男って、いつも嘘つきね?(後編)
室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
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(街中で戦えば、市街地にいる多くの市民が巻き込まれる!)
そう考えた高坂が誘えば、綾千侍咲は素直に応じた。
ホルスターに収まっている拳銃を意識しつつ、停めていた車に乗り込み、夜のドライブへ……。
助手席に乗った咲は、自分を責める気配なし。
探るために、あえて話題を振る。
「お前は、どうやって生き延びた? 首相官邸で防人の男子に殺されたはず……。警察が死亡確認と搬送をしたと思っていたが」
「ええ、死んだわよ! たぶんね?」
「それも……封賀秋灯の力か?」
苦笑しながら首を振った咲は、素直に答える。
「違うと思う……。どうして、カクリヨ神社を襲ったの?」
「封賀秋灯を手に入れるためだ! お前が持ち出すとは思わなかったが……」
外の景色は、暗い。
繁華街や商業施設から離れて、人工的な明かりが減ったのだ。
適当に車を停め、低い山の展望台まで歩く。
都会でアウトドアを味わえるぐらいの場所で、登山というほどではない。
そこそこの展望による、夜景。
落下防止の柵や昇り降りの階段ぐらいはあるが、東京で夜に来る場所ではない。
2人だけ……。
ザッという音で向きを変えた高坂は、真面目な顔で提案する。
「一緒に来ないか? 今のお前は、日本の敵だ! 悪いようにはしないぞ?」
キョトンとした咲に、男は付け加える。
「もう、お前の戸籍はないし、面も割れている――」
「フフフフ! どうせ、私は死んだ身よ! あなたのせいでね?」
咲は、自暴自棄な返答。
高坂が、首を振る。
「俺に言われたくないだろうが……。お前は、まだ生きているんだ! 内閣治安維持局に頼めば、別の戸籍ぐらい簡単に入手できる! あの神社にいた奴らは死んだまま。それを知っているお前がいなくなれば、この国や防人への待遇を変えることも――」
「どうでもいい! ……どうでもいいわ、そんなこと」
遠ざかるように、ザッザッと歩いた咲は、立ち止まる。
くるりと、振り返った。
笑顔を見せた咲に、高坂が告白する。
「俺は……お前にいなくなって欲しくない」
遠くの繁華街から届く、明るいBGMと、人の声。
「今からでも、やり直せないか?」
遠くのほうにある商業エリアの光がぼんやりと照らしつつ、展望台の照明や、近くにある建物からの光。
それらは男女に陰影をつけて、生と死を塗り分ける。
息を吐いた咲が、展望台の端に歩き、前に出した両手で太い柵をつかむ。
「私の刀剣解放……。あなたに見せたこと、なかったわね?」
「教えてくれないじゃないか……」
両手を放した咲が、振り向いた。
「今、教えてあげる!」
高坂はズボンの前に突っ込んでいたホルスターから突き出たグリップを握り、セミオートマチックを抜く。
殴れるぐらいの距離のため、映画のように両手を前に突き出して構えることなく、両手を体にくっつけたような姿勢で相手を見たまま、トリガーを引いた。
パンパンパンッと、冗談のような音が響くも――
その時には、片手で日本刀を握っている咲が通り過ぎていた。
首相官邸のリピートのように、今度は男から血が噴き出す。
◇
東京で行われている、全国防人剣術大会。
『国武1年の氷室くんは、棄権! 以後のリーグ戦も辞退するそうです』
混雑している観客席で、綾千侍咲はため息をついた。
立ち上がり、すぐに外へ歩き出す。
――カクリヨ神社の跡
焼けた建物ばかり。
場違いのように歩いてきた綾千侍咲は、石段を椅子代わりに。
「ただいま、みんな……」
鳥の鳴き声と、羽ばたき。
風で揺れた木々のざわめきが、彼女を迎えた。
「ついさっき、大量に殺してきたばかり……。次に会ったら、殺す……」
呆れたように首を振った咲は、氷室駿矢が言ったセリフを繰り返した。
「男って、いつも嘘つきね?」
しかし、駿矢が全ての犠牲者をなくしたことで、防人が政治的に追い詰められる事態もなくなった。
「御神刀……。もう、神話の再現ね? 世界創世の一種か」
それが記憶と人格を持った別人で、スワンプマンなのか。
あるいは、部分的な時間遡行?
どういう原理にせよ、死人はいないのだ。
間違いなく、駿矢の御神刀。
「光による消去と、死者蘇生……。いざとなれば……」
現代社会を消すことも、可能だろう。
地上にいる執行者。
「あんなのが、まだ二振りもあるの? 参ったわね!」
座ったまま、両手を後ろにつき、空を見上げる。
「これから、どうするか……」
視線を戻した咲は、ため息をつく。
「彼がいるのだから、次こそ始末されるわ!」
ゴロリと仰向けになった咲は、服越しに石の冷たさを感じる。
「眠い……」
布団にいるかのように丸まった女子が、目を閉じる。
「会いたくなったら、いつでも会えるのだし……」
暴れれば、また駿矢が来てくれる。
彼に殺されるのも、一興だろう。
しかし、色々なことがありすぎた。
「みんな、仇を討ったわよ? 私が原因だけどね……」
弱々しい声のあとで、その体は上下する。
廃墟の中でスヤスヤと眠る、女子高生。
それは不思議と似合っており、誰もいない山で変わらぬ1日が過ぎていく。
過去作は、こちらです!
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