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連続殺人犯よりも、こいつが怖い

室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!

https://hatuyuki-ku.com/?p=707

 正門の前で突っ立っていれば、悪目立ちする。


 それでなくても、全寮制の女子校だ……。


 俺たちの案内を担当したと思われる女教師は、向かい合ったままで会釈。


「東京国武(こくぶ)高校の方ですね? 正門を開けたままは不用心なので、ゲストハウスへお招きしてから、ご説明させていただきます」


「はい、よろしくお願いいたします」


 俺が頭を下げたら、他の面々もならう。


 女教師も頷き、俺たちを敷地の中へ入れてから、片耳のイヤホンをさわる。


「正門を閉じてください!」


 モーター音が鳴り響き、ギギギと、重そうな音も。


 ホラーゲームで退路を断つような雰囲気で、黒塗りの門扉がシャットアウト。


 女教師は、敷地が隔離されたことを見届けた後で、背を向ける。


 顔だけ、振り向いた。


「では、こちらへ……。男性も宿泊できるゲストハウスに、ご案内いたします」



 オシャレな別荘を思わせる外観。


 意外に近かったゲストハウスに入れば、談話室、給湯室などの共用設備もある、ドミトリーのような雰囲気。


 その談話室に陣取り、女教師は改めて自己紹介。


「先に申し上げておきます! 当校で皆様を案内するのは、こちらのコルナーロさんと、数人の女子です。御用については、そちらへお願いします」


 示されたコルナーロとやらが、座ったままで会釈。


 けれど、何かを言う気配はない。


 女教師は、さらに告げる。


「当校で被害者が出たことで、警視庁の刑事さんが捜査をしました。けれど、今は電話をするぐらい。あなた方の訪問と併せて、防人(さきもり)に詳しい専門家が来るそうです」


「どなたが?」


 俺が口を挟んだら、女教師は神経質そうに眉を上げた。


 けれど、すぐに取り繕う。


「警視庁の方だそうで……。氷室(ひむろ)さん? 本来なら、男子が足を踏み入れる場所ではありませんよ? 国武の生徒会から推薦があり、あなたに名家の婚約者がいるから――」


 以下、略。


 他人にマウントを取りたがり、口答えを嫌うことは、よく分かった。


(コルナーロたちも、目を伏せたまま……。こいつらは、もう慣れているわけか!)


 コンコンコン


『失礼します! 警視庁からの訪問者です!』


 女子の声だ。


 ようやく黙った女教師が、ドアのほうを見た。


「人数と、性別は?」


『……大人の男性1名、女性1名の合計2名です』


 ガタッと立ち上がった女教師は、一方的に言う。


「コルナーロさん! 後は、お願いしますね?」

「……はい、先生」


 作り笑顔のコルナーロは、初めて喋った。


 いっぽう、女教師が俺以外に告げる。


「このような機会ではありますが、当校の見学はご自由に……」


 俺をハブっている態度にイラついたのか、西園寺(さいおんじ)睦実(むつみ)は無言のまま。


 神宮寺(じんぐうじ)(のぞみ)が、作り笑顔で応じる。


「ありがとうございます、先生」


「あなたは、見込みがありますね……。当校に転入したくなったら、いつでも相談してください」


「恐れ入ります」


 生徒会に入っただけあって、希はこの手の扱いに慣れているようだ。


 満足した女教師は、談話室から出ていく。


 女子の1人が見送りに行き、戻ってきた時点で、コルナーロたちの雰囲気が変わった。


「行きました!」


 コルナーロは、息を吐く。


「失礼しました! アレは、外でやっていけないタイプでして……」


 素の表情に戻ったコルナーロは、アンジェラ・フォン・コルナーロと名乗る。


 俺たちも、改めて自己紹介へ。


「何なんだ、さっきの教師は?」


 苦笑したアンジェラは、端的に答える。


日上沢(ひかみざわ)は、男が大嫌いなんでしょう……。私も事情を知らないし、知りたくもない! 高校生のあなたには偉そうにできても、警視庁の刑事にはできない。だから、すぐ逃げたのよ」


 ドライだ。


 そして、クールな美人のわりに、感情豊か。


「今のような会話は、ここだけでお願い!」


「分かった……。白いマントがあるし、君は優等生?」


 自分の肩を覆っている小さなマントを見たアンジェラは、すぐに向き直る。


「アウルムのこと? まあ、そんなところ……。私たちの赤いリボンは1年を示し、他の学年は色が違う。単なるローテーションだから、深い意味はないわ! ここにいる女子は私と同じグループで、派閥ってやつ。心配しないでいい」


 同席している女子2人が、ペコリと、頭を下げた。


 こちらも、会釈。


 アンジェラは、息を吐く。


「警視庁から、新顔が来た! その人たちと顔合わせをしたうえで、情報共有と今後の方針を決めたい」


「別にいいが……。そいつらも、ここに泊まるのか?」


 俺のツッコミに、アンジェラは肩をすくめる。


「さあ? 本人に聞いてよ……。それとも、警察が怖いから私の部屋に泊まりたいって誘い?」


 肘をついての頬杖で、悪い顔のアンジェラ。


 息を吐いた俺は、睦実と希の視線を感じつつ、即答する。


「冗談は、よせ! さっきの教師の言い方だと、刑事じゃない奴らが――」

「警視庁公安局、先係(さきがかり)だ……」


 若い男の声が、談話室に響いた。


 そちらを見ると、ラフに着たスーツの上下で、荒事に慣れていそうな男。


 横には、女物のスーツで長ズボンの若い女も。

過去作は、こちらです!

https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31

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