表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/66

禁忌を侵した者たち

室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!

https://hatuyuki-ku.com/?p=707

 ――うさぎ亭の2階


 階段を上った先には、いくつかの個室のドアが並ぶ。


 内廊下の窓から反対側を見たショウタは、残念そうに呟く。


「あの子は、あっちか……。こっちから行けないんだよな」


 2階建ての木造だが、全てを利用する形ではなく、部分的。

 そのため、左右で独立している。


 いちいち下へ降りて、反対側の階段を上るしかない。


 神宮寺(じんぐうじ)(のぞみ)をナンパしていたショウタを止めたイケメン、ユーマーがため息をついた。


「おいおい……。間違っても、突撃するんじゃねえぞ?」


「分かってるよー!」


 返事をしながらも、ショウタは不満そうに個室へ入っていく。


「ホント、勘弁してくれ……」


 首を振ったユーマーが、中庭を挟んで反対側にある明かり、氷室(ひむろ)駿矢(しゅんや)たちが泊まっている部屋2つを見た。


 ドアが閉まっていて、人の姿はない。


 陰キャっぽい男がやってきたことで、そちらを向く。


「あっ! 撮影は、どうします?」


 高そうな眼鏡をかけたレンは、笑顔で答える。


「明るいうちに、例の神社へ行っておこう! 撮れる分は撮っておく」


「はい! 村の様子も、早めに知っておきたいですね……」


 藤堂(ふじどう)紗良(さら)がスマホで見ていた動画チャンネル。


 彼らは、その配信者だった。



 ◇



 動画配信者の一行は、カメラマンなどを引き連れて、バンを連ねての走行。


 2階の部屋で、温泉旅館によくある展望スペースの窓から、それを見送る。


 砂利を踏み鳴らしつつ、遠ざかる車体。


 水主(みずし)東一(とういち)日高(ひだか)烈火(れっか)が、感想を述べる。


「行ったか……」

「これで、しばらくは落ち着けるね?」


 思いついたことを口にする。


「温泉は、時間帯で女湯になるのか?」


「ああ! 入口に女湯の立て看板で、区別するらしいぜ?」

「……ナンパしてきた男もいるんだよね? 心配なんだけど」


「番頭の久住(くすみ)に言えば、いいさ!」


 ニヤリとした東一が、俺を茶化す。


「駿矢は、女子が3人もいるからな?」

「……言ってろ! しかし、あいつら何を撮影する気だ?」


 腕を組んだ東一は、首をひねる。


「動画の配信者らしいが……。こんな村に再生数を稼げるネタがあるんかね?」


「神社があるぐらい……。キナ臭いもんだ」



 連中と鉢合わせしないよう、俺たちは早めに夕飯を済ませた。


 女子たちは、1日3回ぐらいの温泉で、ご満悦。


 そんなに入って、溶けないものかね?



 ――翌日の朝


「では、参りましょう!」


 上機嫌な藤堂紗良と共に、うさぎ亭を出た。


 他の面々は残るようで、2人きり。


 踏みしめられた土道を進んでいけば、やがて森に覆われた山の中へ。


 急こう配の石段を登りつつ、会話をする。


 やがて、ひなびた村にある山とは思えない、平らな境内と参拝する場所などの建物が見えた。


 お祭りでもあるのか、村人と思しき男たちの姿。


 けれど、振り返ったやつらは険しい顔つき。


「あんたらか!?」

「……神社の御神体を、よくも!」


 じりじりと詰め寄ってくる、手に農具だか武器のようなものを持った奴ら。


 けれど、それはフェイク。


(違う!)


 殺気を感じて、つま先立ちで向きを変えれば、突風のように殴りかかってきた男。


「アァアアアッ!」


 半身でかわしつつ、前転させるように両手で円を描く。


 ダアンッ! と叩きつけられる音を聞きつつ、2人目には肘を打ち込んだ。


「ぐっ!?」


 3人目とは、正面からの拳や蹴りを外側へ払いつつ、逆に受け流される。


 両手を上げたままの男は、小さなバックステップを繰り返し、距離を取った。


 その時に、本殿の奥から、老いた女の声が響く。


「やめいっ!」


 男たちは、そちらを見た後で、俺たちへ続く道を開けた。


 襲撃した3人の男たちも、それぞれに下がる。


「ババ様!」

「……構わぬ」


 ゆっくりと姿を現したのは、白をベースにした和装。


(ここの巫女……って年じゃないな?)


 日の当たる場所まで歩み出た老婆は、自己紹介をする。


「ワシは、たまひ神社の宮司……。そちらのお嬢さんのお名前を伺いたい」


 全員の注目を集めた紗良は、動じることなく、答える。


駒乃藩(こまのはん)の藩主、藤堂士鷹(しおう)が末娘、紗良でございます」


 ジッと見てから頷いた老婆が、宣言する。


「この者たちは、関係ない! そなたらは下がれ!」


 老齢とは思えない大声に、集まっていた男どもは散る。


 俺たちに向き直った老婆が、提案する。


「お二人とも、社務所へおいでくだされ……」



 ――社務所


 神社の中で、神職が控えている場所。


 しかし、山奥とあって、ほぼ住宅のようだ。


 和室でお茶を淹れてくれた老婆は、正座で話し出す。


「ワシらは、ずっと待っておりました……。息子夫婦は外へ出ていき、孫の顔も見ず。それでも、最後の宮司となったワシがお役目を果たせる。姫さまを拝謁できて、心残りはございません」


 藤堂紗良は、困っているようだ。


 代わりに、俺が話しかける。


「何か、あったんですか?」


「昨日、神社の御神体が荒らされまして……。ワシも怒っていますが、村の若衆は尚更」


 紗良が、俺を見た。


 ああ、うさぎ亭に泊まっている配信者の奴らだろう。


「俺たち以外にも、動画の配信者の一行がいます! そいつらじゃないですか?」


「姫さまを疑うなど、言語道断……。ならば、そうでしょう」


 あっさりと肯定した老婆は、茶を啜った。

過去作は、こちらです!

https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ