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いつも駿矢を見ている、睦実ちゃん

室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!

https://hatuyuki-ku.com/?p=707

 朝が訪れた。


 警視庁の捜査員である男女は、始発でやってきたと思しき時間帯に、明花女学院(めいかじょがくいん)の正門でインターホンを鳴らす。


 眠そうな教職員が応じて、すぐに通用門が開けられた。


「ご苦労様です……」


「ご対応、ありがとうございます」

「……すみません。こんな朝早くから」


 ゲストハウスへ行くことを告げると、その教職員はマスターキーで正面を開錠してから立ち去った。


 訪問者と話し合うためのラウンジを兼ねた、エントランス。


 そこに立った不知火(しらぬい)征司(せいじ)が、相棒の百夜(ひゃくや)(あずさ)に告げる。


「あいつらを叩き起こすぞ?」

「……はい!」


 就寝できる二段ベッドが集まっている、大部屋。


 高校生たちの割り当てを知らず、梓がノックをして、声掛けからの入室。


 そもそも、ゲストハウスに宿泊することは少ないようで、2つ、3つの大部屋だけ。


(学校の交流会で使うぐらい?)


 そう思いつつ、梓は中からの返事が女子であると気づく。


「先輩! 私が入ります」

「……頼む」


 こちらが女子部屋と踏んで、征司は別の大部屋へ向かった。


 梓は、返事があった大部屋のドアが開く音で、そちらへ向き直る。


「おはよう! 悪いけど、すぐに起きてね? ……あなただけ?」


 眠そうに顔をのぞかせたのは、神宮寺(じんぐうじ)(のぞみ)


 他に人の気配や音がしないことから、梓が尋ねる。


「ええ……。おはようございます……」


「とにかく、着替えて? 他の人を起こしてくるから」


「はい……」


 大部屋のドアが、閉められる。


 深呼吸をした梓は、引率している教師の気分になりつつ、違う大部屋へ――


「うわぁあああっ!?」


 征司の悲鳴で、梓はホルスターから出ている拳銃のグリップに手をかけた。


「先輩!」


 とっさにホルスターから抜き、大部屋から飛び出した人影に銃口を向けるも、ギリギリで識別した。


 両手を上げて、その場に立ち止まった人物が、叫ぶ。


「俺だ! 撃つな!!」


 征司だ……。


 梓は、人差し指をトリガーから外して、両手で構えたまま、銃口を下ろす。


「何が?」


「銃を仕舞え! 必要ない……」


 呆れたように呟いた征司は、肩を上下させた。


 困惑した梓が、暴発しないよう、慎重にホルスターへ戻す。


 スーツの上着を直した後で、征司のほうを向く。


「何を見たんですか? 他の子たちは?」


 自分が飛び出してきた大部屋のドアを指さした征司は、ポツリと言う。


「入れば、分かる……。俺は、コーヒーを飲む」


 疲れた様子で、フラフラと談話室へ向かう。


 頭の中に疑問符が浮かび続ける梓は、征司が出てきた大部屋に足を踏み入れる。


「入るわよ? いったい、何が……」


 そして、固まった。


 なぜなら、二段ベッドの下段でアンジェラ・フォン・コルナーロが上体を起こしていたから。


「おはようございます……。寝るのが遅かったもので」


 長い金髪が、両手で引っ張る上掛けとの対比になっていて、美しい。


 それだけなら、別におかしくないが――


 端に寝ていたアンジェラの反対側で、氷室(ひむろ)駿矢(しゅんや)が上体を起こしている。


 それを指さしながら、梓が突っ込む。


「ああああ、あなた! どういうつもり!?」


 自分のことだと思ったのか、アンジェラが答える。


「私、寝る時には裸のほうが落ち着くので――」

「完全に、事後じゃない! 氷室くん、婚約者にどう説明するのよ!?」


 けれど、足音と共に、別の人物が入ってきた。


「これは、どういうことですか!? ウチの生徒と淫行をするとは、国武(こくぶ)に正式な抗議をしますよ? 牧島(まきしま)さん、あなたからも……」


 怒り心頭に発していた日上沢(ひかみざわ)は、ポカンと口を開けたままに。


 視線の先にいたアンジェラが、手で上掛けを引っ張ったまま、微笑む。


「おはようございます、先生……」


 我に返った日上沢は、冷徹な雰囲気へ。


「コルナーロさん……。あなたには、失望しました! 上へ報告しますから、ここにいられるとは思わないように――」

「昨夜は、何もなかったよ? ボクが見張っていたから」


 駿矢のほうの奥には、西園寺(さいおんじ)睦実(むつみ)もいた。


 むっくりと上体を起こして、可愛らしいパジャマで説明する。


「そこ! ビデオカメラがあるでしょ? ずっと撮影していたんだ」


 指さした方向には、三脚でセッティングした機材。


 近づきかけた日上沢が、周りの視線に気づいて、立ち止まる。


「とにかく! あなた方が同じ部屋で過ごしたうえ、コルナーロさんは疑われるような格好であることは事実! あなたには、法的措置や警察への告発も検討します。覚悟してください!」


 駿矢をにらんだ日上沢に、大人の男の声。


「その前に、答えてくれ! お前はどうして、牧島と言った? この金髪の女子の顔と名前を知っていたのに」


 全員が振り返ると、開いたままの出入口から征司が顔をのぞかせていた。


 ヒステリックなまま、日上沢が言い返す。


「言ってません! だとしても、それが何か!?」


「何か知っているなら、話を伺いたい……。ウチの取調室で、ゆっくりとな?」


 ビクッとした日上沢は、さらに激怒。


「これだから、男は! あなた! 同じ女性を見捨てるんですか!?」


 縋りつかれた梓は、肩をすくめただけ。


 ダンダンと床を踏み鳴らした日上沢が、喚く。


「警視庁や弁護士に、訴えますよ!?」


「好きにしてくれ! ちょうど、ゲストハウスを調べるキッカケが欲しかった! 鑑識がサッカーをできるぐらい押し寄せて封鎖するから、よろしくな? あんたも、事情聴取だぞ?」


 日上沢は、痙攣しているかと思えるぐらい震えた後に、無言でドカドカと正面玄関へ向かっていく。


 両開きのドアを荒々しく開けたまま、出ていったようだ。

過去作は、こちらです!

https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31

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