いつも駿矢を見ている、睦実ちゃん
室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
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朝が訪れた。
警視庁の捜査員である男女は、始発でやってきたと思しき時間帯に、明花女学院の正門でインターホンを鳴らす。
眠そうな教職員が応じて、すぐに通用門が開けられた。
「ご苦労様です……」
「ご対応、ありがとうございます」
「……すみません。こんな朝早くから」
ゲストハウスへ行くことを告げると、その教職員はマスターキーで正面を開錠してから立ち去った。
訪問者と話し合うためのラウンジを兼ねた、エントランス。
そこに立った不知火征司が、相棒の百夜梓に告げる。
「あいつらを叩き起こすぞ?」
「……はい!」
就寝できる二段ベッドが集まっている、大部屋。
高校生たちの割り当てを知らず、梓がノックをして、声掛けからの入室。
そもそも、ゲストハウスに宿泊することは少ないようで、2つ、3つの大部屋だけ。
(学校の交流会で使うぐらい?)
そう思いつつ、梓は中からの返事が女子であると気づく。
「先輩! 私が入ります」
「……頼む」
こちらが女子部屋と踏んで、征司は別の大部屋へ向かった。
梓は、返事があった大部屋のドアが開く音で、そちらへ向き直る。
「おはよう! 悪いけど、すぐに起きてね? ……あなただけ?」
眠そうに顔をのぞかせたのは、神宮寺希。
他に人の気配や音がしないことから、梓が尋ねる。
「ええ……。おはようございます……」
「とにかく、着替えて? 他の人を起こしてくるから」
「はい……」
大部屋のドアが、閉められる。
深呼吸をした梓は、引率している教師の気分になりつつ、違う大部屋へ――
「うわぁあああっ!?」
征司の悲鳴で、梓はホルスターから出ている拳銃のグリップに手をかけた。
「先輩!」
とっさにホルスターから抜き、大部屋から飛び出した人影に銃口を向けるも、ギリギリで識別した。
両手を上げて、その場に立ち止まった人物が、叫ぶ。
「俺だ! 撃つな!!」
征司だ……。
梓は、人差し指をトリガーから外して、両手で構えたまま、銃口を下ろす。
「何が?」
「銃を仕舞え! 必要ない……」
呆れたように呟いた征司は、肩を上下させた。
困惑した梓が、暴発しないよう、慎重にホルスターへ戻す。
スーツの上着を直した後で、征司のほうを向く。
「何を見たんですか? 他の子たちは?」
自分が飛び出してきた大部屋のドアを指さした征司は、ポツリと言う。
「入れば、分かる……。俺は、コーヒーを飲む」
疲れた様子で、フラフラと談話室へ向かう。
頭の中に疑問符が浮かび続ける梓は、征司が出てきた大部屋に足を踏み入れる。
「入るわよ? いったい、何が……」
そして、固まった。
なぜなら、二段ベッドの下段でアンジェラ・フォン・コルナーロが上体を起こしていたから。
「おはようございます……。寝るのが遅かったもので」
長い金髪が、両手で引っ張る上掛けとの対比になっていて、美しい。
それだけなら、別におかしくないが――
端に寝ていたアンジェラの反対側で、氷室駿矢が上体を起こしている。
それを指さしながら、梓が突っ込む。
「ああああ、あなた! どういうつもり!?」
自分のことだと思ったのか、アンジェラが答える。
「私、寝る時には裸のほうが落ち着くので――」
「完全に、事後じゃない! 氷室くん、婚約者にどう説明するのよ!?」
けれど、足音と共に、別の人物が入ってきた。
「これは、どういうことですか!? ウチの生徒と淫行をするとは、国武に正式な抗議をしますよ? 牧島さん、あなたからも……」
怒り心頭に発していた日上沢は、ポカンと口を開けたままに。
視線の先にいたアンジェラが、手で上掛けを引っ張ったまま、微笑む。
「おはようございます、先生……」
我に返った日上沢は、冷徹な雰囲気へ。
「コルナーロさん……。あなたには、失望しました! 上へ報告しますから、ここにいられるとは思わないように――」
「昨夜は、何もなかったよ? ボクが見張っていたから」
駿矢のほうの奥には、西園寺睦実もいた。
むっくりと上体を起こして、可愛らしいパジャマで説明する。
「そこ! ビデオカメラがあるでしょ? ずっと撮影していたんだ」
指さした方向には、三脚でセッティングした機材。
近づきかけた日上沢が、周りの視線に気づいて、立ち止まる。
「とにかく! あなた方が同じ部屋で過ごしたうえ、コルナーロさんは疑われるような格好であることは事実! あなたには、法的措置や警察への告発も検討します。覚悟してください!」
駿矢をにらんだ日上沢に、大人の男の声。
「その前に、答えてくれ! お前はどうして、牧島と言った? この金髪の女子の顔と名前を知っていたのに」
全員が振り返ると、開いたままの出入口から征司が顔をのぞかせていた。
ヒステリックなまま、日上沢が言い返す。
「言ってません! だとしても、それが何か!?」
「何か知っているなら、話を伺いたい……。ウチの取調室で、ゆっくりとな?」
ビクッとした日上沢は、さらに激怒。
「これだから、男は! あなた! 同じ女性を見捨てるんですか!?」
縋りつかれた梓は、肩をすくめただけ。
ダンダンと床を踏み鳴らした日上沢が、喚く。
「警視庁や弁護士に、訴えますよ!?」
「好きにしてくれ! ちょうど、ゲストハウスを調べるキッカケが欲しかった! 鑑識がサッカーをできるぐらい押し寄せて封鎖するから、よろしくな? あんたも、事情聴取だぞ?」
日上沢は、痙攣しているかと思えるぐらい震えた後に、無言でドカドカと正面玄関へ向かっていく。
両開きのドアを荒々しく開けたまま、出ていったようだ。
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