名探偵ムツミちゃん、お家に帰る
秘密の女子校で、1週間の滞在。
けれど、そこには世界を滅ぼす存在の召喚儀式があって……。
「異能者が普通にいる世界へ転生したら死亡フラグだらけの件」の3巻目は、誰もが疑わしい!?
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湖畔を照らす、朝日。
夜が明けた。
しかし、まだまだ薄明かり。
いるはずのない人物に、相良音々《ねね》たちが警戒する。
その一方で、西園寺睦実は足の向きを変え、乱入した三船卓見と向き合った。
「何の用?」
「ムッフフフ……。ご挨拶ですな! ま、無理もありませんが」
イラついた睦実が、本題に入る。
「誰を逮捕しに来たの?」
上着の内側から何かを取り出そうとした卓見に、音々たちが身構える。
しかし、煙草を探していると見抜いた睦実は、動じない。
敵意を感じて、動きを止めた卓見が、ゆっくりと手を出す。
「いつもの癖です……。西園寺さんのセリフを借りれば、『死体がない殺人は立件できない』というやつで! あなた方を引っ張るつもりはないです。氷室さんには、『犠牲になった風鳴学院の女子3人をやった犯人を追っている』と言ったのですが」
「聞いていないよ?」
「でしょうな! 私が注目していたのは、柳ヶ淵村の連続殺人犯……。女子3人の死体ですよ、死体! 一部でも見つけなければ、話にならない。殺されているであろう水島空太なら、まだ発見できるはず!」
人魚がいるはずの沼を見た睦実は、ポツリと言う。
「お前が出てこなければ、逃がさなかったんだけど? 田村東助を……」
「すみませんね? 隠れて、尾行するつもりでしたが……」
しかし、睦実は思わぬ発言をする。
「県警が、徹底的に捜査したんでしょ?」
「ええ、そりゃもう!」
腕を組んだ睦実は、目を閉じた。
ゆらゆらと動いた後で、卓見を見る。
「だったら、普通の場所じゃないね! でも、田村の鬼気迫る様子を見ていたら、1つ疑問に感じたんだ……。あいつが天女候補だった女子の死体をどっかに埋めるか、砕くと思う?」
「言われてみれば……。変ですな? ああいう犯人は、固執するはずだ。体の一部だけでもコレクションにするか、特別な場所に祀るほうが自然……。それに、子供を産ませることが目的なら、しばらく監禁できる場所じゃないと」
悩み出す、卓見。
しかし、睦実は1つの場所を指さした。
「あそこ」
それは……。
人魚になった天女の住みか。
今では沼となった湖だ。
驚いた面々が、そちらを見る。
完全に上った朝日による、眩しいほどの光だ。
「し、しかし……。うちのダイバーが散々に調べて――」
「あいつは、流水系の御刀だ! もし、この水を動かして、どこかにある施設……というか、広い洞窟に行けるとすれば?」
口が半開きの卓見。
「そんな、馬鹿な……」
「理不尽な光景を見たばかりでは?」
女子高生に言われれば、世話ない。
とはいえ――
「ベテランの刑事ですら、その反応……。完璧だね!」
候補としては、目の前にある沼か、渓谷にある水中洞窟。
「間違いなく、この沼だよ! 水中洞窟へ通えば、この村で目立ちすぎる」
我に返った卓見は、同意する。
「そ、そうですな! 犯人は、現場にこだわる……。このロッジにいれば、すぐに往復できるだろう」
けれど、明るくなった顔は、すぐに消える。
「参りましたな……。やはり、先ほどが千載一遇のチャンスでした」
睦実は、笑いながら否定する。
「打つ手はあるよ! やつは、自分のルーツである天女伝説を再現することに執着しているんだ」
「ほう? で、その心は?」
「帰ろう、みんなで」
◇
ロッジ竜宮。
風鳴学院の部屋に入った久世果歩は、残された書き置きを見て、息を吐く。
「そうですか……」
残されたのは、自分だけ。
そう思いつつ、デスクの上に置かれた鍵を手に取り、部屋を出た。
廊下を歩けば、一緒に戻ってきた氷室駿矢の姿。
「そちらは?」
「俺だけ……。そっちも?」
「ええ! どうしましょう……」
両腕を組んだ駿矢は、あっさりと答える。
「俺たちも帰るか!」
「……そうですね」
たった2人。
それも、警察署で犯人と決めつけられた直後だ。
ここの管轄から、一刻も早く逃げたほうがいい。
荷物をまとめるため、それぞれの部屋に戻った。
服も適当にたたみ、スーツケースに詰め込む。
「まったく! 私を待たずに――」
ベランダの窓を通して、人影。
手を止めて、そちらに歩み寄る。
「誰? ああ、管理人さん!」
果歩は状況を知るため、田村東助を追いかける。
一瞬だけ、駿矢と合流するか? と思ったが、見失うことを恐れた。
沼のほとりに立った東助は、そのまま消えた。
「え!?」
急いで駆け寄れば、そこには沼の底へ続いているであろう、1人が通れるぐらいの穴。
その部分だけ、水が避けている。
校舎から滑り落ちるシューターか、ウォータースライダーを思い出す。
沼の輪郭をたどるように、斜面を滑り落ちていく。
手足で落下スピードを調整しながら、ようやく下へ。
海とは違い、真っ暗になるほどの深度ではない。
痕跡を探しつつ、周りを見れば――
「ここ……」
年季の入った金属の扉が観音開きになっているのを見つけ、その奥へ。
かろうじて、中が見える。
人工的な灯りは、アウトドア用だろうか?
後ろの扉をどうするかで悩むも、ジメジメとした閉鎖空間に、退路を残しておくことを選んだ。
そもそも、本格的に調査する気はない。
果歩は覚悟を決めて、いつでも抜刀できる姿勢のまま、足を踏み出した。
過去作は、こちらです!
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