滅びたくないからと押しつけるな!
室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
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頭の中で、男の声が響く。
『お前、将来は自分の流派を作れそうだな?』
私は冷たい地面に横たわったまま、続く声を聞く。
『これは皆のためだ……。頼む!』
もはや痛みを感じることも薄れてきたまま、必死に腕を動かした。
「ぁ……」
さっきまで熱かった部分が、もう冷たい。
むせ返るほどの鉄の臭いも、気にする余裕がない。
頭だけ上げれば、もう光をなくした目が、私を見返した。
それは、巫女服の上からボディアーマーを装備した女。
よく見れば、小銃も。
すでに絶命したまま、恨めしそうに私を見たまま。
「……ごめんなさい」
その罪悪感から、上体を起こした。
神社の一帯が、燃えている。
あるいは、燃え尽きた後。
銃弾の跡や、死体が、いたるところに……。
御刀を出現させ、切っ先を地面に刺すことで立ち上がる。
「ぐうぅっ! 私のせいだ、全部……」
そう、これは私の罪。
まだ処女のまま、血を流しつつ、足を引きずっていく。
血痕がボタボタと、その後に残った。
「死にたくない……」
血だらけで、泣きながらの前進。
刀を第三の足にしながら、どこかへ――
受け身をとれないまま、ドサッと倒れた。
「ハッ! ハッ! ハッ!」
陸に上がった魚のように呼吸をするも、限界は近い。
「しに、たくなぁい……。ま、だ……」
国土守護府の通達。
本日の未明に、――県のカクリヨ神社が襲撃された。
現地の警備は全滅しており詳しい状況は不明なるも、軍に匹敵する装備で大勢と思われる。
奴らの死体も回収されていて、そちらの追跡も不可能だ。
残されていた空薬莢などから、専門のチームが分析している。
これにより、カクリヨ神社に安置されていた封賀秋灯が奪われた模様。
全国の防人養成の学校は、このことを留意すると同時に、奪われた神器の発見と回収に努めるように!
――以下の情報は、一定以上のクリアランスにのみ許可
封賀秋灯は、等身大のからくり人形と、それを操る器具がセットの神器である。
一騎当千と言われているが、実働データがなく、真偽は不明。
そもそも、カクリヨ神社がある村落は隠れ里と同じ状態であり、国土守護府による情報隠蔽で一般人は知ることもできないはず。
したがって、以下の勢力が黒幕、またはシンパである可能性が高い!
・地元の県警(本庁を含む)
・国防省
・いずれかのスパイ(国内の公的機関を含む)
これは我々、国土守護府に対する挑戦である。
御刀によるスキルを持つことで、人権の制限などを進めている反対派は、このチャンスを逃さないだろう。
こちらの失点とならないよう、慎重に捜査されたし。
また、残念ながらカクリヨ神社に内通者がいたと思われる。
状況から、一緒に口封じされたようだ。
この件に関して、防人の名家である神社を統括している綾千侍から強い要望がある。
“娘を見つけた場合は、すぐに連絡すること”
カクリヨ神社に、該当者は1人いる。
生存しているとは思えない。
せめて死体を発見してくれ、と考えて、判別できる遺体に留意されたし。
◇
東京国武高校で、放課後に生徒会室へ呼ばれた。
すぐ逃げようとしたら、西園寺睦実に捕まる。
1年3組から連行され、生徒会室の扉が開く。
「ここで会うのは、初めてなのでー!」
のんびりした声が、俺を出迎えた。
睦実を見ると、彼女は目を丸くしている。
奥に視線を戻し、天賀原香奈葉を見た。
京都の姉小路女子高等学校の制服を着ている、俺の許嫁を……。
「どういうことだ、香奈葉? 俺たち3人が集まるだけで、他が五月蠅いんだろ?」
御神刀を分散させることは、暗黙の了解だ。
一箇所に集まれば、防人の反対派やらが騒ぎ出す。
中央のテーブルには、生徒会長の伊花鈴音や風紀委員長の櫛田悠史も難しい顔だ。
気づけば、後ろでパタンと扉を閉める音。
同じ1年の神宮寺希だ。
「ひとまず、テーブルについてください……。他に聞かれたら、かなりマズい話なので」
「分かった」
「うん……」
天敵の香奈葉がいるのに、睦実は大人しい。
入口に近いほうで、空いている席に並んで座る――
「駿矢は、ここなのでー!」
自分の隣をポンポンと叩く、香奈葉。
ここで揉めていても、しょうがない。
「睦実?」
「……早く、本題に入ろう?」
1人で座った、睦実。
それを見た俺は、香奈葉の隣に座った。
「お願いします。……誰が話してくれるんですか?」
香奈葉が、俺を見る。
「わたくしです! 悪い知らせと、もっと悪い知らせと、どうでもいい知らせの3つがあるので!」
「どうでもいいのから……」
俺を見たままの香奈葉が、あっさりと言う。
「東京が滅びるのでー!」
「それより悪い知らせって、何だよ!?」
生徒会室の全員に注目された香奈葉は、首をかしげた。
「全国防人剣術大会の会場が、京都から東京になりますー!」
「何で?」
「京都を滅ぼされたくないからでー!」
これが、どうでもいい知らせって、何だよ?
全員の顔は、引きつったまま。
いっぽう、香奈葉は説明を続ける。
「3つの知らせは、どれも繋がっています! 今から、わたくしの絶望をお裾分けするので!」
「いらん!」
過去作は、こちらです!
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