安全装置が3つもある、光の終わり……
室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
https://hatuyuki-ku.com/?p=707
乾いた発砲音が、あらゆる方向で響く。
明るい山中は、突如として戦場になった。
(このままでは……あらゆる所属の殺し合いだ!)
歯を食いしばった俺は、刀を持ったままで、周りを感じとる。
犠牲者もさることながら、封賀秋灯で洗脳できる範囲が心配だ。
刀の柄を握りしめつつ、俺は今後を憂う。
(ダメだ! すぐに止めなければ! こんなこと、やっちゃいけない!)
命は、大事なものだ。
かけがえのない――
「死ねぇええええっ!」
ババババという銃撃が四方から響き、俺の主観で時間が止まった。
(あ、これ死んだわ!)
普通の刀と言えるほどに伸ばした刀身のまま、無意識に背中から青い双翼が伸びる。
片手で握っていた脇差からは、青い光。
体の向きを変えながら、それを投げれば、回転しつつ、周りの敵をどんどん切り裂いていく。
一瞬で上空へ飛び上がった俺は、完全解放による蒼穹光々翼で、戻ってきた青い刀を握った。
「光終……」
その一言で、背中の双翼と青いソードの色が変わる。
白い。
俺は、もう一度、繰り返す。
「これは、光の終わり……」
噴き出す白い光が激しくなり、地上にいる兵士や警官、低空のヘリまで注目する。
「撃て! あいつを撃てぇええええっ!」
三次元で撃たれるも、そのライフル弾や榴弾はことごとく白い光になるだけ。
ヴゥウウウウウッ!
ヘリの下部にある機関砲が火を噴き、凄まじい音と衝撃に襲われるも、同じ結果だ。
直進するだけのロケット弾が殺到して、俺は爆風に包まれた。
「や、やったか!?」
地上にいる誰かの声が、不思議と響き渡った。
けれど、何事もなかったように空中で立つ俺に、誰もが黙り込む。
さっきまで殺し合いだった奴らは、俺を見上げるばかり。
目を開けた俺は、静かに告げる。
「次だ……」
「あと1回で、お前らは消えるぞ?」
その時に、誰かが絶叫しつつも発砲。
俺は、最後のセーフティーを解除する。
「全ては、光の中へ――」
あふれるように、白い光が周りに満ちていく。
一瞬で、攻撃していた戦闘ヘリが消える。
キンキンと甲高い音が発生しつつ、その範囲はあっという間に広がっていく。
「た、助け――」
「嘘だ――」
一斉に撃ってきた装甲車の砲弾が消え去り、そのエネルギーがさらなる効果へ繋がる。
白の絵の具で塗り潰されるように、消える。
消えていく……。
――死にたくない!
――やめろ!
――この、人殺しがあああぁっ!
――化け物め!
気がつけば、俺が見下ろしている景色は、一帯が造成工事のように抉られたまま。
青色に戻った青いビームソードのような刀の柄を握りしめた。
そもそもの発端である男女。
黒田と綾千侍咲は、いない。
しかし、さっきの白い光に呑み込まれたわけではない。
それぞれ、逃げたのだ。
「時間を与えた結果が、これか……」
フーッと息を吐いた後で、展望台のような山の景色でその一角を見据える。
◇
車を運転する、スーツ男。
黒田は、両手でハンドルを握りつつも、全身から汗をかいていた。
山をぐるりと回る、先が見えない車道。
そこを、サーキットのように高速で走っていく。
空へ飛び出しそうな景色から、先が見えないカーブの先へ。
「くそっ! くそっ! 綾千侍を説得できず、こんなザマとは!」
誰も座っていない助手席には、乱暴に放り出したセミオートマチックが一丁。
その形に切り取ったようなホルスターに収まったままだ。
咳き込むようなエンジン音と、アスファルトで削られて悲鳴を上げるタイヤ。
(市街地まで逃げて……姿を消そう! 顔と名前を変えるのが間に合うか……)
片手でハンドルを叩く。
「ちくしょおおおおっ! 高坂の野郎、女子高生1人も口説きそこねやがって! 自分のケツぐらい、自分で拭け!!」
無意識に、泣いていた。
ズボンの前もずぶ濡れで、足元まで気持ち悪い。
小なりとはいえ、軍の部隊がいたのだ。
それが、まさに一瞬で消え失せた。
存在して良い力ではなく、知らずに最終兵器のトリガーを引かされた気分。
「冗談じゃねえええっ! 冗談じゃ――」
円盤のように回転する青い物体が、前方から車を左右に分断するように近づいてきた。
皿を縦にしたようで、ギロチンに思える。
「ぐっ!?」
とっさに反応した黒田は、それでも空中へ飛び出すことを避け、山肌を固めた反対側にハンドルを切る。
車道を半分で区切るように削った死神を避けつつ、走っている車は助手席のほうが嫌な音を立てて、火花を散らしながら凹んでいく。
タイヤが破裂して、左半分が低くなった。
そのまま爆発するように思えた車だが、何とか停止。
ハンドルにかじりついていた黒田は、肩で息をする。
「た、助かった? とにかく、逃げないと――」
金属が溶断されるような、耳を塞ぎたくなる音。
同時に、車内が妙に明るくなった。
風切り音がするほうを見上げれば、車の屋根を切り裂いた張本人の姿。
低空に立っているのは、青少年。
青い円盤のように回転していた刀をキャッチした氷室駿矢は、戦闘機の翼にも見える一対の青い光を放出していた。
ドスの利いた、低い声。
「黒田くぅ――ん? ちょっと、聞きたいことがあるんだけどね?」
過去作は、こちらです!
https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31




