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Catacombes(カタコンベ)

室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!

https://hatuyuki-ku.com/?p=707

『牧島ゆあ』が示した隠し通路は、申し訳ぐらいに人工的な灯りが設置されている。


 左右の壁、天井をぼんやりと照らして、冥府へ降りる道のようだ……。


 幅は狭く、2人がすれ違えないほど。


(さーて、どうするか?)


 確かに、ここで『ゆあ』が見張っていたのだろう。


 しかし、この女子が売春グループの一味なら、疑ってかかるのが常道。


(ノコノコついていったら、キルゾーンで皆殺しもあり得る)


 追い詰められたバカは、何をしても不思議はない。


 この女子が自爆、生物や化学兵器、取り出した銃を乱射することまで、想定するべき。


 俺の視線にうなずいた不知火(しらぬい)征司(せいじ)が、百夜(ひゃくや)(あずさ)を見た。


「捜査一課の惣流(そうりゅう)に連絡しろ! 保護が必要である証人の確保と、ゲストハウスに隠しスペースありとな? スマホでいい」


「はい! ……惣流さんですか? おはようございます! 公安局、先係(さきがかり)の百夜です! 明花女学院(めいかじょがくいん)の調査で進展があり――」


 俺も、西園寺(さいおんじ)睦実(むつみ)に言う。


香奈葉(かなは)に、連絡しろ! 見られてもいい内容で」

「……うん!」


 睦実は、メッセージで送ったようだ。


 『ゆあ』に焦っている様子はないが、ソワソワしている。


「あの! 日上沢(ひかみざわ)が気づかないうちに……。ほ、他の協力者がいるかもしれませんし」


 俺は、動きやすい和装に変わった。


御刀(おかたな)を抜け! 何が出ても、おかしくない!」


 睦実も、俺と同じような和装へ。


 神宮寺(じんぐうじ)(のぞみ)は、何もない左腰から抜刀することで刀を握った。


 目を丸くした『ゆあ』に構わず、征司が命じる。


氷室(ひむろ)、お前が指揮をとれ! 閉鎖空間で銃を撃つと、跳弾しちまう」


「了解……。俺と希が先頭! 睦実は、最後尾で! 牧島さん、案内をお願いします」


 俺に言われた『ゆあ』は、ビクッとしつつも、頷く。


「は、はい……」


 『ゆあ』は男嫌いというか、異常に警戒していることに気づく。


 売春グループで、色々あったのだろう。


(絶対に裏切らないよう、こいつも撮影されたか? 接待ぐらいは、あっただろうし)


 ともあれ、慣れた様子で、暗がりへ入っていく。


 妙な動きを見せないかに注意しつつ、俺も続く。


 すぐ後ろで、希。


 警官の男女、アンジェラ・フォン・コルナーロ、最後に睦実……。


 地下に下りつつ、すぐに監視ルームのような部屋へ。


 生活感があって、コンビニかスーパーで買ってきた弁当、カップ麺が食べ終わった後も置かれていた。


 壁際に、安物のベッド。


 ゲストハウスのいたるところが、ズラリと並んだモニターに映っている。


 大部屋は、あらゆる角度から撮影されていた。


(ヤッている映像で、女子を買った奴らを脅すわけか……)


 立ち止まった『ゆあ』が、振り向く。


「ここで、監視していました! 日上沢は、あなた達が帰ったあとに記録を見るつもりのようで……」


 視線を向けられた征司が、注意する。


「下手な動きをするなよ? 証拠隠滅をしたら、ただの共犯として扱う」


「は、はい! 分かっています……」


 やはり、卑屈だ。


(その場の権力者に、媚びへつらう……。こいつの処世術か)


 さらに奥へ向かうと、急に雰囲気が変わった。


 昔に作られた地下遺跡そのもので、左右の壁が削られて、ドミトリーの寝床のようになっている。


 驚いたような、アンジェラの声が響く。


「カタコンベ!? 記録に残っていないところ……」


 フラッシュライトを持っている征司たちが、壁で横に長い穴の群れを照らし出す。


「白骨もある……。だいぶ、風化しているな?」


「先輩、この先を見ておきませんか? 早く、現場を封鎖しないと」


 梓の提案で、俺たちは先を急ぐ。


 教会の墓場であるカタコンベを抜けたら、地下だが、人工的な空間へ。


「ここから、学校の施設っぽいな? ……何の部屋だ?」


 征司が尋ねると、梓はドアノブに手を――


「待って! ダメ! 女は近づかないで!!」


 雰囲気を変えた『ゆあ』が、絶叫した。


 その声で動きを止めた梓は、顔だけ向ける。


「……コトリバコがあるの?」


「はい! だから!」


 鬼気迫る『ゆあ』に、征司がホルスターから銃を抜きつつ、宣言する。


「俺が入る! 氷室、戻るまで頼む!」


「了解!」


 両手で持った拳銃を下に向けている征司を見ながら、ドアを全開。


 革靴の底をすりつつ、銃口を前に向けた征司が突入した。


 女子グループが離れて待つ中で、征司はすぐに出てくる。


「誰もいない! お前らは、見ないほうがいい……」


 後ろ手にドアを閉めつつ、征司は息を吐いた。


「出口から、地上へ戻るか! (たち)の悪いアトラクションだぜ」



 冥府から地上へ戻った出口は、保健室だった。


 正確には、勝手口のそば。


 用務員が出入りしていそうな倉庫で、生徒や教職員を寄せつけない汚れと、乱雑さ。


 久々に日光と新鮮な空気を味わっていたら、刑事ドラマでよく聞くサイレンの音が近づいてきた。


 ホッとした様子の梓が、呟く。


「惣流さん、来たようですね?」


「現場を封鎖するぞ、百夜! 俺はゲストハウスに戻るから、そこを見張ってくれ!」


 俺たちも協力する形で、ゲストハウスと秘密の出入口を押さえた。


 警視庁の捜査員や鑑識がワラワラと来て、ようやく引き継ぎ。



 証拠と、生き証人。


 女子たちのアリバイも崩れて、事態は新たな局面に入る。

過去作は、こちらです!

https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31

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