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コトリバコの中身

室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!

https://hatuyuki-ku.com/?p=707

 ゲストハウスの談話室で、空気が張り詰めた。


 テーブルについている不知火(しらぬい)征司(せいじ)が、主張する。


「コトリバコを追っていけば、必ず犯人にたどり着く!」

「……逆に言えば、オカルトを抜きにしたら詰むの! 捜査一課の惣流(そうりゅう)さんも、それで投了した」


 同じ警察官である百夜(ひゃくや)(あずさ)が、すかさずフォロー。


 首肯した西園寺(さいおんじ)睦実(むつみ)による指摘。


「分かったけど……。捜査一課が調べ尽くした後でしょ?」


「だから、引き継いだ資料をここで検討する! あなた達の意見が欲しいの!」


 梓の発言に、俺は心の中で嘆息した。


(まさかの、安楽椅子探偵とは!)


 説明した男女2人は、ガサゴソと準備する。


 ロックを外した後で、テーブルの上にタブレットを置く。

 紙の資料も、いくつか。


 全員で覗き込めば、タブレットに触った指の動きが、とある写真を――


「言い忘れたが、刺激が強い話だ! お前たちは警官じゃないから、無理に見る必要はないぞ?」


 征司が警告するも、席を立つ人間はいない。


 息を吐いた彼は、無言で頷く。


「じゃ、始めるぞ? コトリバコは犠牲者の恨みをターゲットにぶつける、一種の呪詛だ! その中身は、遺体の一部……。『子取り箱』とも言われていて、その名の通り、子供と女にしか効かない。贈られた相手だけではなく、箱の周りを含めて内蔵を腐らせていき、死に至る! まあ、都市伝説でしかないがな?」


 梓が、タブレットで写真を表示した。


「しかし、犠牲者が続いたことは事実……。科学捜査も行われて、野生の毒草、ガスを含めて、『そのような物質は検出されなかった』という結論」


 俺も、自分の意見を述べる。


防人(さきもり)御刀(おかたな)があるんだ……。警察の上層部は、『防人のスキルじゃないか?』と疑っているので?」


「そうだ! 儀式的な呪術という線もあるが……」


 肩をすくめた征司は、座ったままで腕組み。


 いっぽう、アシスタントの梓が、タブレットを操作する。


「コトリバコを作るためには、最終的に開けられない木組みの箱と、中に入れる遺体の一部が必要不可欠です! 回収できた箱は壊すしかなく、へその緒や指がそれぞれ5人分――」

 ガタタッ!


 乱暴に椅子を後ろにズラした女子の1人が、片手で口を押さえたまま、廊下へ走っていく。


 征司が、すかさず叫ぶ。


「トイレだ! 洗面所だと、詰まる!!」


 ゆっくり息を吐いた後で、見回す。


明花女学院(めいかじょがくいん)の女子は、いったん戻れ……。必要なときに連絡するから」


 アンジェラ・フォン・コルナーロが、指示する。


「ラウンジで待機するか、寮に戻ってください。……私は、最後まで伺います」


「「「はい……」」」


 取り巻きの女子たちも、気分が悪そうに立ち上がった。


 会釈をして、フラフラと、廊下へ。



 気まずい空気の中で、征司が俺を見た。


「お前は、どう思う?」

「……コトリバコに入れる遺体のパーツは、その年齢に応じて変わるんですよね?」


「そうだ!」


 征司が肯定したことで、ズバリ指摘する。


「へその緒は、おそらく胎児です……。病院のほうの潰しこみは、やりましたよね?」


 梓の指でタブレットの画面が切り替わりつつ、声も。


「捜査一課が、都内全域どころか、主要道路や駅近くの遠方までローラー済み! 該当はありません」


 全員、息を吐く。


「現代の日本では、遺体を入手することが難しい……。胎児であれば、話は別」


 俺の言葉に、全員がこちらを向いた。


「何が言いたい、氷室(ひむろ)?」


「ここで、調達したんじゃないですか? 捜査一課も、明花に逆恨みされたくないから俺たちに投げた!」


 反論しそうな気配もあったが、ひたすらに悩むだけ。


 梓は、征司を見た。


「……ありそうですね?」


 ため息をついた征司が、しぶしぶ認める。


「そんな事だろうと、思ったぜ! 壁をかじってでも食いつく捜査一課が、抱えた事件を諦めるわけがない」


 ダラーンとした様子で、座っている椅子に崩れ落ちる。


 聞いていたアンジェラが、はっきり言う。


「うちで、中絶が行われていると?」

「……気を悪くしないでね? 可能性の1つだから」


 梓の謝罪に、アンジェラは平然と続ける。


「ウチの生徒じゃないですか? 全寮制の敷地に部外者が出入りしたら、どれだけ隠しても目立ちます」


 その発言で、談話室は静まり返った。


 神宮寺(じんぐうじ)(のぞみ)が、仕切り直す。


「お二人は、どうしたいんですか? アンジーさんの発言を信じるなら、2つ以上の事件が絡み合ってます」


 うんざりしたように息を吐いた男女は、それぞれに呟く。


「二桁の胎児……。どう考えても、売春じゃねえか!」

生安(せいあん)(生活安全課)の話まで」


 らちが明かないので、発言する。


「捜査一課が放り出したのは、『コトリバコの呪い』があったからでしょう? 俺たちは、コトリバコを作った奴か、作成した場所を突き止めて、再発防止をすればいい! あとは、捜査一課の仕事」


 高校生でしかない俺は、付き合いきれん。


 うなずいた征司が、同意する。


「そうだな! しかし、ここで組織的な売春となれば……」


「教職員に内通者というか、女子に斡旋している奴がいますね?」


 梓の指摘に、再び空気が張り詰めた。

過去作は、こちらです!

https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31

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