コトリバコの中身
室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
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ゲストハウスの談話室で、空気が張り詰めた。
テーブルについている不知火征司が、主張する。
「コトリバコを追っていけば、必ず犯人にたどり着く!」
「……逆に言えば、オカルトを抜きにしたら詰むの! 捜査一課の惣流さんも、それで投了した」
同じ警察官である百夜梓が、すかさずフォロー。
首肯した西園寺睦実による指摘。
「分かったけど……。捜査一課が調べ尽くした後でしょ?」
「だから、引き継いだ資料をここで検討する! あなた達の意見が欲しいの!」
梓の発言に、俺は心の中で嘆息した。
(まさかの、安楽椅子探偵とは!)
説明した男女2人は、ガサゴソと準備する。
ロックを外した後で、テーブルの上にタブレットを置く。
紙の資料も、いくつか。
全員で覗き込めば、タブレットに触った指の動きが、とある写真を――
「言い忘れたが、刺激が強い話だ! お前たちは警官じゃないから、無理に見る必要はないぞ?」
征司が警告するも、席を立つ人間はいない。
息を吐いた彼は、無言で頷く。
「じゃ、始めるぞ? コトリバコは犠牲者の恨みをターゲットにぶつける、一種の呪詛だ! その中身は、遺体の一部……。『子取り箱』とも言われていて、その名の通り、子供と女にしか効かない。贈られた相手だけではなく、箱の周りを含めて内蔵を腐らせていき、死に至る! まあ、都市伝説でしかないがな?」
梓が、タブレットで写真を表示した。
「しかし、犠牲者が続いたことは事実……。科学捜査も行われて、野生の毒草、ガスを含めて、『そのような物質は検出されなかった』という結論」
俺も、自分の意見を述べる。
「防人と御刀があるんだ……。警察の上層部は、『防人のスキルじゃないか?』と疑っているので?」
「そうだ! 儀式的な呪術という線もあるが……」
肩をすくめた征司は、座ったままで腕組み。
いっぽう、アシスタントの梓が、タブレットを操作する。
「コトリバコを作るためには、最終的に開けられない木組みの箱と、中に入れる遺体の一部が必要不可欠です! 回収できた箱は壊すしかなく、へその緒や指がそれぞれ5人分――」
ガタタッ!
乱暴に椅子を後ろにズラした女子の1人が、片手で口を押さえたまま、廊下へ走っていく。
征司が、すかさず叫ぶ。
「トイレだ! 洗面所だと、詰まる!!」
ゆっくり息を吐いた後で、見回す。
「明花女学院の女子は、いったん戻れ……。必要なときに連絡するから」
アンジェラ・フォン・コルナーロが、指示する。
「ラウンジで待機するか、寮に戻ってください。……私は、最後まで伺います」
「「「はい……」」」
取り巻きの女子たちも、気分が悪そうに立ち上がった。
会釈をして、フラフラと、廊下へ。
気まずい空気の中で、征司が俺を見た。
「お前は、どう思う?」
「……コトリバコに入れる遺体のパーツは、その年齢に応じて変わるんですよね?」
「そうだ!」
征司が肯定したことで、ズバリ指摘する。
「へその緒は、おそらく胎児です……。病院のほうの潰しこみは、やりましたよね?」
梓の指でタブレットの画面が切り替わりつつ、声も。
「捜査一課が、都内全域どころか、主要道路や駅近くの遠方までローラー済み! 該当はありません」
全員、息を吐く。
「現代の日本では、遺体を入手することが難しい……。胎児であれば、話は別」
俺の言葉に、全員がこちらを向いた。
「何が言いたい、氷室?」
「ここで、調達したんじゃないですか? 捜査一課も、明花に逆恨みされたくないから俺たちに投げた!」
反論しそうな気配もあったが、ひたすらに悩むだけ。
梓は、征司を見た。
「……ありそうですね?」
ため息をついた征司が、しぶしぶ認める。
「そんな事だろうと、思ったぜ! 壁をかじってでも食いつく捜査一課が、抱えた事件を諦めるわけがない」
ダラーンとした様子で、座っている椅子に崩れ落ちる。
聞いていたアンジェラが、はっきり言う。
「うちで、中絶が行われていると?」
「……気を悪くしないでね? 可能性の1つだから」
梓の謝罪に、アンジェラは平然と続ける。
「ウチの生徒じゃないですか? 全寮制の敷地に部外者が出入りしたら、どれだけ隠しても目立ちます」
その発言で、談話室は静まり返った。
神宮寺希が、仕切り直す。
「お二人は、どうしたいんですか? アンジーさんの発言を信じるなら、2つ以上の事件が絡み合ってます」
うんざりしたように息を吐いた男女は、それぞれに呟く。
「二桁の胎児……。どう考えても、売春じゃねえか!」
「生安(生活安全課)の話まで」
らちが明かないので、発言する。
「捜査一課が放り出したのは、『コトリバコの呪い』があったからでしょう? 俺たちは、コトリバコを作った奴か、作成した場所を突き止めて、再発防止をすればいい! あとは、捜査一課の仕事」
高校生でしかない俺は、付き合いきれん。
うなずいた征司が、同意する。
「そうだな! しかし、ここで組織的な売春となれば……」
「教職員に内通者というか、女子に斡旋している奴がいますね?」
梓の指摘に、再び空気が張り詰めた。
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