が現れた。


男はヘリナを背負って窓から逃げようとしていた。その方向に向かって剣を振る。

男は窓枠に足をかけた体勢のまま、ゼノンの方を振り向いた。


”やられた!”


と思ったときには遅い。ゼノンは男の頭部に向かって剣を振りかざしていた。

男は身体を反転させ、回避しようとするが、フードを切られ、顔が露出した。


「アポラ...」


そう呼ばれた男はライターを点火し、床に落とした。木製の家は容易く燃えた。男は近くに落ちたヘリナを持ち上げ、窓から出ていった。


「チッ」


ゼノンはフィルを持ち上げ、避難しようとするが、部屋からさえ出れなかった。

腹を抑え、最後の力を振り絞り、剣を四角形に動かした。すると、ゼノンはその部屋から消え、そのかわり、誰かもわからぬ男が現れた。


「へ?」


一文字発すると、男は業火に焚かれ、炭になった。


次に目を覚ますと、そこは森の中であった。


「やっと、一安心。とはいかねぇか」


ゼノンは地面に剣を突き刺し


”ディスティンクティオ・エスト・ドゥオ・イナニス・カエロリム”


と念じると、周りに紫に青が溶けたような空間が展開された。


”ベリッ”


何かが剥がれるような音がする。目を向けると、ゼノンの傷が空間に吸収されていた。

それどころか、地面の草花、空間内に侵入した動物まで、すべてがことごとくそれに吸収された。


「怪我も治ったし、これ以上はこの土地に迷惑かな」


そういって剣を引き抜き、歩き始めた。しかし、彼の身体は何度もふらつき、剣を杖にしてひたすら歩いた。


「やっぱ、減った分の体力は無理か...」


右に向かって倒れる。しかし、それは斜面であった。


「ファ?」


剣で勢いを殺そうとしたがそれも叶わず


「あばっあばばばばばば」


木があっても構わず直進、石があっても構わず直進、火があろうと構わず直進


「あっつ、なんで火ぃ焚かれてんの?あばっばばばばばば」


10分近く斜面を転がり、岩にぶつかって止まった


「フグッ」


ゼノンは白くなっていた


「ミ〜ン、ミンミン...」


数時間後、やっと色づいてきたゼノンは立ち上がった。


「どこ、ここ?」


しばらく歩き回り、通りに出ると、


「どこ、ここ?」


とまた繰り返した。

とりあえず、案内所でも探そうと歩き回る。

しかし、それらしい看板も見えていない。


「なんだぁ?」


上を向いて考えようとすると、街中の文字が目に入った。


「は?」


ゼノンは困惑と恐怖を隠しきれなかった。


「これって、魔語じゃねぇか...?」


魔語とは、魔王やその配下の魔物の利用する語である。


「魔物は全滅したんじゃねぇのか...?てか、なんでこんなに栄えてるんだ?」


無意識に身体はもと来た山道に向かっていた


”道理で建物がでかいわけだ、魔物の体は人間の体躯の3倍はあるらしいからな”


ふらつく足にムチを打ち、走った


”魔物に集団行動する習性はなかったはず、なのになぜ町を作っているんだ”


爪を噛む、ギリッと音をたてて割れる


”考えられない、考えたくもないが...”


時刻は昼前だが、彼の目の前は真っ黒であった


「新たな魔王が誕生した...?」


瞬間、ゼノンは強大な気配を察知して歩が止まる


「1581,5210624~106.322175,2471241067542(おや、人間、しかも魔剣持ち)」


そして、ゼノンは気付いた。必死で目の前が見えないのではなく、本当に()()()であったということに。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ