防人の再就職先としての先係
室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
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俺たちは、声がしたほうを見た。
スーツの若い男は、ズカズカと入ってくる。
「時間が惜しい! すぐに話を――」
「先輩? ちゃんと説明したほうが……」
斜め後ろにいる若い女が、提案した。
立ち止まった若い男は、片手で後頭部をかく。
「面倒だな……。まあ、いい!」
ゲストハウスの談話室にあるテーブルを囲む俺たちの前で立ち止まった若い男は、黒い手帳を片手でつまみ、慣れた動作で上下に開いた。
「警視庁、公安局の不知火征司だ!」
「……同じく、百夜梓です」
女物のスーツで長ズボンの女も、警察手帳を開いたままで提示。
時間を与えたら、それぞれ無言でパタンと閉じて、ポケットに仕舞う。
「ま、そんなわけだ!」
「私たちも、座っていいでしょうか?」
アンジェラ・フォン・コルナーロが、反応した。
「どうぞ、お掛けください! 紅茶と菓子の準備を」
「……はい」
ほかの女子が数人、立ち上がった。
「こちらへ……。紅茶をご用意させていただきます。コーヒーのほうが?」
「コーヒーにしてくれ! 砂糖とクリームは、いらん」
「……私は、両方とも入れたコーヒーで」
「承知いたしました」
刑事2人のために椅子を示してから、給湯スペースへ移動。
ガタガタと座った男女は、俺たちを眺める。
征司が、宣言。
「あの2人が戻ってきたら、お互いに自己紹介をしよう」
「はい」
アンジェラが、穏やかに答えた。
じきに、全員分の紅茶、お菓子が用意される。
全員がテーブルについたことで、征司は咳払い。
「んんっ……。俺たちは、先係だ! 防人だったが御刀との契約を切って、再就職したのさ! 言わば、お前らの先輩」
目を丸くした神宮寺希が、すっとんきょうな声を上げる。
「お二人は、東京国武高校のOB、OGですか!?」
「まあな?」
「その制服も、懐かしいですね!」
征司は気まずそうで、梓はニコニコしている。
「考えてみれば、国武を出てから5年ぐらいか! 早いもんだ――」
「先輩? 説明を済ませましょう」
梓にカットインされて、征司が戻ってきた。
「正式には『防人係』だが、言いにくい! だから、先係と呼んでいる……。俺たちは御刀を失ったことで弱体化したものの、常人よりは強い。だから、防人との連携や、オカルトに強いことを買われての抜擢だ」
息を吐いた梓が、愚痴を言う。
「刑事にすることを嫌って、公安局という内局に押し込められただけですけど……」
困惑した西園寺睦実が、尋ねる。
「んん? 2人とも、刑事じゃないの?」
そちらを見た梓は、苦笑い。
「刑事と呼べるのは、刑事部か刑事課にいる警察官だけ! それ以外は、たとえ私服でいても、捜査員なの……」
息を吐いた征司が、付け加える。
「現場に駆けつけることが多いのは機動捜査隊で、あいつらも刑事部に所属している! 市民には、どれも同じに見えるだろうよ」
睦実は、さらに尋ねる。
「御刀がないんだよね? オカルトや同じ防人には、ボク達が戦うけど……。そっちは大丈夫?」
座ったままで肩をすくめた征司が、答える。
「安心しろ! 国家権力だから、銃があるさ……。対防人のスペシャルだぞ? クイックドロウの初弾で、だいたい仕留められる」
「セミオートだけど、軽くて扱いやすい……。御刀を抜かれるか、オカルトが異能を発揮したら終わりだから、その前に倒すわけ! ここでは、見せないわよ? 日本警察だと、ホルスターから抜いただけで発砲とほぼ同じ扱いだから」
梓が、最後に釘を刺した。
一段落したことで、俺は本題に戻す。
「先輩たちに会えて、光栄です……。事件の捜査ですが、殺人なら捜査一課も担当していますよね? そちらの方は?」
ため息をついた征司が、両手を上げた。
「刑事部の捜査一課にいる惣流は、俺たちに丸投げ! いいご身分だ……」
「惣流美夏さんは、次に犠牲者が出たら、来ると……。明花女学院が嫌がったことで、敬遠している感じ」
梓も、呆れた表情だ。
「高校生とはいえ、数人の防人が来れば、やりにくいんでしょうね?」
苦笑したまま、梓が締めくくった。
征司は、俺たちを見回す。
「んじゃ、捜査に入るぞ? 国武とここの代表者を決めてくれ!」
「俺です」
「基本的に、私へお願いします」
俺とアンジェラが答えたら、征司は頷いた。
「よし! その2人は、俺と梓のSNSグループに入ってくれ! ただし、捜査情報をアップしないように」
「はい」
「分かりました……」
それぞれのスマホを動かして、新しいグループを作った。
紅茶やコーヒーを二杯目にしつつ、ようやく捜査本部へ……。
征司は、リーダーらしい表情に。
「ここで発生している連続事件だが……。俺は、殺人事件だと踏んでいる」
眉をひそめた睦実は、ツッコミを入れる。
「それは、オカルト、人為的のどちらの可能性も含めて?」
「ああ! その中心にあるのが、コトリバコ! 少なくとも、それを被害者に送った奴がいる……」
征司の断言で、テーブルについた全員が考え込む。
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