睦実ちゃんの完全解放は骨まで痺れる
秘密の女子校で、1週間の滞在。
けれど、そこには世界を滅ぼす存在の召喚儀式があって……。
「異能者が普通にいる世界へ転生したら死亡フラグだらけの件」の3巻目は、誰もが疑わしい!?
https://www.amazon.co.jp/dp/B0D9J8CQV9
さらに激怒した田村東助が、自分の刀を握りしめつつ叫ぶ。
「貴様――」
「ボク直々に命じられるのは、この上ない名誉だよ?」
先ほどの意趣返しと言わんばかりに、同じセリフ。
挑発された男どもは、夜空に立つ西園寺睦実ではなく、地上にいる女子2人に視線を移した。
どういう手品でも、あいつに刃は届かない。
逆に、刀剣解放をしても、せいぜい空に立つか、歩くだけ。
今まで先手を打たないのが、良い証拠だ。
そう思った彼らは、お互いの顔を見て、頷く。
和風の仮面をかぶっていたうちのリーダーが叫ぶ。
「どちらかを捕らえろ!」
しょせんは、女子高生だ。
数はこちらが多く、キツネのコスプレ女の後ろに隠れているほうを――
雷が落ちる音と同時に、相良音々《ねね》に近づいていた男の片腕が付け根ぐらいから飛んだ。
紫色の閃光が走ったかと思えば、その残像は消える。
「は?」
斬られた本人が、もっとも現実感なし。
自分の失われた片腕は、切断面を黒焦げにしつつ、ドサリと落ちた。
遅れて、耐えがたい激痛。
「いでええええ――」
ドシュッ
首を切る音は、雷が鳴る音にかき消された。
地上に降りた睦実は、バチバチと紫色の光に包まれた刀身を持つ。
前に見た音々を除き、誰もが驚愕する。
「電気!?」
「か、雷だと……」
「何で、2つもスキルを?」
雷のスピードは、まさに光だ。
見えた時には、全て終わり。
瞬間移動のように現れた睦実は、再び全員を見下ろせる夜空に立った。
舌打ちした、東助。
いっぽう、4人の男のリーダーは、搦め手に入る。
「お、お前! タダで済むと思うなよ!? 人殺しが!」
この期に及んで、国家権力を頼る気のようだ。
けれど、片腕と首を切られた死体は、確かにある。
勇気づけられた男どもが、一斉に騒ぎ出す。
「そ、そうだ!」
「通報されたくなかったら、その刀を捨てろ!」
「いや、先にこっちの2人を捕まえるぞ?」
ジリジリと近寄ってきた男の集団に、動揺した音々は後ずさる。
(こいつらが風鳴学院の女子3人をやったのは、間違いないのに!)
過去に行われたであろう捜査で、死体は見つからず。
いっぽう、自分たちはこれだけの目撃者と死体……。
単純な力の差では、片付かない。
冷や汗をかく音々に対して、夜空の女王となった睦実は怯まず。
片手で持つ小太刀をヒュッと振り、ついに叫ぶ。
「鳴り響け、千花繚乱花押!」
その瞬間に、睦実の霊圧が膨れ上がった。
彼女から四方八方に吹き荒れて、勢いに押されていた面々が夜空を見上げる。
背中の左右で紫色に光る束が2つ、大きな翼のようにゆっくりと動く睦実がいた。
羽衣を思わせる衣装も、その光で再現されている。
片手に持つ小太刀も、刀身が伸びた。
さらに――
彼女の周りに浮かぶのは、エレクトリカルパレードのように色とりどりの花弁。
もはや、この世の景色ではない。
誰もが見惚れつつ、その中で男たちのリーダーが叫ぶ。
「素晴らしい! お前こそ、村の新たな天女にふさわしい――」
睦実の背中にある一対の翼が、それぞれ外側へ広がった。
次の瞬間に、大きな翼の端から電撃がほとばしる。
繰り返すが、電撃を見てから避けるなど、不可能だ。
それは、人魚となった天女が眠っているであろう沼の周りを埋め尽くした。
空間を紫色のスパークが満たし、身の程を知らぬ男たちの肌を焼き、筋肉を焦がし、その神経、骨までも侵食する。
残りの人生をあっという間に使い尽くした男どもは、理科室の人体模型となり、電撃にさらされている部分から消えていった。
たとえば、男たちのリーダーは誘い文句を言いながら骸骨となり、それでも口の動きを止めないまま、消滅したのだ。
反射的に腕で顔をかばっていた相良音々と高荒まどかは、ゆっくり立ち上がる。
そこには、焼け焦げた大地があるだけ。
「うそ……」
「さ、さっきの人たちは?」
空中に浮かぶ睦実の周りで、光る花弁が消えていく。
大きな翼2つも、背中に収納されるように。
紫色にスパークしていた刀身も、鋼の色へ。
片手で血振りをした睦実は、ゆっくりと納刀した。
これは御神刀のため、そうしても左腰にある。
上から吊り下げられているかのように、すうっと地面に降り立つ。
我に返った音々も、納刀して消す。
次に、早足で駆け寄った。
睦実の胸ぐらをつかむ勢いで、たった今の虐殺を咎める。
「どうして――」
「相良先輩は、あいつらに嵌められて殺人犯になるか、廻されて何度も孕みたかった?」
自分を見つめたまま、平然と言い返した睦実。
それに対して、音々は答えようがない。
「あ、う……。だけど……」
「警察も、お役所の1つだよ? 手頃なネタがあれば、飛びついてくるだけ。それが冤罪かどうかは二の次だ。立件できない話も敬遠する。……そうだよね? さっきから見ていた人」
ビクッとした音々が、睦実の視線をたどれば、離れた木々の影から男が出てきた。
「そう言われれば、お手上げですな!」
人の良さそうな老人だが、刑事の三船卓見だ。
過去作は、こちらです!
https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31




