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親の再婚で妹になった学園のアイドルが、家ではとんでもない不良娘だった。  作者: 孤独な蛇


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27話 不和

「はぁー、暑い……暑すぎる」


 猛暑日。今日は最高気温37℃と天気予報で目にした。

 恐らく今が、その最高気温を記録している時間帯だろう。


「陽菜のやつ。こんな一番暑い時間にパシらせるなんて……人使いが荒い」


 陽菜に言われたジュースを購入した俺は炎天下の中マンションへ戻り、波留の部屋の前に辿り着いた時には再び汗が噴き出していた。


「お邪魔します」


 再び小声でそう呟いて玄関に入り、リビングに向かうと心地よい冷房の風が俺を出迎えてくれた。


「ただいま。陽菜、言ってたジュース買ってきたぞ…………陽菜?」


 陽菜は呆然と立ち尽くしていて、俺の言葉に反応しない。


「波留……?」


 波留は座ったまま俯いていて、上の空のように見えた。


「あ……お、おかえり、結斗君。暑かったでしょ?今、お茶入れるね」

「あ、うん。ありがとう」


 波留の様子も少しおかしいと思ったが気のせいだったのか?


「ん?どうした陽菜?」


 暗い表情をしている陽菜が俺の服の袖を掴んでくる。


「大丈夫か?……って、陽菜、泣いてるのか!?」


 彼女の顔を覗き込むと、少し唇を噛みしめて何かの感情を押し殺している表情が見えた。

 目からは涙が溢れだしている。


「陽菜、どうした?」

「べ、別に……なんでもねーよ」


 ポケットから、いつも大事にしているハンカチを取り出して涙を拭っている。

 状況がつかめない上に、空気が重い。


「結斗…………帰るぞ」

「え?何言ってるんだよ?まだ、ここに来て一時間も経ってないだろう?」

「な、なんだよ!そんなに波留と一緒にいたいのかよ!」

「いや、せっかく家に招いてもらってるのに……それに、今一番暑い時間帯なのに自転車を漕ぐ俺の身にもなってくれよ」


 さっきまであんなに楽しそうにしていたのに、一体どうなっているのか。

 俺たちのやり取りを見ている波留も、浮かない表情をしている。


「もういい!電車で一人で帰る!結斗は波留と勝手に楽しく過ごしてろよ!」

「ちょっと待てよ、陽菜!」


 自分の鞄を持って玄関へと速足で向かう陽菜を、俺は追いかける。

 波留も心配そうに俺の後をついてくる。


「陽菜、本当に帰るのか?」

「だから、そう言ってるだろうが!」


 相当機嫌が悪い。

 この状況の陽菜を俺を放っておけないと思った。


「ごめん、波留。俺も帰るな。せっかく家に呼んでくれたのに……」

「あ、うん。全然大丈夫だよ。また……来てね」


 陽菜は急いで靴を履いて、波留に一言もなく玄関を出ようする。


「ひ、陽菜!」


 波留の大きな声が外に向かって歩く陽菜の足を止めさせた。


「さっきは……ごめん」

「いいよ……別に。波留の言った通り、どう行動するかは当人の勝手……だから」

「陽菜!私……本気だから……これだけは、譲れない」

「はあ?……わかった。当たり前だけど、私も譲らない。絶対に!」


 陽菜は振り返り、一度波留の顔を見てから外へ出て行ってしまった。


「じゃあ、俺も行くな。今日はありがとう」

「待って」


 波留の自宅を後にしようとした俺だが、彼女に手を力強く握られて思わず足を止めた。


「は、波留?」


 彼女の手は酷く冷たかった。

 恐らく先ほど陽菜と何かで揉めていたことに相当緊張していたのだろう。


「どうした?」

「うん……なんでもない。また……学校で」


 そう言葉を口にした波留は、力なく笑った。


 ▽▼▽▼


「陽菜、本当に大丈夫か?波留と何があったんだ?」

「別に……何もないよ」


 炎天下の中、陽菜を後ろに乗せた自転車を走らせて帰路に就く。


「何もないってことはないだろう?波留も落ち込んでるように見えたし……」

「なんだよ……心配なのは、波留のことだけかよ」

「い、いや。勿論、陽菜のことも心配しているぞ。いつもは、あれだけ仲が良いのに……」

「友達やってると色々あるんだよ……色々……な」


 これ以上は何も話したがらないので、俺はこれ以上の言及をしなかった。


 自宅に帰ってからも大人しいもので、夕食の時も就寝前も俺に話しかけてくることはなかった。


「陽菜のやつ、どうしたんだ?いつもは騒がしく、必要以上に俺に絡んでくるのに……」


 ベッドに寝転んで天井を見つめ大きく息を吐いた。


「ん?俺……陽菜に構ってもらえなくて、寂しいと思ってるのか?」


 眠気がやってくるのを待ちながら、そんなことを考える。


「いやいや。穏やかに過ごせるほうが俺の性に合ってるよな」


 陽菜がいない俺の部屋は、とても静かで安眠しやすい環境のはずなのだが……。

 その日の夜は、なかなか寝付くことができなかった。


 ▼▽▼▽


「西条さん、夏休みって予定とかあるの?時間があれば皆で遊ばない?」

「ごめんなさい。母方の実家に赴く予定がありまして、ほとんどをそこで過ごすかもしれないんです」


 翌日の学校。クラスでは夏休みの予定について盛り上がっており、人気者の陽菜はクラスメイトから多くのお誘いを受けている。


「それじゃあ、夏休みは西条さんとは遊べないのか。残念」

「本当にごめんなさい。勉強にも勤しみたいと考えていますので」


 高校二年生の夏休みは、来年度の大学受験を意識して勉強に力を入れている生徒は少なくない。


(夕子さんの実家に行くのか。俺、何も聞いてないけど……)


「そういえば、南田さんは?いつも西条さんといるのに、今日はどこか行っちゃったね」

「波留さんは、学級委員の業務が忙しいのではないでしょうか」

「そっか。南田さんも誘いたかったのに。また後で声を掛けたらいいか」


 今日、波留は一度も陽菜の近くには来ていない。

 昨日、陽菜と何かの確執が生まれてしまったことが原因なのだろうか。


 休み時間になると陽菜の事を避けるように教室から出て行ってしまう波留のことが、俺は気になっていた。

 昼休みになり弁当を持って教室を後にする波留のことを、俺は追いかけることにした。


「笠井君。お弁当をお持ちになって、どちらに行かれるのですか?差し支えなければ、私たちと一緒に食事をしませんか?」

 

 今日、一度も声を掛けてこなかった陽菜が話しかけてきた。


「あ、ちょっと中庭で弁当食べようと思って……それじゃあ」


 陽菜の誘いを断って、俺は速足で波留を追いかける。


(陽菜……なんで今日に限って昼ご飯誘ってくるんだ?いつもは、俺がクラスの奴らと関わりたくない事を尊重してくれてるのに)


「波留」


 教室から、まだそこまで離れていない廊下で波留を見つけて声を掛けた。


「え?ゆ、結斗君……どうしたの?」

「えっと、波留が教室を出て行くのが見えたから……良かったら一緒にご飯食べない?」

「う、うん。食べる!」

「少し話もしたくて……ほとんど誰も来ない穴場があるんだけど。そこで食べてもいいかな?」

「うん。結斗君とだったら、どこでも良いよ」


 そうして俺たちは、穴場である旧校舎裏のベンチへ向かった。

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