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マネーイズ、パワー!

室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!

https://hatuyuki-ku.com/?p=707

 神宮寺(じんぐうじ)(のぞみ)は、優等生らしく言い返した。


 食堂の空気が、張り詰めた。


 けれど、西園寺(さいおんじ)睦実(むつみ)の声で、その均衡が破られる。


「その議論は、もういいよ! ボクたちが言い返す必要はない」


 困惑した表情の希。


 いっぽう、勝利者の表情になったレンが話しかける。


「君は、自分の立場を分かっているよう――」

「調子に乗るなよ? お前のチャンネルぐらい、簡単に収益化を停止できるんだから」


 笑顔のままで低い声になった、睦実さん。


 対するレンは、顔が引きつった。


「き、君こそ――」

「お前が脅迫したことは、今の分まで聞き流すよ? これ以上は、凄腕の弁護士と話すか、場合によってはブタ箱だね?」


 手にしているスマホを見せびらかせば、レンは黙った。


 それを見た睦実が、結論から述べる。


「希に言った理由は……。ん! 彼らに説明させたほうが、早いか! 久住(くすみ)さん? 正面玄関に訪問者がいるから、ここへお願いできる?」


「は、はいっ! 少々、お待ちください……」


 急に指名された久住は、驚きつつも、応じた。


 気まずい沈黙が続く中で、ガヤガヤとして話し声と気配。


 筋肉のカタマリと言うべき男たちが、規則正しく入ってきた。

 先頭にいる男は、食堂を見回す。


「失礼します! こちらに、西園寺さんは?」


 最初からいた人の視線が、睦実に集まる。


「ボクだよ! 終わった?」


「ええ! こちらは、確認を兼ねて同行した市役所の人です」


 スーツ姿の神経質そうな男が、会釈。


「この度は、ありがとうございます……。私が、村への車道が開通したことを確認しました! 今回の作業にかかった費用ですが、わたくしどもは予算的になかなか厳しくて――」

「依頼したのはボクだから、こっちで払うよ! ただし、責任は負わないからね? そっちで面倒を見て」


 笑みを浮かべた男は、ペコペコと頭を下げる。


「恐れ入ります! ええ、はい! わたくしどもの管轄なので……。村長にご挨拶をしたいので、そろそろ退席しても?」


「うん! ご苦労様」


 スーツ男は、卑屈なまま。


「では、失礼いたします……。私は自分の車で来ましたから、バスはいつ出発しても構いません」


 気が変わらないうちに、と言わんばかりの態度で、足早に立ち去る。


(自分の娘のような睦実に頭を下げるぐらいで済めば、安いものか……)


 昨日の今日で、睦実は土砂崩れを撤去させたらしい。


 立派な筋肉がある男たちは、地元の土木事務所か、防人(さきもり)だろう。

 明らかに寝不足といった様子だが、活き活きしている。


 徹夜で突貫作業をさせたなら、危険手当、夜勤手当、緊急で呼び出した手当を含めて、高くついたに違いない。


 魔法のカード――天賀原(あまがはら)香奈葉(かなは)の支払いとなるクレジットカード――がある睦実には、楽々♪


 身構えていても、カードの支払日はやってくるんだ、睦実……。


(さっきの役人が支払いをかぶったら、シャレにならないわけだ!)


 筋肉軍団のリーダーが、やり遂げた顔で、睦実のサインをもらう。


「ご用命いただき、ありがとうございました!」


「いきなりで、悪かったね? 大丈夫?」


 睦実が心配そうに言うと、疲れているリーダーが笑う。


「ハッハッハッ! 徹夜明けで、ちょっと辛いですが……。特別ボーナスを弾んでもらいましたから! 困っている人の助けになって、筋肉も喜ぶ! いい仕事でした……。俺たちも自分の車で来たから、バスはいつでも出発させてください」


 すると、久住が気を遣う。


「よろしければ、お食事をなさいますか? お金は、いただきません」


「助かります! じゃ、お願いできますか?」


「「「ありっす!」」」


 喜んだリーダーと、後ろに控えていた筋肉軍団が、空いているテーブル席に陣取った。


 唖然と見ていた配信者グループに、睦実が告げる。


「そーいうこと! もう街へ帰れるし、乗合バスも来ている。ボクらはそれに乗るから、夜に撮影したければ勝手にして?」


 事態についていけないレンを残したまま、俺たちは荷物をまとめて、大部屋の鍵2つを久住に返した。


 厨房で忙しそうだった彼は、申し訳なさそうに頭を下げる。


氷室(ひむろ)様には、大変申し訳ございません……。こちらで、光人月(こうじんづき)様に対応します。彼らが氷室様に何かしそうであれば、ご連絡いたしましょうか?」


「その件ですが――」


 返事をした俺は、男女のグループで乗合バスへ。


 町に出たい高齢者も乗り込んでいたが、俺たちが土砂崩れを撤去したことが伝わっていたようで、個別にお礼を言われたぐらい。


 バスの運転手に確認された後で、発車しまーす! というアナウンスと、ドアが閉まる音。


 配信者の連中?


 あいつらは自分の車だし、さっきの今で気を遣ってやる理由がない。


 行きと同じ配置で、俺たちはようやく世間へ戻った。



 ◇



 俺たちは御刀おかたなを抜いたまま、険しい山肌や谷を走り抜けた。


 メンバーは、俺と西園寺睦実、お姫様の藤堂(ふじどう)紗良(さら)の3人だ。


 神宮寺希が渋ったが、何が起きるか不明。


 全力を出せば、殲滅や離脱ができる俺と睦実。

 それから、あの場所にこだわっている紗良だけ。


 バッタのように飛び跳ね、見る見るうちに変わっていく視界が、見慣れた村へ。


 連絡すれば、うさぎ亭の裏口から久住が出てきた。


「お待ちしておりました! 早く、こちらへ……」


 配信者グループに見つからないよう、潜り込む。


「光人月様のグループは、変わりません」


 報告を聞いた俺は、持ってきてくれた食事を呑み込むように食べつつ、本番の夜に備える。

過去作は、こちらです!

https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31

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