男女のグループは惚れた腫れたが付きもの
召喚儀式は終わった。
室矢重遠が気づかないうちに……。
そして、咲良マルグリットの姿もない。
5巻目で、ベル女編がどうどうの完結!
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「剣術部が、予約していた氷室くん達に横入りした件ですがー!」
生徒会長の伊花鈴音が、投げやりな声で話した。
場所は、いつもの生徒会室。
「剣術部がルール違反をしたのでー! 彼らが悪い!! 以上」
完結明瞭だ……。
会議用のテーブルにいる俺は、他の面々と一緒に、上座の鈴音を見た。
疲れ切った雰囲気の彼女は、ため息をつく。
「ハアッ……。剣術部は、部長と副部長が来てね? もー五月蠅いの、何の!」
次席にいる、風紀委員長の櫛田悠史も、腕を組んだままで苦笑した。
「お前たちの実力は、天女伝説の村でよく分かった! それを伝えても、剣術部の奴らは信じなかったけどな?」
結果的に死傷者がいなかったことで、俺が斬り捨てたことは不問に……。
悠史は、自分の席にあるティーカップを口に運んだあとで、話を続ける。
「刀剣解放の自主練は、大事なことだ! いくら剣術部の連中がレギュラーと言っても、これに忖度したら全体に悪影響だ」
それっきり、集まった生徒会と風紀委員会のメンバーは黙り込む。
俺は、確認する。
「もう、帰っても?」
「待って! 剣術部はOBまで出してきたから、無罪放免とはいかないの!」
鈴音が、慌てて言った。
対する西園寺睦実は、気色ばんだ声音。
「……何でしょう?」
少しだけ肩がビクッとした鈴音は、恐る恐る、発言した。
「怒らずに、聞いて欲しいんだけど……。中学校にいる防人たちへ指導をして欲しいのよ! 来年、再来年にウチへ入りそうなグループに」
「ああ……。そういうことですか」
鈴音は、睦実の反応にホッとしたようで、一気に喋る。
「ええ、そうよ! 剣術部が乱入した時にいたメンバーで! もちろん、前の天女伝説とは違って、危険はないわ! 塾で生徒のサポートをするようなもの」
必死だな、生徒会長?
俺が心の中で突っ込んだら、笑顔になった睦実は快諾する。
「はい! スケジュールによっては、ボクと駿矢だけになるけど」
「それなりの人数がいるだろうけど、全体を見てあげればいいわ」
先に予定を知った俺たちは、生徒会室を後にする。
◇
放課後に、上品な雰囲気のカフェに立ち寄った。
剣術部と揉めたメンバーでだ。
チェーン店とは違い、落ち着いた内装と雰囲気。
クラスメイトの水主東一が、頷いた。
「あー、うん……。分かったぜ」
同じく、日高烈火も同意する。
「生徒会長が言ったんじゃ、断れないよ! ハハハ」
いっぽう、少し離れた女子グループの席では――
「氷室くんが先走ったとはいえ、私たちも同罪……」
「ここで弾かれるほうが、よっぽど怖いよ!?」
黒髪をショートカットにしつつも部分的にオシャレな山浦月帆は、パティシエが作ったと思しきショートケーキを食べつつ、青い瞳を向けた。
お下げにした高校生らしい茶髪の霜島由里奈も、ふわふわしたまま、言い返した。
紫の瞳は、不安そうだ。
最後の1人、美人系の神宮寺希が、話をまとめる。
「斬り捨てたはずの男子たちが、なぜか無事……。人知を超えたスキルを見せた氷室くんがいればこそ、安全です! 今グループを抜ければ、剣術部のターゲットにされますから」
コクコクと頷く、由里奈。
俺は、いかにも育ちが良さそうな、黒い長髪に青い瞳の希を見た。
「お前は、生徒会だろう?」
指を揃えたまま、自分の顎に当てた希。
「いけませんか? 同じ1年だと思いますが……」
「お前は、刀剣解放をできるだろう?」
俺と西園寺睦実を除いて、誰もがビックリした表情に。
ざわつく場で、付け加える。
「生徒会は、1年でも大変だろう? 何が目的だ」
全員の注目を集めた希は、優雅にティーカップを持ち、俺を見たままで答える。
「あなたが気になるから……。では、いけませんか?」
黄色い声を上げる女子たちと、絶叫しそうになる睦実。
その前に、言い返す。
「俺は、お前を嫌いになりたくない……」
カフェのBGMだけ。
ティーカップを持ち直した希は、軽く頭を下げた。
「場を乱してしまい、申し訳ございません。今のは冗談です」
その言葉で、張り詰めた空気がなくなった。
「びっくりしたー!」
「うん……」
「ハアッ……」
「神宮寺が、ジョークを言うとは」
「そういう事にしておこうよ?」
わずかな時間だけ、頬を赤らめた希を見なかったことにして、中学生への指導についてスケジュールの確認をした。
「週末なら、まず大丈夫だと思う」
「欠席したら、後がヤバそうだしな!」
「空けておく」
「忘れないようにしないと……」
「承知いたしました」
放課後は、あっという間だ。
カフェから出て、そのまま解散。
夕暮れの光に照らされつつ、自宅へ向かう高校生たち。
珍しく、睦実も用事があった。
1人で帰ろうとした時に――
「どうして、私が刀剣解放をしていると分かったのですか?」
希の声だ。
そちらを見ると、ブレザーの制服で微笑む彼女。
「生徒会に入れた以上、それぐらいはできるだろう……。単なる、憶測だ」
「次席でしたからね? 西園寺さんには、劣りますが」
「頼むから、あいつを刺激するのは止めてくれ」
「……失礼しました」
その時に、車が停まった。
側面のドアが開く。
中には、不良たちと戦った際に見かけた男子の姿。
その視線に気づいた男子が、乗ったままで会釈した。
希は、すぐに説明する。
「兄です! 紹介したいのですが、もう時間がありませんので」
「分かった……。また、明日」
「ええ! 失礼いたします」
立ったままでお辞儀をした希が乗りこんだら、自動運転の車はすぐに発進した。
過去作は、こちらです!
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