安楽椅子探偵(物理)
室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
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ヒステリックな女教師が逃げ去り、ゲストハウスにげんなりした空気。
女子に左右を挟まれていた俺は、ようやくベッドから降りる。
「そろそろ、解決しましょう」
「……氷室くんの浮気を? ヤッていなければ許されるって話じゃないと思うけど」
ジト目の百夜梓が、突っ込んだ。
「睦実は、俺の婚約者が認めた見張りなんですよ」
「フワッ!?」
警官とは思えない、可愛い声。
顔を引きつらせた梓が、俺の横で寝ていたパジャマで西園寺睦実を見た。
睦実は、あっさり認める。
「うん! 香奈葉から任されている! あっちは、忙しいし」
天賀原香奈葉は、京都にいる。
旧家は序列が厳しく、一族の統率や運営、同格との社交など、女子高生とは思えないスケジュールだ。
ゆえに、睦実ちゃんの出番!
口元が引きつったままの梓に対して、告げる。
「俺が原因ではありますが、2人を着替えさせて、適当に食べながら打ち合わせをしません? 悪いが、上を通るぞ?」
「どうぞ……」
上掛けを引っ張ったままのアンジェラ・フォン・コルナーロをまたぐように、ベッドから降りた。
「下も、同じ色か」
「……染めているわけではないので」
「あなた達、やっぱり事後でしょ!?」
――談話室
ゲストハウスに食堂はなく、会議もできそうなテーブルを囲む。
昨日の夕飯のように、必要なら出前を頼み、給湯スペースでお茶などを用意するだけ……。
制服を着た面々と、スーツの男女。
コーヒーや紅茶を密封されたクッキーなどで流し込みつつ、気まずい雰囲気。
難しい顔をしている不知火征司が、座ったまま、腕組み。
「説明しろ、氷室! 誰と付き合って刺されるか訴えられるかはお前の勝手だが、今は連続殺人事件の捜査中だぞ?」
征司の横に座っている百夜梓も、視線で同じ意見だと告げる。
俺は、スマホを相手から見えるように渡した。
憮然として受け取った征司が、表情を変える。
最後まで読んだら、無言で梓に渡して、俺に向き直る。
「まあ、いい……。それより、今日の捜査だ! お前の考えを聞かせろ」
「ここで売春が行われていた……。なら、場所が問題です」
俺にスマホを差し出した梓が、意見を述べる。
「アンジーさんは、『部外者が明花女学院に出入りしていたら目立つ』と言ったわね? 男の自宅は論外だろうし、ホテルでも往復とプレイの時間で女子のアリバイが不自然になる」
「はい! 女子の都合を考えたら、最もバレにくいのは……」
アンジェラは、人差し指で下をしめす。
つまり、この女学院。
もっと言えば――
「このゲストハウスが、売春の現場!? いや、そう考えれば……」
思わず立ち上がった征司が叫んだら、梓の反応。
「先輩! さっきの日上沢が怪しいですし、現場で発見した学年章の持ち主を探すのはどうですか?」
「そうだな……。氷室、どうするつもりだ?」
「御刀で、このゲストハウスを切り刻みます! どこかに出入りの隠し通路があるはず」
「ボクもいるし、ゲストハウスの損害賠償とかは香奈葉に丸投げすればいいよ」
しかし、その時にどこかが動く音。
俺たちは一斉に立ち上がり、それぞれに戦えるように備える。
屋内と思しき場所から、初めて聞く女子の声。
「あ、あのー! ちょっと、いいですか? 話があるんですけど……」
間の抜けた声だが、誘っている可能性もある。
息を吐いた俺は、スタスタと向かう。
大部屋の1つにいたのは、明花女学院の制服を着た女子だった。
卑屈そうな笑みを浮かべたまま、おずおずと言う。
「協力しますから、私を助けてくれませんか?」
『牧島ゆあ』と名乗った女子は、ここの売春を手引きしているグループの一員らしい。
大部屋の片隅で開いたままの暗い通路を指さす。
「もう分かっていると思いますが、ここから出入りしていました! このゲストハウスには盗聴器や盗撮のカメラもあって……」
いつでも銃を抜ける雰囲気の征司が、厳しい顔で尋ねる。
「俺たちの会話を聞いて、自分がヤバいと? 日上沢は、どうなんだ?」
「日上沢先生が、今の売春の元締めです! 少なくとも、ウチの中では……」
聞けば、日上沢は教師の仕事で身動きがとれず、こいつがゲストハウスの盗聴や盗撮で見張っていたそうだ。
俺のほうを見た『ゆあ』は、すぐ征司に向き直る。
高校生に過ぎない俺に媚びを売ってもムダと、判断したようだ。
「き、昨日、日上沢先生に命令されました……。そこの男子に夜這いをしろと」
「だから、日上沢は『牧島』と間違えた……。いいわ! 先輩、証人の保護をしても?」
梓の問いかけに、征司はうなずく。
「ああ! 牧島は、俺たちから離れるなよ? 適当な名目で連れて行ってやるし、使い捨てにもさせない。だから、全面的に協力してくれ」
「お、お願いします!」
ペコペコと頭を下げた『ゆあ』に違和感を覚えたが、ここで口に出すほどではなかった。
今は、こいつが出てきた隠し通路を調べることが先決だ。
全員の視線を感じたのか、『ゆあ』も自分が出てきた通路を見た。
「ここは、ウチの遺跡を利用したというか……。あまり気分が良いところじゃないんです」
顔をしかめた『ゆあ』は、そちらに向き直る。
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