イキりキツネ、音々ちゃん
秘密の女子校で、1週間の滞在。
けれど、そこには世界を滅ぼす存在の召喚儀式があって……。
「異能者が普通にいる世界へ転生したら死亡フラグだらけの件」の3巻目は、誰もが疑わしい!?
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静かになった湖畔。
ロッジ竜宮は、警察やレスキューが滞在したことでのタイヤ跡などが目立つ。
風呂に入れないままで、昨晩のディナーは手抜きのどんぶり飯。
ドッと疲れを感じた女子3人は、山々をバックにした美しい景色を見ることなく、早々に引っ込んだ。
後片付けで忙しそうな管理人には声をかけず、手早くシャワーを浴びた。
リビングダイニングへ行けば、田村東助の姿。
彼は立ち止まり、頭を下げた。
相良音々《ねね》と向き合っている構図。
「ご迷惑をおかけしました! お詫びと言っては、何ですが――」
「えっと……。私たち、あまり寝られなくて」
宿泊客に埋め合わせをしようとした東助は、キョトンとする。
「そうですか……。大変申し訳ありません」
「だから、今日は変則的に過ごしたいんです」
仮眠をとったら、いつ起きられるか不明。
なので、キッチンの使用許可が欲しい。
食材や調味料は、用意して。
腕を組んだ東助は、渋る。
「それでお客さんが怪我や食中毒になっても、ウチの責任になっちゃうから」
西園寺睦実も、頼み込む。
「お願い! 今日だけ!」
腕を下ろした東助は、頷く。
「昨日は、やっつけの丼でしたし。今更ですか!」
業務用の家電もあるキッチンに招いた東助は、大型の炊飯器などの使用方法を教えた。
「レトルトや缶詰もあります。ご飯を炊けば、それで定食になるでしょう。冷蔵庫の中だと――」
賞味期限を見ながら、女子3人が使っていい食材、加工品をより分けた。
バタンと閉じつつ、尋ねてくる。
「そういえば、他の防人さんは?」
高荒まどかは、慌てて告げる。
「うちの男子が1人、もう帰ってしまって……」
「分かりました。今日中に忘れ物がないか、チェックしてもらえませんか? 急がないので」
音々も、今後の予定を教える。
「うちの男子1人と、風鳴学院の女子1人が、明日の昼ぐらいに戻ってきます」
「そちらも承りました……。明日の昼、ですね? その分の食事を用意します」
ちょうど、ランチタイムに。
教導がてら、そのまま女子3人に作ってもらい、缶詰のソースによるパスタ。
朝に焼いたパン、常備のハム、チーズを加えれば、けっこうなご馳走だ。
ついでに、業務用の炊飯器をセット。
「洗い物はやっておきます! じゃあ、夕飯はそちらで用意すると……。すみませんね、本当に」
◇
高荒まどかは、目が覚めた。
ベッドで上体を起こしつつ、ベランダから差し込む月光を見る。
枕元のデジタル表示を見れば、深夜だ。
「やっちゃった……」
シャワーを浴びて、お腹がいっぱい。
さらに、頼りの久世果歩の帰還で、緊張の糸が切れたようだ。
横になって気づけば、この時間。
(完全に、昼夜逆転……)
まったく眠気がない。
ため息をついた「まどか」は、夕飯を食べていないことに気づき、廊下に出た。
足元灯がぼんやりと照らす中で、恐る恐る、食堂へ向かう。
ガランとした洞窟のような空間。
ダイニングを通りすぎ、キッチンの灯りをつける。
「あ……」
冷蔵庫の中に、一食分のサンドイッチがあった。
これならば、冷たいままでも食べられる。
自分の名前が書かれたメモを見て、ありがたく取り出す。
(外で食べようかな?)
色々とあって、疲れた。
明日は明日で、久世先輩が戻ってくる。
今ぐらい、ゆっくりと過ごそう。
正面玄関は、施錠されていた。
裏口へ回り込み、ドアノブを握れば――
「開いてる……」
キィッと軋む音で、まどかは自由を得た。
天女伝説の沼のほとりを歩きつつ、片手で持つサンドイッチを口に運ぶ。
(ここでダイバーを殺した犯人は、誰? どうして、水中洞窟にいた人を――)
シャアアアッと、風切り音。
そちらを振り向いた「まどか」は、金属同士がぶつかる音と火花に、顔をそむける。
衝突音の直後に、ぶつかった2人はお互いに後ろへ飛ぶ。
遅れて、まどかが手放したサンドイッチが、地面に落ちた。
「な……」
驚くだけの「まどか」に対して、東京国武高等学校の制服を着た人物は両手で刀を握り直した。
後ろ姿でも、長い銀髪の女子だと分かる。
しかし、キツネの大きな尻尾が、ゆらゆらと。
よく見れば、頭の上にもキツネ耳がある。
コスプレのような付属品は、どちらも白だ。
女子用の革靴のまま、ザリッと足の位置を変えたのは――
「やっぱり、仕掛けてきた! 明日には、2人も増えるからね……」
キツネのようなコスプレをしているのは、相良音々だ。
これが、彼女の刀剣解放らしい。
見ていた「まどか」は、思わず呟く。
「式神……。それも、融合型!?」
かなり珍しいタイプだ。
その霊圧は、今までとは段違い。
対する襲撃者は、防人の刀を持つ覆面男。
一言も発することなく、やはり両足の位置を変えつつ、切っ先を動かす。
と思ったら、音々が仕掛ける。
「その顔、見させてもらうよ!」
地面を這うような、凄まじい初動だ。
またたく時間で、敵との間合いを詰めた。
下から伸びてくる刃を避けた覆面男は、自身の刀から……。
湧き出るような水を出現させた。
過去作は、こちらです!
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