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楽しい時間が過ぎれば、次のトラブル!?

室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!

https://hatuyuki-ku.com/?p=707

『わたくしは、覚えてないのでー!』


 スマホから聞こえてきた声に、温泉上がりの西園寺(さいおんじ)睦実(むつみ)は息を吐いた。


「大丈夫? 藤堂(ふじどう)紗良(さら)が言ったことだよ?」


 浴衣で色っぽい睦実は、返事を待つ。


 スマホの先にいる天賀原(あまがはら)香奈葉(かなは)は、まだ悩んでいる様子。


 睦実が、女子の温泉タイムについて報告したら、この返事。


 自称タイムスリップしてきた昔の姫さま、紗良が、神宮寺(じんぐうじ)(のぞみ)と意気投合。


 氷室(ひむろ)駿矢(しゅんや)をシェアして、仲良く暮らすという……。


 思い出した睦実は、ため息をつく。


 その時に、香奈葉の声。


『言ったなら、仕方ないのでー!』


「うん……。ボク、もう休みたいんだけど?」


 温泉で疲れを感じた睦実は、生返事。


『分かったのでー! その宿には、もうすぐ配信者の一行が来ますが――』

「待って! 情報源、どこ!? 泊まっているボクより詳しいんだけど?」


 睦実のツッコミに、香奈葉は構わずに告げる。


『彼らを信用しない! いいですね?』


「理由は?」


『言えば、そなたの顔に出ます! とにかく、気を許さないよう』


 睦実は、息を吐いた。


「了解、了解! そろそろ夕飯だから、切るよ? 次は、明日の朝ぐらい」

『お役目、ご苦労』


 ブッ! ツーツー


 片耳からスマホを離した睦実は、内廊下の端から女子部屋へ戻る。


 年季を感じる木造の旅館の2階で、窓の外は真っ暗だ。


 ノックをしたら、内側から開く。



 やがて、ノックの音。


「私が出ます」


 外を眺められるスペースにいた希は、立ち上がり、粗末なドアの内鍵を外して、開いた。


「ただいまー!」

「美味しかったよ?」


 駿矢のハーレムではないと表明した、山浦(やまうら)月帆(つきほ)霜島(しもじま)由里奈(ゆりな)だ。


 隣でも、ドアが開く音と話し声。


『お待たせ! 留守番させて、悪いね?』

『食った、食った!』


 どうやら、日高(ひだか)烈火(れっか)水主(みずし)東一(とういち)の4人でのダブルデート。


 ニマーッとした睦実が、茶化す。


「楽しかった? 2人とも、誰を狙っているのか、後でじっくり聞かせてね!」


 顔を赤くした由里奈が、叫ぶ。

 

「もうっ!」


「荷物は、私たちが見ておく。氷室くんの側室の方々も、ごゆっくりどうぞ?」


 淡々と言い返した、月帆。


 正座をしている紗良が、頭を下げた。


「ご丁寧に、ありがとう存じます」


 毒気を抜かれた月帆は、素で応じる。


「あっ、うん……」



 ◇



 男子2人が戻ってきたので、食堂へ。


 部屋の鍵が信用できないため、荷物の見張り番を置いている。


 しかし、一番の理由は――


「じゃ、行こうか?」

「フフフ、楽しみです!」

「では、参りましょう……」


 俺の側室と見なされている、女子3人のせい。


 一緒にいると気まずい、という理由で、さっきのダブルデート組とズラしている。


 ちなみに、どっちがどっちを狙っているのかは不明。


 2階は客室だけで、数も少ない。


 階段を下りれば、すぐに食堂だ。


「お待ちしておりました……。どうぞ、お好きな席へ! すぐにお持ちいたします」


 適当なテーブルにつけば、うさぎ亭の主人である久住(くすみ)が厨房へ消えていく。


「4名様です! これで、本日は終了となります」


 大人の女の声が、聞こえてくる。


「ハーイ!」

「お通し、ここよ?」


「ありがとうございます!」


 返事をした久住が、お盆で小鉢をまとめて運んできた。


「お通しです! 次の料理も、できておりますので」


 温泉旅館らしい、和食だ。


 西園寺睦実が、尋ねる。


「料理人がいるの?」

「……明日の午前中に団体のお客様が来られるため、村で料理が得意な方々にお願いしました。多めに作り、余った分を差し上げる約束です」


 どうやら、仕込みが間に合わないようだ。


 そう思っていたら、すぐにフォロー。


「夕飯は、他の温泉旅館に負けないぐらい豪華と自負しております! 少しでも気に入っていただければ、幸いです」


 ご飯のお櫃と、茶わん。


 それに、具だくさんの味噌汁。


 焼き魚、山菜の天ぷら、漬物、煮込み料理を小分けにしたもの。


「本当は、各自で温めたいのですが……」


 申し訳なさそうに言われたが、俺たちには十分だ。


「厨房で温められるから、お代わりもどうぞ」


 3,000円の宿泊費でこれなら、十分だろう。


 メシを含めて美味く、量としても文句なし。


 藤堂紗良は、デザートの饅頭で、ニコニコ顔。


「足りるか?」


「はい! これほどの馳走に、何の文句がございましょう?」


 聞けば、大名の娘でも一汁一菜が珍しくなく、おかずが二品あれば上等のようだ。


 自分で竈の火を起こしたり、食材を切ることはないようだが……。



 ――翌日の朝


 生卵、味海苔、ふりかけ、味噌汁、漬物。


 それに、炊き立てのご飯。


 読み通りに軽いメニューだったことで、準備ができた者から食卓について、早く食べ終わった者が先に部屋へ戻る。


 俺たちが食べ終わり、正面玄関のスペースを通りがかったら――


「いらっしゃいませ!」


 久住が、接客をしていた。


 対するは、団体客。


 入ってきたばかりの若い男3人が、靴を履いたままで応じる。


「ち~っす!」

「よろー!」

「……予約した、光人月(こうじんづき)です」


 オシャレな眼鏡をかけた、陰キャっぽい男が、名乗った。


 定型のやり取りで、彼らは靴を脱ぎ、板張りの床へ上がる。


 愛想が良さそうな若い男が、俺たちを見た。


「おっ? ここに泊まっている人?」

「……そうですが」


 正面から迫られた神宮寺希は、顔を背けたままの返事。


 いっぽう、犬系のやつが調子に乗る。


「そっかー! じゃ、部屋へ遊びに――」

「他の人に迷惑をかけるなって……」


 慌てたように、若いイケメンが近寄ってきた。


 希をナンパした野郎をつかみ、強引に頭を下げさせる。


「すみません! ほら、お前も謝れ?」

「……悪かったッス!」


 声音と雰囲気から、反省しているとは思えない。


 息を吐いた希は、相手の顔を見ないままで許す。


「いえ、お気になさらず……。行きましょう、駿矢さん?」


 それを合図に、全員でナンパ野郎から離れる。


 足早に、2階の自分の部屋へ……。

過去作は、こちらです!

https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31

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