封賀秋灯は一騎当千ではなく、千騎万軍!?
室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
https://hatuyuki-ku.com/?p=707
周りは、見渡す限りの緑。
山脈と言える場所で、整備された道から外れたところの開けた場所。
武装した男たちが、それぞれの服装で、所属の官品やらを持ったまま、草むらに伏せたり、木々の後ろに隠れている。
視線だけでも分かりそうだが、待ち合わせをしている綾千侍咲はボーッと立ったまま。
後ろ手にソワソワしている様子は、微笑ましい。
(見たところ、武装はなし……)
いつでも御刀を抜けるから、それまでに仕留められるか?
(あいつも、それは分かっているだろうに!)
先に抜刀しないことが、不可解すぎる。
防人の超人的な力を発揮するためには、それをしておくべき。
逆に言えば、取り囲んでいる奴らが排除を急がない理由だ。
俺が把握しているだけでも、女子高生1人を相手にするには大げさすぎる布陣。
迷彩の戦闘服やらで、ガンベルトなどを身につけて、小銃を持っている兵士たち。
あるいは、ショットガンや拳銃を持つ、紺色の制服を着た警官。
テレビ局の撮影のように私服で立つ咲を見ていたら、違和感を覚えた。
まったく、緊張していない。
(すごく、嫌な予感がする……)
やがて、近くの山道で砂利を押しのけるタイヤの音に、エンジン音。
封鎖していたバリケードが退けられる音や、掛け声も。
どうやら、彼女が希望した男が来たらしい。
(男が来たか……。重役出勤だな!)
同じ日本だろうが、軍と警察は呉越同舟。
おまけに、俺たち防人もいる。
いつ戦端が開かれるかも不明で、下手をすれば、近くにいる奴も襲ってくる状態。
息を吐けば、周りに潜むグループも同じ気配だ。
ともあれ、スーツ姿の若い男が歩いてきたことで仕切り直し。
ずっと待たされた咲は笑顔……ではない。
(おいおい? ここへ来て、まだ何かあるのか!?)
うんざりした気配は、周りも同じ。
舞台となった開けた場所で、ドラマが始まる……。
スーツ男は、咲がすぐに斬りつけられない間合いで立ち止まった。
正面で向き合いつつ、会釈。
「お待たせしました! 私は、黒田と申します……。うちの高坂に会いたいとのご要望でしたが――」
「あなたは、どうでもいい! 結論だけ言って?」
張り付けた笑みの黒田は、ズバリ言う。
「失礼……。我々は、内閣治安維持局です! あなたがどう聞いたのかは存じませんが、高坂も同じ所属」
「で?」
「カクリヨ神社の襲撃は、不幸な事故でした……。我々の目的は封賀秋灯で、今はあなたが所有、または取り込んでいると」
「彼は?」
「生きてますよ? ただし、あなたが聞いたカバーと異なるはず! 話を戻しますが、あなたは微妙な立場だ。かつて名家のご令嬢だろうと、今は同じ防人にすら荒神として命を狙われる……。我々に保護される気は?」
脅しつつの交渉を始めた、黒田。
けれど、小首をかしげた咲は、笑顔で問いかける。
「私は、高坂さんに会いたいの! ここでね? そう言ったはずよ」
息を吐いた黒田は、付き合っていられないとばかりに、首を振った。
「ですから! 高坂に会わせるにしても、我々に従ってもらうと!」
「……話にならないわ! あなたはメッセンジャーになってもらうから、無事に返してあげる」
物騒な発言に、黒田は緊張した。
けれど、スーツの内側に手を入れず。
(防人、それも今は荒神にして、封賀秋灯がある……。豆鉄砲じゃ、逆効果だ)
下手に刺激するだけなら、丸腰のほうがマシ。
そもそも、交渉人が武器を持つな!
抵抗する手段がなく、無意識に後ずさった黒田は、指摘する。
「ここは、警察と軍が包囲していますよ? それも重武装で、大勢の! あなたでも突破は――」
「ええ! だから、最高の状態なの!」
笑顔で叫んだ咲は、パンッと、両手で叩いた。
それを合図にしたのか、その体が殴られたように揺れる。
タァ―ン! という、力強い発砲音も。
しかし、踏ん張った咲は、両足を広げつつも、獰猛な笑顔だ。
「フフッ! 実弾ね……。いいわ、踊りなさい!」
指揮者のように、何もない片手を振るえば、再びライフルの発砲音。
しかし、咲に向けてではない……。
「お、おいっ! 何をしている!?」
戸惑ったような声が、辺りに響く。
そのスナイパーは、別の相手を撃ったようだ。
「やめろ! いったい、どうした!?」
近くにいる味方が止めようとするも、次々に発砲音。
悲鳴や倒れる音が続き、やがて応戦へ。
バババと発砲音が重なり、近距離での乱戦になった。
封賀秋灯の真の力は――
「そう! これは、人を傀儡にする力! フフフ……ハハハハハハッ!」
咲の宣言で、ここは戦場のど真ん中へ。
殺気を向けられた俺は、走り出しつつ、両手で抜刀する姿勢へ。
「可哀想だが……死んでもらうっ!」
踏み込みつつ、俺へ発砲している兵士への抜きつけ。
止まらずに走り抜ければ、小銃を撃ち続ける兵士から血が噴き出す。
片手で刀を持ったまま、その場で向きを変える。
ほぼ同時に、バッタのような跳躍。
直後、その地点に手榴弾が飛んできた。
破片をまき散らす爆音に後押しされるように、俺は刀を振るう。
今は、この場にいる全員が敵だ!
過去作は、こちらです!
https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31




