御神刀は通りすがりのお姉さんにもらった
秘密の女子校で、1週間の滞在。
けれど、そこには世界を滅ぼす存在の召喚儀式があって……。
「異能者が普通にいる世界へ転生したら死亡フラグだらけの件」の3巻目は、誰もが疑わしい!?
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トリガーを引くだけで、弾丸を発射する武器。
火薬による銃は、人類の大きな進歩であり、同時に大量殺戮の始まりだった。
俺は、自分の席で授業を受けつつ、ぼんやりと考えている。
(弾丸すら躱し、それより速く動けるなら、刀のほうがいい、か……)
壇上の教師が、ちょうど御刀の説明をしている。
「理由はまだ不明であるものの、御刀と契約した者は超常的なパワーを発揮する! 防人と言われていても、一般人と同じ権利というのは不思議な話だ。ウチの中だから、言える話だけどな?」
拳や蹴りだけで、一般人の体が吹き飛ぶわけだしなあ……。
「これには、いくつか理由がある!」
第一に、定期的に発生する荒神を倒すための戦力だから。
もっと言えば、外国から防衛する役目もある。
第二に、この御刀がファンタジーだから。
「刀を失えば、その力が大きく下がることは、判明しているんだけどな?」
人知を超えた由来となれば、政治的に叩くことにリスクが大きい。
襲撃を防ぐことは不可能。
おまけに、パフォーマンスで貶したら、御刀が消え失せましたとなれば――
(その党が丸ごと潰れるどころか、背信で命を奪われても、おかしくない)
買収や誘惑もできず。
それこそ、相手は天にいる神々だ。
「引退した防人は、その経験と残った力を活かして警察官や警備をするパターンが多い。お前らも、他人事じゃないぞ? 人生長いのだから、よーく考えておけ!」
むろん、防人の側も、政治的に動いている。
自分たちの権益を守りつつ、スクラムを組んでいるのだ。
その1つが、俺の許嫁となった香奈葉の実家である、天賀原家だ。
ちなみに、俺が選ばれた理由は――
「御刀を解放できれば、それぞれに特殊スキルを使える! これも、原理は不明だ。魔法のような物理的な干渉だけではなく、五感に働きかける場合も……。それとな? 御刀の中でも御神刀と呼ばれている、特別なものがある」
教師が、俺のほうを見る。
しかし、すぐに視線を外した。
(俺をつつけば、天賀原家が出てくるからなあ……)
気を取り直した教師は、説明に戻る。
「そういうわけで……。正当な理由がない抜刀は、重大な処罰になりかねない! 質問は?」
「刀の解放条件と、その時の強さって?」
「個人差がある! 人によるんだ……」
「御神刀は、どこで手に入るんですか?」
「分からん! 氷室はどうだった?」
全員の視線が、俺に集まった。
つーか、結局は振るんかい!
「小学生の時に、通りすがりのお姉さんにもらいました」
香奈葉が許嫁になった理由は、この御神刀があるから。
「友達がいなくなって、大変でした。ハハハ……」
教師が、かろうじて答える。
「そ、そうか……。悪かったな?」
「解放したけど、刀身が伸びるだけでした。高枝切りバサミと呼ばれていましたよ」
脇差から普通の刀ぐらいに伸びる。
そ・れ・だ・け♪
たぶん、本物の高枝切りバサミのほうがリーチ長いわ。
◇
学校の裏サイトを見ることなく、1週間ほどが過ぎた。
どうせ、俺の高枝切りバサミの話題だ。
いずれはバレるし、先に言った。
(エゴサしても、仕方ねえや……)
授業が全て終わり、生徒会に連れて行こうとする西園寺睦実に捕まる前に――
スマホの振動。
“体育館の裏にある倉庫前へ来てください”
メッセージアプリで、学校の関係から……。
(発信者は、女子っぽい名前だが)
タタタと足音がして、やっぱり睦実の姿。
そちらに、スクールバッグを投げつけた。
反射的に受け取る睦実。
「ちょっ、ちょっと!?」
「女子に呼ばれた! お前は来るなよ?」
「は?」
目のハイライトをなくした睦実を置き去りに。
――倉庫前
不自然に人がいない、空白地帯。
まだ日は高く、立ち止まって見回す。
死角から複数の足音。
上の学年の男子が、俺を半包囲した。
見えているだけで、5人……。
「何の用で?」
「お前、調子に乗っているんじゃねえぞ?」
「天賀原家の女子が許嫁で、御神刀を持っているだあ? 吹かすんじゃねえよ」
ガラが悪い。
抜刀の動きは、流石にないか。
「だいたい、高枝切りバサミって何だよwww」
「それ、ぜってーに御神刀じゃねえぞ!」
「1年主席の西園寺とベタベタしすぎ――」
身体強化による踏み込みで、そいつの正面から近づき、驚いている奴に背中からぶつかりつつ、上半身を前へ折り畳む。
宙を飛んだ奴は、投げっぱなしで、地面に叩きつけられた。
「ゴチャゴチャと五月蠅いんだよ、先輩たち? 陰口しか言えない女子か?」
「てめえっ!」
殴りかかってきた奴をかわし、横をすれ違いつつ、足を払う。
その後にも、常に一対一を心がけて、捌いていく。
(囲んだわりには、喧嘩慣れしていないな、こいつら?)
不思議に思っていたら、1人がついに左手で鞘を握る形を作り、右手を動かした。
何もない空間から、刀が出現する。
釣られて、全員が抜刀。
「そうか……。なら、こっちも抜くしかないな?」
過去作は、こちらです!
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